第257話 スタンピード狩り
ジュリアスは敗北のショックを引きずっている。相手は賢者とウンディーネの合体で、能力値平均800以上。それにしては健闘したのだが、真面目なジュリアスは自分を追い込んでしまう。
ケリーのところに行って、サーチを依頼する。経験値を大量に稼げる場所。今日はリングルの北方にマークが浮かぶ。ムスタンという5000人都市だ。第1王妃の実家の近くだ。
地図データを持ってムスタン城外に転移。北の森に向かう。7キロ先にダンジョンがある。そこからスタンピードの気配があるという。
ダンジョンに向けて走る。ブラックジュエリー一家総出である。森を3キロほど入った地点で第1波と遭遇。ゴブリン80体。乱闘。アシュラキャットの無音の歌が始まっているようだ。
ブラックジュエリー一家はⅤ字隊形をとった。中心はジュリアスとアシュラキャット。先端は新参のアシュラキャットのコオロギゴーレムたち。ともかく1匹も後ろに通さないつもりである。
新参者は簡単に倒されているがそれでいい。リポップしながら、強くなってもらう。じりじり後ろに下がりながら、相手の数を減らしていく。
アシュラキャットは聖斧を投げることを覚えた。追尾とリターンを付与して確実に倒している。ジュリアスは、アンチ水魔法の糸。水分を吸い取り、干からびさせている。
古参のブラックジュエリー軍団は、ゴブリンよりは強い。1対1では負けない。だが囲まれるとやられている。ヒト女のストーンバレットがいい働きをしている。
トラが咆哮で動きを止めて、体当たりで倒す。ノコリもフラッシュで相手の視力を奪い足止めする。そこをトブトリの毒液攻撃。連携も取れている。
全部倒すのに1時間弱かかった。次はコボルトだ。50体ほどいる。Ⅴ字隊形で下がりながら戦うのは同じ。Ⅴ字の先端に古参のゴーレム馬と犬を配置。ここが強化されると後ろへ抜けられる数が減る。
コボルトは古参組と互角。数も互角。新参たちが倒されて、15分間いなくなる。その時間帯は敵の数が多くなる。そこを耐え抜けば大丈夫。
コボルトも45分くらいで倒しきる。次がスケルトンだ。40体。アシュラキャットの破邪や浄化のスキルが有効。ジュリアスの紫の糸の浄化も効果があって、割合楽に倒した。30分。
次はフォレストウルフ。20体。敏捷で動きが早い。群のリーダーがいて、囲んで倒そうとしてくる。アシュラキャットがリーダーに斧を投げて倒す。あとは乱戦。ヒト男が真正面で対峙し、コオロギが飛翔して体当たり。
抜けてきたウルフは、ゴーレム馬の吹き矢にやられていた。さらに越えてきた敵は、ジュリアスのレイピアの一突きで倒す。20分で倒しきる。
次がオーク40体。これは古参組でも手に負えない。ジュリアスの粘糸で一旦すべて拘束。動けなくなったところを囲んで倒す。ここで森の出口に来てしまう。
残りはオーガ30体くらいと、サイクロプス20体くらいだ。これと戦えるのは、ジュリアスとアシュラキャットしかいない。
投げダンをして、この50体をどこかのダンジョンに転移させる。あとは1体ずつ出てくるのをゆっくり倒す。みんなの戦闘経験を積むために、二人は後ろに下がる。
その時土の盛り上りが、何かの巣穴になっているのを発見。吹き矢を持っているゴーレム馬や、ストーンバレットを持っているヒト女を、何カ所かの土の盛り上がりに隠す。飛翔できるコオロギやスズメ、トブトリは木の上に待機。地上で迎え撃つのはヒト男、トラ、ノコリ、犬。
まずトラの咆哮やノコリのホイッスル、フラッシュで動きを止める。次に遠隔攻撃。ゴーレム馬の毒針の吹き矢がけっこう効いている。それが止んだら、上空からの攻撃。1体を数の暴力で攻撃。これでオーガやサイクロプスが瀕死になった。
そこを待機組が一斉攻撃する。もし倒しきれない時はアシュラキャットの斧が飛ぶ。50体倒すのに5時間かかった。長い戦いだった。トータル10時間弱。
セバスのダンジョンに帰還。ドロップ、魔石、肉などすべてを売却し、子分たちの能力アップをする。スタンピードなので大量だ。
ゴーレムはコオロギとスズメを合わせて40体。今回は全員に魔弾のスキルを導入。MPを弾丸として打てるスキルだ。スライムには火魔法のスキルを導入した。これで攻撃手段が大幅に増えた。
新参組をスクロールでも強化する。継続的にこれをやっていけば、能力差は縮まる。格差のあるチームは弱い。
まだ余ったお金は、アシュラキャットのカードモンスター購入にあてられた。なにか考えがあるようで、購入は後日となった。
ジュリアスを含め全員寝ないので一日はまだ長い。これから死に戻りダンジョンでのトレーニングだ。大勢で入っても、1体1体にふさわしいダンジョンが展開し、必ず死ぬ。よほどの幸運に恵まれた時だけクリアできる。
体感時間は長いが、現実世界での経過時間は1回20分くらいである。ジュリアスとアシュラキャットは生身なので、適宜休憩が必要だ。その時間で瞑想や魔石喰い、必要なら食事をする。もちろん3倍速である。
ジュリアスはこの時間で一真に念話した。
「一真。私今日ムスタン近郊の森で、スタンピードを狩った」
「ジュリアス。スタンピードを一人で潰しきったということか」
「いあや一人じゃないよ。300近いモンスターは、一人じゃ無理だよ。ブラックジュエリー一家が全員参加」
「それにしてもすごい。で、それを自慢したいわけ?」
「ムスタンは第1王妃セリールの実家だよね。ライラのお母さんの。私はなんか不自然なもの感じたの。違和感というかな」
「スタンピードが人工的に起こされたとか?」
「私の予兆発見スキルが、これは続くと言っている」
「スタンピードは人工的に起こせるものかな?」
「それは分からないけど。明日どうなるかよね。私は経験値ほしいから歓迎している」
「危なくなったら連絡して、助けに行くから」
「それでね、その時狐の巣穴があったのよ」
「何の話?」
「都市の防御の話。城壁の外に穴を掘って、都市を守る。向こうの世界になかったかしら」
「塹壕を掘った例はある。平原戦だけど。人が隠れることのできる溝だね。でもジュリアスの言うのに一番似ているのはトーチカかな」
「どういうものなの」
「コンクリートという硬い粘土みたいなもので、小要塞を作るんだ。そこに人が入っていて、待ち伏せして遠隔攻撃する」
「それよ。ムスタンにはそれが必要だった。ムスタンだけじゃなくて籠城戦をするつもりなら、トーチカがあると良いのよ」
「今の城壁の作り方だと地下通路があるから、それを延長してトーチカを作ると良いかもしれない」
「そこに弓兵や魔法兵、投擲兵を隠しておくのよ。今日はゴーレム馬の毒針の吹き矢が大活躍したわ」
「不自然なスタンピードに注意することと、トーチカを作る提言。2つをファントムから領主たちに連絡してもらう」
翌日、スタンピードと入力したケリーのサーチ。それにはハルミナ南方のユートン村にマークが出た。ジュリアスが大喜びしたのは言うまでもない。
アシュラキャットは白紙のカードを購入して、嘆きの要塞のダンジョンに行った。そこで後姿の少女のカードを10枚作ってきた。少女の名前はセイレーン。声の魔法の持ち主だった。
それをちょっと戦わせてから融合すると、強いカードモンスターができる。それと木霊のカードを3枚。この4体はアシュラキャットの合唱隊に加わる。
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