第169話 錬金術の魔導書作り
冬になったので、モーリーのブラッシュアップが始まった。進化の実は既に使っているのでしばらく使えない。5%アップはある。今は20代の女性木工家モエリーだが、ここでは男性のモーリーの姿でいるという。
「モーリー、何をしたいですか」
セバスが聞く。
「セバス。俺には特別なことは何もないんだ。いつもやっているやり方で十分な気がする。同じことを繰り返すのが好きなんだ」
「実はモーリーにやってもらいたいことがあって」
「聞くだけは聞く」
「アンチというスキルを一真が作り出しました。スキルを反転させるんです。ウオーターボールを反転させると、相手から水分を奪うアンチウォーターボールができます。水分を奪う。そして敵を死に至らしめる」
「岩石バレットだったらどうなる?」
「おそらく物質とアンチ物質とで何かが消えます」
「俺はね、敵を殴るし、ぶち殺す。でもそれは俺が殺される可能性があるから、殺すこともできるんだ。セバス。俺はアンチスキルは使わない」
「そう言われると思っていました。実はもう一つの選択肢を用意しています。木魔法です」
「今までなかったな」
「木の精霊ドライアドとルミエガ契約するかもしれないんです。そのドライアドが提供してくれたスキルです」
「興味がある。できれば会いたい。会えるのかドライアドに」
「ドライアドのベルベルが望み、精霊と仮契約したルミエが認めればできます。私が時間調整する間に1時間木の瞑想をやってみませんか」
木の瞑想を1時間やると能力値がランダムで1上がるという。ただ本当の能力値は30くらいあって、ステータスで見られるのは一部だ。だから木の瞑想で能力値が上がるのを確認できるのは4回に1回くらいだ。しかし上げにくい見えない能力値を上げる貴重な訓練である。
11時にベルベルと会うことになった。ルミエが新たに拠点とした巨樹の前だ。モーリーにとって木の瞑想は新しい体験だった。魔力操作の瞑想は体内の感覚だった。しかし木の瞑想は体内と外部の自然との二重の世界を感じることだった。
巨樹は大きな洞を持ち、ピュリスの東にある巨樹とよく似ていた。10歳を過ぎてまだ何年もたたないだろうとモーリーは思った。ベルベルは傷つきやすそうな少年だった。ルミエは感じが変わっていた。なんか自分に呆れているような感じだ。
「ルミエ、ひさしぶりだ」
「モーリー。会いたかったけど、あったら決心が鈍りそうで、会えなかった。私はしばらく念話でも沈黙する。木の妖精と、木しか愛せない男は初対面でも話し合うことあるはずだから」
「ルミエ、ありがとう。ベルベル君さっそく聞いていいかな。魔導書は最初に、木魔法は陰陽五行説に基づくと言っていたんだけど、そこから頼む」
「陰が闇魔法、陽が光魔法とか聖魔法。水、火、土の魔法はほぼ同じで、木魔法は風魔法を含んでます。金魔法はほぼ錬金術と同じです」
「木魔法が風魔法を含むということを説明してくれるかな」
「風は世界の息なんです。本当は攻撃に使うものではないんです。使うとしたらドラゴンのブレスですね。風刃とかは邪道にしか見えないです」
「息というのは生命力に関係があるのかな」
「生命は自然から力を与えられます。いくつか方法があるのですが、その一つが呼吸です。呼吸によって、生命は活性化する」
「俺の考えていることに近い。木の瞑想も自分にあっていると感じた」
「それは良かったです」
「俺たちのところにない金魔法の事もう少し頼む。こっちは金属は岩石の一部ということになって土魔法になるんんだ」
「鉱石のエキスを取り出して、新しい物質を作り出すのが金魔法です。エリクサーはこれを知らないと、作れないです」
「ちょっと待ってくれ。ワイズ呼んでいいか」
「ベルベル、私にも丁寧教えてほしかった」
口をはさんだのは、エルフのルミエだ。
「ルミエは木の瞑想の、能力アップの事ばかり聞くので、他のことは言いそびれていました。すいません。モーリー、他の人を呼ぶことは構わないです」
モーリーは念話でワイズを呼ぶ。ワイズはすぐ来てくれた。
「初めましてベルベル君。薬師のワイズです。エリクサーを作るのが今の目標なんです」
「先日あったワイドさんという人とは家族ですか?魂の形がそっくりです」
「ワイドは私です。最近は、おっさんのワイドの姿で生きているんです。どこで会ったかしら」
「砂漠で、ゼラリスのところで、雨女の木をしていたのが僕です」
「あの優しい雨を降らしていた人ね。男の子だったんだ」
「人化する時、好きな姿になれます。また会えてうれしいです。水を探す旅などしてくれる人は珍しいので」
「それでエリクサーを作るには錬金術が必要という話なんだけど」
「僕も詳しくは知らないんです。錬金術は難しくて。それに今ドライアドには錬金術師はいないんです」
「錬金術の魔導書を作るのに協力してくれる人はいないかな」
「ゼラリスが錬金術の初歩を知っています。それにここの主だったサーラは、最高の錬金術師だったので、ノートが残っているます。そこから魔導書ができないでしょうか」
錬金術師サーラはここで転生者ショウと暮らしていた。でも事情があって12年間一人で眠っていた。そして10月1日にいなくなったのだ。エルザたちと同じ日に。多分カリクガルの仕業だ。
「サイスを呼んでみるか」
サイスに事情を説明した。地下にあった実験室と錬金術についての本やサーラ直筆のノートを見て最も喜んだのはワイズだった。サイスはファントムを呼び出して、本やノートのデータ化を頼んだ。
サイスはさっそくゼラリスと連絡を取り、錬金術の魔導書作成の協力を取り付けた。その予定は明日になった。ベルベルに聞くと、この近くにサーラの作ったホテルがあり、そこにメリーとシルバーという2体のホムンクルスがいるという。
ホムンクルスは錬金術師が作る人造人間で、作成者の百分の一の能力を受け継いでいる。サイスはホテルにいるメリーとシルバーにも協力を取り付けた。彼等はいつでも良いと言ってくれた。
もう一体のホムンクルスはトールヤ村にいるという。念話ができるので、トールヤ村のホーミック1世とも今日会えることになった。全部ファントムに丸投げだが、有能なファントムのことだ、『錬金術入門』の魔導書はすぐできるだろう。しかし高度なエリクサーがすぐできるようにはならないだろう。
モーリーはセバスのイエローハウスダンジョンに帰ってきた。ベルベルも一緒だ。多くのチームの人に認められ、念話で確認も取れて、ベルベルは正規のチームの一員になった。立場はルミエの同盟者。モーリーと一緒に2週間訓練し、進化の実で1.5倍の能力値をアップさせた。チーム共有のスキルも刺青され、共通の装備ももらえた。12歳にしては能力値が高い。木の瞑想を2年間続けていたおかげである。
【名前】 モーリー(モエリー)
【種】 カマキリ型モンスター
【年齢】 29歳
【状態】 リリエスの従魔
【HP】 181/181
【MP】 89/89
【攻撃力】 213
【防御力】 168
【知力】 75
【敏捷】 82
【器用さ】 108
【運】 76
【種族スキル】 飛翔 人化
【武技】 狩人レベル1 斧鎌術レベル5 剛力レベル1
【攻撃魔法】 土魔法レベル6 木魔法レベル1
【その他】 食品加工レベル2 養蜂レベル2
木工レベル5
【名前】 ベルベル
【種】 ドライアド(雨女)
【状態】 ルミエの同盟者(精霊)
【年齢】 12歳
【HP】 105/105
【MP】 101/101
【攻撃力】 98
【防御力】 89
【知力】 102
【敏捷】 84
【器用さ】 62
【運】 62
【種族スキル】 人化
【ギフトスキル】 並列思考
【武技】 長弓技レベル1
【攻撃魔法】 木魔法レベル1
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