第150話 二日目以後のリリエスとケリー

 2日目は密林のダンジョン。ここは気温が高く暑い。でもジュリアスがスパイダーシルクで作る下着は温度調節がついている。外がどんな環境でも問題ない。


 ファントムが転移ポイントを最下層のボス部屋の近くに置いてくれていた。ボスはジャイアント・トレント。木のモンスターだ。ジャイアントというだけあって、5メートルくらいあって大きい。


「リリエス、でかい。勝てるかな」


「聖剣を手に入れられるのは、それにふさわしい者だけよ。ケリーならできる」


 棘のある木の実を投げてくる。枝が鞭のように襲って来るし、根が地中から剣のように切りつける。やはり格上で、ケリーの勝てる相手ではない。リリエスがスキル強奪を使ったのは30分後。昨日と同じペースを守ることにする。


 必中のグローブとマナスのペンダント。必中のグローブは弓や投擲で矢や礫が的に当たる確率を上げてくれる。ケリーならチーム共有スキルの吹き矢の精度が良くなる。


 マナスのペンダントはHPとMPの充足度を常に同じ割合に保つ。つまりHPが減ったら、MPで代替してくれる。逆も可能。


 このペンダントは、リンクしてない時に必要だ。リンクしていても相手の一撃が大きいときは、必要なアクセサリーである。リンクはごくわずかだが、タイムラグがある。敵の一撃が大きく一挙にHPが奪われるとやられてしまう。このペンダントにはタイムラグがない。魔導書は『染色素材の本』と『キノコ大図鑑』の2種類だった。ファントムを呼んで、昨日の手順のくり返し。


 3日目は湿原のダンジョンで、ボスはラミア・クィーン。大蛇だが、上半身が人間のモンスターだ。アラクネのアリアやサチュロス、ケンタウロスなど半人半獣型モンスターはけっこういる。


「わあ、おっぱいアリアとおんなじくらいある」


「ケリー、真面目に戦いなさい」


 ラミア・クイーンは毒液を吐いてくる。ケリーは毒耐性を稼いでいるだけだ。いつものパターンで30分でリリエスが助けに入る。回避の魔眼と透過の魔眼が手に入った。透過の魔眼は隠し扉や罠の発見ができる。強奪したのは自動再生のスキル。魔導書は『毒魔法』と『神聖魔法』。


 4日目は廃墟で、ボスはミスリル・リビングアーマー。鎧だけで頭部がない。氷魔法の氷槍で攻撃してくる。防御力が高く、ケリーの攻撃があまり効かない。30分後、リリエスがスキル強奪だけでなく、ヒールを攻撃に使って何とか倒す。アンデッドにはヒールが攻撃になる。


 MP吸収の盾を得た。これは魔法攻撃を盾が吸収して無効化する。MPを盾に蓄積できるので、魔石の充填もできる。チーム共有スキルの刺青は、MPを使わない代わりに、魔石を使用するので、便利かもしれない。


 もう一つは氷聖玉。相手の熱を奪い続ける呪石だ。ミスリルのインゴットもたくさん出た。強奪したスキルは鎧操作。鎧だけでなく、魔術師のローブなど着ている物なら何でも自分の意志で動かせる。魔導書は『氷結魔法』と『木魔法』。どちらも珍しい。


「リリエス。なかなか聖剣出ないね」


「トレジャーハンターは根気が大切なのよ」


 5日目はスケルトンキング。場所は墓場。ここでケリー待望の聖剣が出る。防御無視の剣。確定で敵のHPが減る。強奪スキルはマナ・ドレイン。HPやMPを敵から吸う。周りの自然から吸うこともできるようだ。魔導書は『アンデッド図鑑』と『昆虫図鑑』。


 6日目は嘆きの要塞。砂漠の広域平面ダンジョンで一番奥にこの要塞がある。ファントムがいてくれて本当に良かった。時間がかかりすぎる。ここで身代わりのアミュレットを手に入れた。1回だけどんな災厄でも防いでくれるお守りだ。死も防いでくれる。強奪したスキルはピンチの時に戦場を脱出させてくれる、帰還スキル。魔導書は目的の『白紙の魔導書』を入手。記憶を外部化し、新しい魔導書を作ることができる。


 リリエスがこれを欲しかったのはケリーのためだ。辛い記憶を魔導書に外部化し、分担してもらう。記憶が無くなるわけではない。それでケリーの2時間おきの悪夢のフラッシュバックが無くなると良いのだが。


 もちろん一真にも使ってもらう。彼等の持っている異世界の知識を、チームが魔導書で共有できる。それはいろいろ役に立ちそうだとリリエスは思っている。


 この夜、魔導書にケリーの記憶を吸ってもらった。結果から言うと効果はあったが完全ではなかった。夜泣きは4時間おきと半減したが、悪夢のフラッシュバックを消すことはできなかった。


 一真の記憶である日本の知識が貴重だ。映像記憶だから意図的に学習した記憶ではなくても、たまたま目にしたテレビ番組や、読み流した本のページが記録されている。


 薬品の知識はワイズに。ファッションの知識はジュリアスの役に立つだろう。それ以外でも健康法や武道の知識、忍者の漫画やファンタジー小説、歴史の知識。現代の科学や社会の仕組み。学校で習ったことも多彩である。


 この知識がチームで共有されることに大きな意味がある。カリクガルに勝つには、カリクガルの知らない異世界日本の知識が決定的に役に立つはずだとセバス2は思う。


 次の1週間はケリーの力の底上げだ。まだまだ6歳、力が足りない。リリエスは能力値が30倍になっているのかを検証した。


 2週間の鍛錬の結果は次のようである。センサー(フル)がサーチなどのいろいろなスキルを取り込んでバージョンアップしている。チーム共有スキルでセンサー(ライト)が装備されていて、センサー(フル)と被っているので、その余剰経験値によって、バージョンアップが起きやすくなっていたらしい。


 セバス2の見立てでは、ケリーのこれ以上のスキル増加は、今の能力値が低く困難だろうと。無駄なスキルは削除された。10歳になったら、ジル隊と戦い復讐を遂げる予定である。それまでにケリーは強くなれるだろうか。


 ジル隊相手ならなら勝てるだろう。リンクでみんなに支援してもらえればだが。しかしカリクガルには到底無理である。ケリーができることは、カリクガルとの戦いからは離脱するか、あるいはセンサーとして、シーフ的な働きをするかであろう。


 なおリリエスの能力値は30倍されていた。5000程度まで能力値を上げることは可能だ。ただ普段は肩がこるので100程度に抑えている。最高まで上げれば、十分カリクガルとも戦える。いや圧倒していると言ってもいい。ただリリエスにカリクガルと戦う気があるかが問題なのだ。


【名前】 ケリー

【種】  ヒューマン

【年齢】 6歳

【職業】 ゴミ漁り奴隷

【HP】   47/47

【MP】   38/38

【攻撃力】  36

【防御力】  23

【知力】   47

【敏捷】   35

【器用さ】  21

【運】    62

【固有スキル】 痛み耐性

【武技】    短剣技レベル2   糸術レベル2

【攻撃魔法】  風魔法レベル1

【その他】   贈与  センサー(フル)レベル2


 リリエスのステータスは、その時の気分で変動するので表示不可能。スキルも必要に応じて導入したり、外したりするので表示しても意味がない。

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