第155話 またアリアとクルト
アリアとクルトが話している。
「ケリーがジル隊の3人目を倒してしまったらしいぜ」
「残りはジルだけか。チームの解散、あと3年待たなくてもいいのかな」
「さっさとジルを殺して、チーム解散してしまうっていうのもいいかもな」
「クルト。まず成り行きでチームに入れちゃった子たちを、卒業させてやろうか。ターニャお母さんと、もうすぐ入学するシエラはそのまま幸せな人生を贈れそうな気がするわね。1年くらい様子見てみようか」
「ターニャは俺と結婚したから、騎士夫人だ。森の守護者の妻だし。俺が死んだら、森からいくらか年金出せないかと思っている」
「森に養われるっていうの、なんかいいわね」
「モンスターは4つのダンジョンに集約したから、森の浅い所にモンスターはほとんど出なくなった。そこで蜂蜜販売をしたら、そこそこ生きていけると思う。年金代わりにどうかなって思うんだ」
「ターニャに惚れたか」
「まあ30代だから、女盛りだな」
「あんたほとんど女知らないでしょ。多分2人しかいない。寝た女」
「お前みたいな神でも、人でも、モンスターでもいいっていう女こそ珍しいんだよ」
「まさかエルザとは何でもないわよね」
「あれは娘だ」
「エルザはさ、1年半くらい前にボーイフレンドと別れたでしょ。なんでかわかる」
「娘の男関係は知りたくないんだ」
「エルザはね。ファザコンよ。つい比べてしまう。父親と。あれじゃ同年代の男は太刀打ちできないよ」
「おれはそんな目で娘を見たことなんかない」
「でもあんたの心の中に、いるでしょ。永遠の恋人みたいな人。獣人の。エルザはその人と似ているんじゃないの」
「俺はそんな話したことないはずだけど」
「神様はお見通し。あんただってわかりやすいのよ。女遊び激しそうでいて、実は永遠の女性だけを守っているとかね」
「そんな純情な少年じゃないことは、自分が良く知っている。何ならこれから、俺と一汗流してみるか。アリア」
「その気もないくせに。それはそうとさ、エルザもいろんなことから卒業させてやんなくちゃね」
「そうだな。エルザは戦う必要なんてないと思うんだ。俺と関わってしまったから、つい戦い方を教えてしまった。俺が悪いんだけどな」
「エルザは一度戦わない生活をしてみるべきかもね。結婚しろとは言わないけど」
「そう言えばリビーの事をセバスが心配していた。このままじゃ30代で人類最強になるってな。そして美しすぎるって」
「獣人ミックスが純粋なヒューマンのモード取れるとは思わなかったわね。セバスが惚れるくらいだから、相当きれいなのかな」
「まだ見てないのか。エルフのルミエともまた違う。ともかくピュア・ヒューマンだ」
「権力者は美人が好きだから、トロフィーかなんかと勘違いしているのよ。ブスに見える化粧法を私が教えてあげよう」
「そう言えば初めて、アリアと単体であった時、ブスに見える化粧していたな」
「私くらいきれいだと、化粧で隠さなきゃなんないのよ。美しさをむき出しにすると変な男寄ってきちゃって困る」
「俺が一番好きなのは、アラクネモードのアリアだけどな。右目と左目の色が違う、無気味なモンスター」
「さすが女を見る目あるわ。今度粘糸で緊縛して吊るしてあげるわ」
「そう言えばケリーは粘糸も鋼糸も、風刃も使わないで戦っていたと、リリエスが言っていた」
「攻撃は剣だけだったみたいね。だけど剣は魔剣よ。防御無視、鎧をかすっただけでも、一定の攻撃が必ず通る魔剣だって。しかもリンクしているから不死に近くて、エリクサーも使った」
「子供が大人と1対1で戦うんだ。装備やスキルも実力の内さ。それより敵討ちしてケリーは眠れるようになったらしいな」
「ようやくね。魔導書に辛い記憶を分担してもらって、仮面にされていた両親を葬ってね」
「ケリーがもう止めてもいいんなら、チームは解散だが」
「ケリーは止めないようだよ」
「ならやっぱり他の子の卒業を考えてやるか。あと戦わないのは、レニーとサイスとジュリアか」
「レニーは10歳のギフトをもらうまではチームで保護してあげたいね。あと1年以内で10歳になる。サイスはこの頃調子に乗っているけど、師匠としてはどうなのよ」
「まあ面白く育っているさ。領主の代替わりに食い込んだのは、情報解析官としてはいい経験になると思うぜ。もう少し様子見だな。それよりジュリアスはどうなんだ。彼女も面白いことになってきている」
「ジュリアスは天然だから。あの子、指輪から紫の糸を出せるようになってね。私が教えた以上のものになるかもしれない。もう少し教えることはあるけど」
「もう少し面倒見てやるか。準備しながら1年くらい」
「そうね。それよりサイスの情報どう思う。ゾルビデムが民主主義者だって話。最大帝国の皇太子の外祖父が民主主義者だっていうのは、自己矛盾も甚だしいよ」
「その方がより大きな利益と権力を得られるとしたら、あり得るかもな」
「ン・ガイラ帝国の皇帝以上の権力って何よ?それ以上ってもう神の領域だわよ」
「世界統一しかない。俺の考えでは、12年前のドンザヒのルアイオロ討伐が第1段階。次がもうすぐ始まるカナス辺境伯討伐が第2段階。第3段階がセバートン王国征服。第4段階が神聖クロエッシエル教皇国との全面対決と読んでいる」
「どこに民主主義があるのよ。国家間の国盗りごっこじゃない」
「民主主義を唱えて、敵の勢力を動揺させる効果はあるさ。勝ってしまえばあとはどうにでもなる」
「隠れたる神の兄弟団ってどう絡むの?」
「それはまだ俺にも分からんな。でもゾルビデムの仲間であることは確かだな。だから俺たちの仲間かもしれない」
「やっぱりゾルビデムたちの計画の第2段階に、私達が割り込んだわけだ。カナス辺境伯を倒そうとしていたら、私達と、それにヴェイユ家がカナスに敵対し始めたと」
「ゾルビデムから見たら、俺たちは掌の上で踊る道化なんだろうな。うまくいけば邪魔なカリクガルを殺してくれるし、失敗しても彼等は何も失うものはない」
「クルト。それでもやるの?私は自分の理由があるから、一人でもカリクガルを倒すけど」
「恋人のテッドはどうするんだ。彼はゾルビデムの義理の息子ということになる。分かっていて付き合っていたのか。何かに利用するために」
「そんなわけじゃないわよ。テッドはロマンチストだから、美しいアリアにあこがれてしまったのよ。女ならそういう男は受け入れるべきだっていうだけ」
「心が広いな、アリア様」
「クルトも嫌いじゃないわよ」
「アリアの目的は昔の男を取り返すことだろう。それができればカリクガルはどうでもいいんじゃないのか」
「ディオニソスを取り返して殺してあげるのは最大の目標だけど、カリクガルがそれを黙って見逃してくれるわけがないと思っている。避けられないんじゃないかな。カリクガルとの対決」
「アリア。気を付けて、カリクガルから隠れておけよ。自分を狙っていると感づいたら、奴はお前をひねりつぶしに来るぞ」
「わかっているわよ。今の私じゃカリクガルにはかなわないってね」
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