第220話 ハルミナの軍事
領主のリオトが口火を切る。
「今日は軍関係の強化について話してほしい。だがその前に、ピュリスの城壁が石化されたらしい。そのことについて情報を持っているものがいたら教えてほしい」
ファントム。
「ああ、それをやったのは俺の知り合いだ。同じことできる奴知っているので、石化を請け負ってもいいが、結構高いよ」
リオト。
「いくらかかってもいい。城壁が頑丈だということはとても大切だからな。これで一安心だ。城壁の次は食料備蓄だな。どうなっている」
ソトー。
「商人より容量制限なし、時間停止のついたマジックバッグを買いました。毎日5千食を調理して保存中です。2年後には十分な食料備蓄ができます」
リオト。
「それじゃ、人材育成について報告してもらおう。カシム・ジュニアから」
カシム・ジュニア。
「上位30人については1か月で終えている。十分な成果が上がっていると思う。今2期生を受け入れているが、少し時間がかかるし、効果も1期生ほどは出ないのは了解してほしい」
リオト。
「確かに副兵士長は兵士長に匹敵する強さになった。斥候も索敵隊に入って急成長中だ。他も十分強くなっている。ありがとう」
ファントム。
「底辺の底上げ50名は順調だ。今は4期生を育成している。なかでも政治犯はもともと能力があるし、民主主義の理想もあるからな。文官として登用してもらいたい」
リオト。
「文官についてはもう活躍しているものも複数いる。四肢欠損や知的障害があるものが、普通の生活を送れるようになったことも素晴らしい。今後もよろしく頼む。次にカシム・ジュニアの諜報部隊はどうなっているかな」
カシム・ジュニア。
「俺の手柄じゃないが、神聖クロエッシエル教皇国が、長年潜入させていたスパイが摘発された。おれはその逆をカナスでやっている。カナスで土の家を作る会社や、息のかかった冒険者が活動している。成果は長い目で見てほしい」
リオト。
「カナスの東部地域攻撃の兆候を、できるだけ早くつかんでほしい。通信手段の確保を怠りなく頼む。では軍の現状について、執事のソトーから」
ソトー。
「はい。王家から認められている正規の兵士は住民1万人に対し20人です。ハルミナの場合、都市人口が3万人。同数が農村に居住しているとみなされ、合計6万。なので120人が正規兵です。それに加えて衛兵がハルミナとニコラス合計で20人。サヴァタン山の警備隊が20人。合計が160人が王家の許容する正規の人数になります」
リオト。
「人の出入りがあったはずだが、それも報告してもらおう」
ソトー。
「はい。ヒールレベル2を持っているもの約30名を、領主直営の治療院に出向させました。ちなみにすべての村に直営治療院を設置しました。そして治療院を中核に自警団を組織しています。次に弓隊15名、魔法部隊10名を冒険者に出向させています。さらに10名をジェホロ島の水軍に、10名を水上警備隊に出向、1名を索敵隊に出向」
リオト。
「なお、補充は義勇軍参加者の中から優秀なものを選抜している。身体がでかくて、巨人のような奴らばかりだ」
レイ・アシュビー。
「正規軍の歩兵は、重量級の騎馬隊を止める役割ですから。でかくて重いのがいいんです」
リオト。
「歩兵は40人ずつ4班に分ける。3班は通常業務、1班は交替で実戦訓練をしようと思う。提言はあるかな」
カシム・ジュニア。
「装備はどうなっている」
ソトー。
「グーミウッドに槍と鎧と兜と盾、それぞれ200体注文しています。特に盾は大型です」
カシム・ジュニア。
「それなら大丈夫だろう。それで訓練なんだが、広域をダンジョンにできるなら、学校ダンジョンという物を活用すると、命の危険がないのだが」
ファントム。
「ダンジョン化なら、任せてもらおう」
リオト。
「戦闘場面は平原での待ち受け戦と、城壁での防衛線だ。城壁での防衛線では義勇軍の訓練で既にやっている。平原をダンジョンにできるかだな」
ファントム。
「できる。でもそれを聞くということは、索敵隊は戦闘場所を見つけたということか」
リオト。
「ニコラス南方20キロ地点。そこに前領主二コラの墓を作っている。いなくなった500人と聖女の像も作る。巨大な丘になる予定だ。この丘があると、ハルミナを南から攻略する軍は必ずその横の隘路を通る」
カシム・ジュニア。
「それじゃ、騎馬隊、弓隊も参加して、実戦訓練ができるぞ」
ソトー。
「そこに退却用の水路も作っています。3週間後に全面完成。訓練を開始できます」
リオト。
「歩兵以外はどうなっている。ソトー頼む」
「まず水軍ですが、ジェホロ島で40人が訓練中です。リングルから3名の教官が来て海上訓練に入っています」
レイ・アシュビー。
「船はどうしているのかな」
ソトー。
「今は拿捕した海賊船、4隻を軍船としています」
カシム・ジュニア。
「おれが船大工探してこよう」
レイ・アシュビー。
「住民の退避用の葦船作りは、どうなっているかな。葦船は普段も使えるぞ」
リオト。
「それはまだ着手していなかった。季節もあるからな。ソトーよろしく頼む。次」
ソトー。
「索敵隊は2名がリングルに出向しています。残り6名。そこに軍から1名、斥候兵を出しました。義勇軍から選抜した5人加え、計6名を育成中です。成果はもう出ていますね。草原の待ち受け戦場を発見しています」
ファントム。
「索敵隊に採用してもらいたい装備があるんだ。伝書バトの代わりになるモンスターだ。伝書バトと違って、行き先は自由に指定できる」
カシム・ジュニア。
「それができるなら、カシム組で、50体注文したい。ちなみにいくらだ」
ファントム。
「ゴーレム馬とセットで、1セット300万チコリ」
カシム・ジュニア。
「80体注文する」
リオト。
「ハルミナは20体購入しよう」
ファントム。
「もう一つあるんだが、見てもらおうか」
ファントムは一体のコオロギを取り出した。
リオト。
「コオロギゴーレムだな。水路警備隊で便利に使っている」
ファントムは犬笛を吹いた。コオロギから、カードモンスターのヒト男が出てくる。
「一見すると人間に見えるが、モンスターだ。倒されてもコオロギと同じように、15分でリポップする。今は弱いが育てれば強くなる。限界は能力値50。成人並だ。コオロギとセットで500万チコリ」
カシム・ジュニア。
「カシム組は30体」
リオト。
「ハルミナは50体購入しよう。次行ってくれ」
ソトー。
「水路警備隊は騎馬隊になりますが、20人の人員の選定が終わっています。馬の選定がまだ7割で、今月中には終わる予定です」
レイ・アシュビー。
「実はカーシャストが、騎馬隊の訓練やりたいと言っていて、今月末にハルミナに来る予定になっている。騎馬隊の訓練は、カーシャストに任せるつもりだ」
リオト。
「カーシャストって俺の兄貴のことか。領主は首になったのか」
カシム・ジュニア。
「まさか、ドンザヒの領主のカーシャストが来るのか」
レイ・アシュビー。
「カーシャストはな、貴族やっているの飽きてきて、また野盗団の棟梁に返り咲いたんだ。領主もやめたわけじゃない。連れ合いのゾルビデムの娘に領地経営を任して、自分は10歳になる息子を鍛えるって言ってた」
ファントム。
「カーシャストの連れ合いは、ゾルビデム商会の娘なんだ。それじゃ、いなくなったアンジェラのお姉さんということか」
レイ・アシュビー。
「通称クロオオカミのアンタレス。アンジェラ以上に過激な人だ」
ファントム。
「肌は黒いのか」
レイ・アシュビー。
「ああ、アンジェラと同じような感じだな。息子のデアシャストも肌が黒い」
リオト。
「デアシャストは何歳になった?」
レイ・アシュビー。
「10歳だ。ギフトに騎士団指揮というスキルを授かってね。ハルミナの話をしたら、是非やりたいと言って来た」
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