第156話 ジュリアスのブラッシュアップ
ジュリアスは最近急に身長が伸びた。切れ長で三白眼の目の表情は、最初見ると迫力があって、だれもが一瞬緊張する鋭さがある。でもすぐ彼女の明るさに気がつき、第1印象を訂正することになる。
セバスはジュリアスの幸運な一年半を考察する。最初はサイスが始めた第1回の縄跳び大会で優勝した。それをきっかけにテッドに見い出され、スタンピードの時、義勇軍の臨時隊長になる。
義勇軍がプリムに買い取られたあと、今までの実績を認められ、索敵隊の隊長になる。この時、泥炭を発見し、カナスの塩の価格を劇的に低下させた。
アリアに可愛がられて糸術を教えられ、糸の指輪をもらう。テッドとアリアに出会えたことも彼女の幸運のおかげだろう。スノウ・ホワイト事件でも索敵隊と共に活躍した。
この物語はアンジェラに買い取られて、ヴェイユ家の大活躍する物語に改変されて広まっている。もうすぐ「スノウ・ホワイト物語」として公開されるはずだ。そこにはジュリアスやチームのことは隠されている。その代わりヴェイユ家は学校や獣人差別の禁止を約束したのだった。
天使降臨事件では索敵隊を率いて、ピュリス周辺で民衆の流入を阻止した。ピュリスの城壁の攻防が主戦場だったのは確かだが、周辺の森のラインで群衆の流入を防いだ、ジュリアスと索敵隊の功績は大きい。
しかもワイズと協力して、琥珀を発見をした。琥珀鉱山はピュリスのヴェイユ家とハルミナのフラウンド家の同盟を強化することになる。泥炭を発見し、塩の価格を劇的に引き下げたのに続く、ジュリアスの大きな発見だ。
琥珀発見の謝礼金で紫の布を作り、その布に浄化の効果があることが分かった。ジュリアスは糸の指輪から紫の糸を出すことに成功し、糸術を自分の魔法に進化させていた。
アリアから古代魔法の魔法陣を学び、チームの刺青を担当して、それを完了させた。自分のMPを使わず。魔石を利用してチーム共有スキルを使えるのは、若いメンバーには大きなメリットになる。
「ジュリアスはこの2週間で何をしますか」
「やりたいことはたくさんあります。私、糸の指輪から紫の糸出るようになったので、紫の布タダで織れるようになりました。これでみんなの下着なんかの布装備を更新します」
「ありがたいです。それ以外では」
「私の能力の底上げ、スキルレベル上げもやりたいです。まだまだ弱いんで」
「能力値は5%上げ以外に、1・25倍上がる進化の実を食べてもらいます」
「ラッキー!です」
「魔法は水魔法ですね。武技はレイピアと盾。それ以外に染色や裁縫、魔法陣などスキルは多彩です」
「それと索敵隊でもらったスキル細かいのがあります。ハンドサインとか木登りとか」
「索敵隊スキルはこの機会に統合スキルにしましょう。そうするとさしあたりの目標は各スキルのレベル上げですね」
「セバス。ヒカリダケを知っている?」
「ええ最近、夜の照明として人気だそうです」
「ヒカリダケが世界を変えているの」
「えっと?」
「土の家には必ず地下室が2階層ぐらいできるのね。そこにヒカリダケが照明として、安く手に入る。森で採ればタダよ」
「はい?」
「庶民は4時間を手に入れたの。無償で」
「確かに。貧しい人々は、今まで夕食後7時には寝ていたのが、10時くらいになっていますね。朝も1時間早くなって」
「それで何が起こっているかというと、みんな働いているわけ。家でできるお仕事して」
「それがジュリアスのブラッシュアップと何の関係があるんですか?」
「どこにでも生えている雑草、イラクサを採ってきて、それから繊維を取り出して、糸を作り、布を織り始めている。前からある技術だけどね。今までは時間がなかった」
「ジュリアスがイラクサの布を織るということですか?」
「セバス君、君は民衆を軽視しているのかね」
「申し訳ありません」
「冗談よ。繊維が短くて弱いからどうしても太い糸になる。そして染めにくい。私の出番だと思わない?技術を改良したら、みんなが織り始めると思う。無料の技術なら」
「ケリー達が染色の魔導書を手に入れてますから、役に立つかもしれません」
「そういうアドバイスを聞きたかったの。イラクサの布の改良。これが最優先課題かな。あとはおまかせします」
プログラムはバランスのとれたものになる。水魔法・レイピア・盾を使ったダンジョン実戦。イラクサの製糸、染色実験。索敵の訓練。紫の糸を攻撃として使う訓練。紫の糸は浄化作用があり、アンデッドに大きなダメージを与えるのが分かった。
最初に成果が出たのは索敵訓練だった。犬笛、ハンドサイン、竜の咆哮、隠密、追跡、乗馬、敏捷ブースト、偽装、狼煙、マッピング、絵画、ドラゴンブレス(1%)、伝令、ゴーレム馬ブースト、吹き矢(魔法矢)、木登り(猿手装備)、忍び足(猫足装備)、迷彩装備、ゴーレム馬装備が統合されて、統合索敵術レベル1になった。
統合されたスキルは、普通のスキル1つと同じくらいしかコストを消費しない。MPが低い場合にはとてもありがたい。索敵隊関係者のワイズとサイス、レニーにもこのスキルは付与されることになった。おまけにケリーにも。
「セバスありがとう。すごい。ゴーレム馬いつでも出せるのね。これ訓練して能力あげられるの」
「もちろんです。普段からゴーレム馬を出しておけば、早くなったり、強くなったりします。他の装備も持ち歩かなくていいですから、便利です。わたくし、がんばりました」
「チーム共有スキルと被っているのあるけど」
「例えばドラゴンブレスなら、合わせて2%になります。詳細画面にしないと表示できませんが」
水魔法はレベル2に、レイピア術はレベル3に、盾術はレベル2になった。糸術や、裁縫、染色のレベルも上がった。自力で上げたスキルはコストがかからない。ジュリアスのスキルレベルは11歳にしては高い。ジュリアスが自力で、しかも多方面で経験値を上げ続けた努力の結果だろう。
リリエスから攻撃力+50%のミスリルの剣と、MP吸収の盾をもらった。いつかテッド連れらられて、遺跡のダンジョンで戦った時、方向性が決まらなくて、まだもらっていなかったものだ。
最後にイラクサの糸と染色。これは繰り返し実験し、スライムゼリーの使用で解決した。スライムゼリーに着色し、糸をその液につける。どこでも手に入る木の皮や草の実で、赤・茶・薄い黄色の三色で成功した。きれいなとても丈夫な布になった。
【名前】 ジュリアス
【種】 狐獣人(ハーフ)
【年齢】 11歳
【職業】 索敵隊隊長 刺青士 裁縫士 染色士
【HP】 61/61
【MP】 62/62
【攻撃力】 55
【防御力】 41
【知力】 48
【敏捷】 76
【器用さ】 93
【運】 78
【ギフトユニークスキル】 兆候発見
【武技】 レイピア術レベル3 盾術レベル2
【攻撃魔法】 水魔法レベル2 統合索敵術レベル1
【その他】 指揮レベル1 糸術レベル3 裁縫レベル3
染色レベル3
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