第153話 ミックスのリビー
リビーの母はリザードマンだ。母のターニャは、トカゲらしさなどあまりないきれいな人だ。父は分からない。でもケンタウロスであることは、リビーの大きな目でわかる。母のターニャは村全員の性奴隷だったし、盗賊団の性奴隷である期間も長かった。
獣人と獣人のミックスは最も低い地位にある。リビーは村から盗賊団に差し出された。スノウ・ホワイトが乗っ取った、あのベガス村近郊にいた盗賊団である。差し出されるとき、サイスはそこにいたのに何もしなかった。あとでサイスから謝られたが、サイスが悪いなんて、リビーは全く思っていない。
盗賊団からチームに救い出されたこと、母と妹まで救い出してくれたことをリビーは心から感謝している。特にエルザにはいろんな面倒を見てもらった。チームに入れてくれて、様々な能力を与えてくれたことにも感謝しかない。
それに妹のシエラは娼館に売られるのではなくて、第2学校魔法科に入学するのだった。黒騎士クルトが、書類上ターニャと結婚したため、ターニャだけでなく、シエラもリビーも貴族の末端に加わった。エルザも書類上の姉になるのだ。夢のようだ。
リビーはセバス2から呼ばれた。2週間のブラッシュアップである。
「実は進化の実を食べたら能力値は1・5倍になるのですが、状態に変化があるかもしれません。そうなったら今の姿に戻れないかもしれません。どうしますか」
「強くなれるなら、どんな醜い姿になっても構いません」
能力値が1・5倍になった。そして種族選択(人化・獣化A・獣化B)の3択が発現した。今までのリビーはヒューマンとあんまり違わない外見だった。違うと言えば、目がパッチリしていて、爪と牙がとがっていること、胸と足がたくましいことぐらい。
3つの状態は瞬時に切り替えられる。人化すると獣人の特徴は全くなくなる。ヒューマンよりヒューマンらしい外見になる。獣化Aでは、鱗のあるリザードマンに先祖返りする。獣化Bでは4つ足のケンタウロスになる。人化では知力と魔力が高く。リザードマンでは攻撃力と防御力、ケンタウロスでは攻撃力と敏捷が高い。
ただ以前の状態に戻れなくなった。ヒューマンとさほど変わらないが、獣人のミックスだとわかる、今までの状態にはもうなれない。
セバス2が予測していたのがこれだった。3つの状態をとれることは、戦うにはメリットがある。普段は人化状態で魔法系と思わせておいて、近接戦になった時、獣化Aあるいは獣化Bに瞬時に変われば、敵は対応できない。
ブラッシュアップでは、まず人化状態での戦い方を考える。
「どんな戦い方をしたいですか。今持っているのは剣技と火魔法ですが変更するなら今です。ただ火魔法は生活3魔法の限界突破で、一つレベルが上がっています」
「一応どんな魔法にも適性あるのよね」
「どんな魔法にも、どんな武器にも」
「珍しい魔法にしたい」
「雷か氷か光か闇」
セバス2が答える。
「氷がいいんだけれど、シエラと被るわね」
「必ずしもいつもシエラと一緒に戦うわけじゃないです。好きなのを選べばいいと思います」
「じゃあ氷属性。氷の女王になりたかったの」
「武器はどうしますか」
「杖系で」
「獣化の時と同じ武器にした方が、レベル上げしやすいですよ」
「それじゃ保留」
「次はリザードマン。ガチな近接系です」
「槍と盾ね。盾は小さくて殴ったりもしたい。槍は短槍」
「いいですね。凶悪です。ケンタウロスではどうしますか?こちらは敏捷が特徴です」
「遠くから氷魔法を打って、素早く近づき、槍で刺す」
「イメージできました。人化したしたときの武器は杖に見せかけた槍にしましょう」
「槍のカバーに青い宝石つけてくれると嬉しいです」
「わかりました。生産スキルはどうしますか」
「必要かしら?」
「あと三年少しで、チームは解散します。リビーはその時19歳です。そうなったら必要ですよ。ずっと闘い続けるつもりですか」
「考えていなかった。将来の私。冒険者やって生きていくのかな」
「普段目立たないように人化して暮らしますか」
「多分そうする」
「だったら気を付けてください。リビーは美しすぎます。危険なくらい」
「ダンジョンコアにナンパされるとは思っていなかったわ(笑)」
「私にそのような感情はありません。冗談じゃなくて、客観的にそうなんです」
「信じられません」
「リビーは貴族の娘ですし、知力も高いです。それに人化状態は、ヒューマン以上に純粋なヒューマンの美を与えてくれています。チーム解散後、有力貴族から婚姻の話があるかもしれないです」
「私、最底辺の獣人ミックスで、盗賊団の共有性奴隷だったんですよ」
「あの時のリビーと、これからのリビー。同一人物と思う人はいないです。それに盗賊団は全員死んだか、奴隷です」
「悪い冗談は人を傷つけます」
「正直戦う必要があるのかなと思いました」
「戦うことが私のクエストなんです」
「話を戻しますね。生産スキルは何か身に着けてもらいます」
「どうしてもというならガラス工芸にしてください。氷に似たガラスが好きなんです」
「わかりました。プログラムを組むので、午前中ダンジョンでいろんなモードで戦ってみてください」
セバス2はリビーが戦う意味について考えていた。そしてターニャがブラッシュアップに消極的な理由が分かったと思う。彼女たち家族は、復讐には直接参加しないという約束でチームに入っている。先を見通すと、必死に強くなる必要がないのだ。むしろ強すぎると、普通に生きるには危険になる。
今度ターニャに、生産職としてのブラッシュアップを進めてみようと思った。あるいは限界突破によってターニャにも、ヒールレベル1が発現しているはずだ。ヒールのレベルを上げて、ターニャがヒーラーとして生きていくこともありかもしれない。
2週間後のステータスである。氷魔法を限界のレベル5まで上げた。氷槍レベル2が発現した。それだけでなく従来の剣技と火魔法の効果で火剣レベル2になった。消すのももったいないので残してある。
【名前】 リビー(人化)(リザードマン)(ケンタウロス)
【人種】 獣人ミックス(リザードマン・ケンタウロス)
【年齢】 16歳
【HP】 157/157
【MP】 141/141
【攻撃力】 180 (190) (185)
【防御力】 162 (185) (171)
【知力】 160 (143) (150)
【敏捷】 148 (134) (161)
【器用さ】 129 (112) (111)
【運】 72
【ギフトスキル】 魔法武器レベル2(氷槍レベル2 火剣レベル2)
【武技】 槍技レベル2 剣技レベル1 盾技レベル1
【攻撃魔法】 氷魔法レベル5 水魔法レベル1 火魔法レベル3
【その他】 ヒールレベル1 ガラス工芸レベル2
それにしても若手ではエルザをしのぐ能力値とスキルである。しかも5年ごとに1・5倍になる。26歳で世界最強レベルになってしまう。強すぎるリビーが、戦わずに生きていくことはできるだろうか。美しすぎて、強すぎる。それがリビーを不幸にするのではないかと、セバス2は怖れる。
リビーは最後にガラス工芸で作った作品をセバス2にプレゼントしてくれた。薄青い紡錘形のガラスのオブジェの中に、紫の糸に巻かれた、赤い花が封印されていた。
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