第149話 ケリーとリリエス

 イエローハウスのセバスとブルーハウスのセバス2。2つのダンジョンコアはブラッシュアップの予定を打ち合わせている。


「ダンジョンマスターのクルトは忙しいので、刺青と5%の能力上昇のみだそうです」


「了解。シエラは進化の実を食べ終わったばっかりで、10月1日の入学式を控えているので刺青だけ。お母さんのターニャは刺青と進化の実、それに5%上昇だけ。レニーも刺青だけで、ブラッシュアップは10歳のギフトが発現したらということです」


「わかりました。モーリーは冬になってヒマになったらと言ってました」


 まだブラッシュアップが終わっていないのは、リリエス、狐獣人ハーフのジュリアス、ケンタウロスとリザードマンのミックスのリビー、ケリーの4人になった。ちなみに頻繁にセバスに能力アップを迫るアリアは対象外である。


 セバス2に呼ばれたのはリリエスとケリー。二人一緒にしてくれという要望だ。


「2週間何したいですか?」


「僕は宝探し。聖剣を見つけたい」


「私はその付き添い」


「ブラッシュアップの前に、必要なスキルとかありますか」


「最近追加されたサーチをケリーにあげてください。あとは必要に応じて私が念話を利用して買います」


 サーチは索敵と似たスキルだが、対象を指定すると、どこにそれがあるか教えてくれる。敵でなくてもいいので、探し物に便利だ。ドライアドのダンジョン転移や、ワイズの地図データと組み合わせると驚異的なスキルになる。


 「聖剣、近く」と指定すると、本当にケリーの脳内の地図に10個の赤い点が光った。リリエスもサーチを導入してレベルを10に上げる。リリエスが入力したのは「魔導書、遠く」だ。こちらも10個くらい赤丸がつく。


「私の方がサーチレベルが高いから、私に付いてきてね」


 リリエスがそう言うと、ケリーは何も疑わず付いていく。疑うことを知らないケリーである。ドライアドのダンジョン転移を利用して、どこかの洞窟のダンジョンを攻略しはじめる。朝の9時30分だった。


「ケリー、宝探しが目的だから、隠密使って。モンスターと戦わないで最下層まで行くからね」


 もちろん念話の指示である。洞窟には全く光がない。リリエスもセンサー(フル)を使っているので、暗闇でも問題ない。


「了解、相棒リリエス」


「サーチで下降階段を探して」


 リリエスはサーチで宝箱を探す。その時マップの中に、大穴が浮かび上がった。


「ケリーちょっと待って、大穴がある。穴のそばに移動せよ」


「了解。隊長」


 ケリーが穴のそばに着くと、追いかけてきたリリエスが体当たりでケリーを穴に落とした。


「なぜ、なぜ僕は殺されるの。無能だからぁぁぁ?」


「粘糸!」


 ケリーはあわてて大穴の壁に粘糸を巻き付け、無事穴の底に降りた。そこはゴミの山であった。ゴミを見ると、つい漁りはじめるケリーである。手あたり次第マジックバッグに入れている。


 その横で風魔法を使って優雅に下りてきたリリエスは、サーチを使って最下層の宝箱を探す。降りてくる途中で見かけたモンスターたちからは、スキル強奪でスキルを奪っている。セバス2から頼まれたのだ。どんなクズ魔法でもいいから集めてほしいと。


 宝箱は最下層に3つあるようだ。ルート探索をすると、そのうち一つがボス部屋の近くにある。他の二つは無視する。


「ケリー、ボス部屋分かる?」


 隠密のままボス部屋に向かう。最下層のボス以外のモンスターに気づかれることなくボス戦突入。ボスは大コウモリだった。ケリーよりはだいぶ格上。暗闇での戦いだ。ボスは針を飛ばしてくる。多分毒針だ。ケリーは傷つきながら善戦中。リリエスは心配していない。自分だけでなく、チームとリンクしているから、HPとMPは無限に回復する。


 右目の幸運値上昇のスキルを導入してから、リリエスはケリーの拾ったゴミをリペアする。ゴミ漁りがチームの収入源である。けっこういいかもしれない。セバス2に値段をつけてもらうのが楽しみだ。ゴミの中に聖剣があったら、ケリーにあげると喜びそうだ。


 30分後、ケリーまだ元気に戦っている。実際のところは、ただやられているだけ。リンクで回復している。リリエスは大コウモリからスキルを強奪。投擲スキル、暗黒スキル、音波ソナースキル、魔力探知スキルなどを奪う。ボスは一気に弱体化して、ケリーはボスを討伐した。


 ボス部屋に、持ってきたポータブルダンジョンコアを置いて、移動拠点を確保。またボス部屋に戻るので、ドアが閉じても大丈夫なようにである。その上でボス部屋を出て、宝箱を発見。ケリーが大喜びで開けようとする。ケリーを止めて、リリエスが開け方を教える。後ろから鍵開けスキルで、宝箱を開けて見せる。ミミックの可能性があるから。


「わーい。指輪だ」


「良かったね。宝物発見だ。ケリーすごい」


 鑑定するとミラージュの指輪だった。幻影を作り出して、それを攻撃させる。宝箱の後ろに、むき出しでダンジョンコアがある。ファントムを念話で呼び出して、攻略したダンジョンコアと契約を結ばせる。その上で3つ目のダンジョンコアであるブラウニーと統合し、このコアはポータブルダンジョンコアに格下げになる。


 ファントムがダンジョンマスターであるブラニ―ダンジョンも、一気に充実する。きちんとモンスターを狩らないと、スタンピードを起こしたりするが、アリアの幻像であるサチュロスたちが、毎日必ず来てくれるので安心である。


「ファントム。悪いんだけどこのポータブルダンジョンコアを、私の地図上の、このダンジョンの最下層に置いて来てくれる。ボス部屋の近く。明日そこ行きたいの」


 リリエスは念話でファントムと地図データを共有した。


「リリエス。了解です」


 ファントムは幻像になれば、気づかれずにどこでもいける。明日は今日よりめんどくさく無いはずだ。ケリーにミラージュの指輪をつけさせて、音波ソナーと、魔力感知のスキルはセンサー(フル)に統合。準備よし。


 ボス部屋に転移し、竜の咆哮で脅してやる。大コウモリがリポップ。2回戦だ。


 25分後、リリエスがスキルを強奪。ケリーが勝利して、宝箱を獲得。もうケリーに任せて大丈夫だ。今度は『生物モンスター大図鑑』。ケリーは聖剣を探索していると思っているが、リリエスがサーチしたのは魔導書なのだ。さて、まだお昼前。あと2回でお昼かな。つまり午前中で4回闘う。


 お昼はリリエスのお弁当。見知らぬダンジョン最下層で和む二人である。1時頃から、4時まで7回闘って、指輪と魔導書の数を増やす。4時ころにセバス2のいるブルーハウスダンジョンに転移。余ったスキルやお宝を売却。ケリーの能力も少し上がる。


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