第217話 テッドとジュリアス
「テッドひさしぶり」
「元気だったかな。ジュリアス」
「アリア、死んじゃった。自分の身体から何かがもぎ取られたみたいな感じがする」
「アリアは神様だから、神の国に帰ったんんだ。死んじゃいない」
「そうなのかな。でも会えないからさびしい」
「神殿に行ったら、アリアの彫像があるから、さびしくないさ」
「テッドは、アリアの恋人だったのに、会えなくてもいいの?」
「僕は次々といなくなっていく運命だから。アンジェラもアリアも」
「テッド。泣いてもいいわよ」
「大人は泣かないんだ」
「テッドは、アリアの覚悟のこと知っていたの?」
「なんとなくわかっていた」
「どうしてディオニソスを殺さなきゃならなかったの」
「ディオニソスは、真言というスキルを持っていて、古代魔法同士が戦う時に、どちらが勝つか決められる力を持っていた」
「ガーゴイルにされていたのに?」
「ジンウエモンが封印を解除してしまったんだ」
「ディオニソスは抵抗できなかったの?」
「ジンウエモンはリッチだったから、言いなりになるしかなかった」
「でもカリクガルはまだリッチじゃない」
「だからカリクガルは、ディオニソスを魅了して支配していた」
「アリアはディオニソスの魅了を解除するために、必死に自分の能力値を上げていたのかな?」
「そしてサンサーラの宝石で、不死であるディオニソスを輪廻に帰した」
「アリアだけ生き残る方法もあったわよね」
「そこはアリアも女だったとしか言えないな」
「大人になったら私にもわかるかな」
「ジュリアスは外見はもう大人だけどな。それよりダキニの加護をもらったらしいね」
「ダキニのペンももらった。なんにでも書けるから魔法陣を書くと良いらしいの」
「何か描いてみたか」
「葉っぱに100チコリと書いたら、ほんとに銅貨になった」
「何買ったの?」
「怖いから使わないでまだ持ってるわ」
「ジュリアス、僕が100チコリあげる。こっちは使ってもいい金だから。その葉っぱの100チコリ、俺にくれないか」
「うん、ありがとう」
「ダキニの村だけどね。場所は正確に分かるかな」
ジュリアスは念話で、地図データをテッドに渡す。
「どんなところだった」
「湿原に廃墟の村があって、3層のダンジョンの奥に神殿があった。そこにダキニが捕らえられていた」
「神聖クロエッシエル教皇国の西の端、ファルトいう大きい街の近くだよな」
「ダキニたちはそこから逃げてきていた。狐獣人には厳しいらしいの。差別が」
「村人はどうなっていた?」
「スケルトンにされていた男の人が、復活していたのは知っているけれど。あとは分からない」
「行ってみるかな。狐獣人の村」
「ダキニは狐獣人の祖霊なんだけど、自信を失っているみたいだった。私も狐獣人の祖霊が落ちぶれていて、悲しい」
「そうか」
「テッドはあそこで何かするつもりなの」
「ダキニの村は神聖クロエッシエル教皇国の国境の外になる。ドワーフの支配地が近くて、海に入り江があるんだ」
「それで」
「港が欲しいと思っていたんだ。それに協力してもらえたらいいなと思っている」
「村の人たちがスケルトンから復活していればいいけど」
「武器も手に入ったんだろう」
「タマモの杖。ランダムスチールが使える。モンスターから能力値もらえて、弱い私にはありがたいわ。盗んででも能力値を上げたい。ゴブリンの腰布はもらっても困るけど。でも弱いモンスターからでも、能力値奪えるのがありがたいのよ」
「ジュリアスは弱くはないと思う。もう100超えたろう。能力値の平均」
「でもカリクガルは1000だから、7倍にしないと」
「もう140になったのか。でもアリアがいなくなったからと言って、ジュリアスが前線に出なくてもいいんじゃないかな」
「アリアから新しい糸をもらったのよね。これでカリクガルと戦えっていうことだと思う」
「もらったのはどんな武器なんだい?」
「アリアからもらったのは新しい糸で、魔法を乗せることができるの」
「ジュリアスは今、どんな魔法を持っているんだい」
「水魔法かな。でもカリクガルにシンプルな水魔法が効くとは思えない。アンチモジュールを組み合わせて、アンチ水魔法にすれば体から水分を奪って攻撃が通るかもしれないと思っている」
「もう一つあるのかい?」
「多分ディオニソスがくれたと思うんだけど『魔法陣創造』という本をもらった」
「どんな内容?」
「古代語で書かれているので、異言語理解を導入して読むかどうか迷っているの」
「ジュリアス。それは異言語理解を導入して、絶対読むべき本だよ。ディオニソスは古代世界の最高神の一体なんだ。ディオニソスから何かを受け継げるとしたら奇跡なんだ」
「そうしてみる。内容はなんとくなく分かるの。古代語の魔法は詠唱が必要なんだけど、その言葉を魔法陣に表すこともできるんだよね。それの正しいやりかたと、いくつかの実例が書いてある」
「もしかしたら能力値を上げるより、その方法を学ぶことがカリクガルに勝つ方法になるかもしれない」
「そうだったらいいんだけど」
「それにダキニからもらった、何にでも書けるペンがあったらよね」
「うん」
「ディオニソスの魔法陣を、ダキニのペンで武器に書くことができたら、ジュリアスは、とてつもなく強い武器を持つことができるじゃないかな」
「武器とか防具のの性能を上げるにはいいかもしれない。ただ私の予兆発見というスキルでは、何か制約があると思う。この本をしっかり読んで、制約を把握しないと」
「カリクガルとの戦いが終わったあとも、ジュリアススは活躍できそうだね」
「今はまだ戦い以外のことは何も考えられないの。弱い自分に嫌気がさして、ひたすら強くなりたいと思っているだけなのね」
「人生にはそういう時期があってもいいのかもしれない」
「そう言えばテッド、ディオニソスの神殿の修復がひと段落したみたいなの。今は結界で入れないようにしているんだけど、公開しようということになって」
「いいことだね。僕は結界を通り抜けて、特別に行けるんだけど。でもいろんな人が古代を知ることは必要だと思う。人間が再び人間を取り戻すために」
「それで神殿の管理者が必要なの。神殿が大好きなテッドに任せるのがいいと私は思うんだけど、どうかしら」
「願ってもない。ただあそこは森の守護者の支配地だから、リビーの許可が必要だよね」
「リビーはそれを望んでいるわ。実は神殿の公開だけではなくて、大きい計画が進んでいるみたいなの」
「大きい計画とは?」
「ピュリスの第5学校を神殿を中心とした新しい街に移転しようという計画」
「新しい街を作ろうとしているのは、ヴェイユ家のダレン?」
「そうなの。だから神殿の管理者は新しい学園都市の重要な役割を果たさなくてはならない。そういう重い役割なんだけど」
「もしダレンがいいなら、ゾルビデム商会が全面的に支援してもいい」
「砂漠のレイ・アシュビーの図書館知っているでしょ。そこと全く同じ蔵書の図書館の建設も考えているらしいわ」
「キース銀行やジェビック商会も巻き込んで協力しよう。ダレンは頭がいい。お金だけでなく、町の防衛も含めて我々を巻き込んでしまう計画だ」
「もちろん断ることもできるわ。それにテッドが一人で決められることでもないと思うし」
「いいや。ここにはっきり我々の街を作ることは大事なことかな。僕は今それを決定できる役職にいるしね」
「テッド偉くなったんだね」
「ピュリスを攻める者はゾルビデム商会とも、その背後にいる者とも敵対することになる。ダレンは決断したんだ。僕はそれを受け止めるつもりだ」
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