第147話 ネストの秘密

 一真が今取り組んでいることは3つある。ジンメルの道場で日本の剣を学ぶこと。新しいスキルや魔道具を開発すること。外国で面白い商品を買い付けることである。

 セバス2が聞く。


「一真、2週間何したいですか」


「攻撃魔法を闇魔法に変えたんだけど、それに習熟すること。それにいらないスキルを整理したい。でも一番は魔道具の開発かな。そのためにいろんなスキルを集めたい」


「リリエスが集めたスキルたくさんありますけれど」


「もっとたくさんほしいんだ。リリエスのリストにないスキルなら何でも10万チコリ払うって、みんなに言ってほしい」


「クズスキルがたくさん集まってきますよ」


「役に立たないスキルの中に、たまに貴重なモジュールがあるんだ。モジュールって、部品のようなもの。スキルを分割して、取り出したモジュールをを組み合わせて、新しい魔道具を作りたい。そして魔道具が新しいスキルにもなる」


「どんなものを今考えていますか」


「冷蔵庫と電子レンジというかオーブンのようなもの。それと刃が回転していろんなものを粉末にしたり、ジュースにするようなものかな。商品化して外国にも売りたい」


「24時間、魔道具では飽きるでしょう」


「居合の練習でもしているさ」


「一つお願いがあります」


「できることなら」


「ネストっていうスキルありますよね」


「HPが1になった時、強制移転する異空間」


「自分の意志で行くことできますか?」


「行けたら面白いな」


「試してもらえますか」


「いいよ」


「実はもう一つ。弱いモンスターを作ることはできますか」


「ダンジョンメニューにいるんじゃないかな」


「見当たらなくて」


「ダンジョンメニューに強く言えば出てくる。こっちはお得意なんだからさ。それは僕はやらないけど。そう言えばやらなくちゃいけないことがあるんだ」


「なんでしょう」


「指揮のスキルとセンサーのスキルを統合したいんだ。天使降臨の時の箱庭みたいなやつ。あれのバージョンアップをしたい」


「確かに優先事項です。協力します」


 一真はダンジョンの自分の研究室に籠った。彼の場合細かく言うより、好きにさせた方がいい結果になる。翌朝、さっそく結果が出た。


「ネストに行けた」


「どんなところでした」


「虚無空間。退屈だった」


「念話できますか?」


「できなかった。持ち込みはできる。でも持ち出すことはできない。あとは出る時はHPとMPが満タンになっていないとだめだった」


「活用法は?」


「坐禅するのに、静かでいい。ジンメル道場では坐禅させられるから」


「リンクでつながっている時、安全な異空間に一人でいて、エリクサーを用意してというのは可能なんでしょうか。それができれば本当に不死のチームができる」


「今度リンク試してみる、ところで誰かスキル持ってきた」


「サイスが仲間つれてきました」


「サイスに仲間か?で、どんなスキル」


「サーチという、ものを探すスキル。それと魔石を食べるスキルです」


「魔石食べるとどうなるのかな」


「ごくまれに能力値を1得たり、魔石のもとになったモンスターのスキルを得られるそうです」


「それ。そういうの欲しかった。その人に魔石いっぱいあげてほしい。むしろ義務付け。雇う、いくらでも払う」


「食べられる魔石の量には限界ありますし、廃魔石でいいそうです。必要以上に支払う必要はないですね。サイスの奴隷で、Fランク冒険者です」


「わかった。サイスの仲間って言っても奴隷か。ともかく雇う。変なスキルって大事なんだ。どんどん買うって言っておいて」


「わかりました。あとサイスが。幻像というスキルを使っているんですが、その幻像が、実体、幻像、物質の3モード持っています」


「呼んで。それスキルにしたら、すごい。幻像化スキルとか物化スキル、すごいことになりそうだ」


「今念話したら、夕方来れるそうです。幻像だけ来ればいですね」


「了解。僕はネストで坐禅してくる。虚無に向かい合ってみる」

 

 その直後、また一真がセバスに話しかける。


「夕方のはずなんだけど。セバス、少し変だ」


「5分前にネストで坐禅するって行きましたよね」


「ネストに行ってる間、こっちの世界では時間が進まないみたいだ」


「・・・・・・・」


「セバス。僕は悟りを開けるかもしれない。無限の修行の時間がある」


「すぐ進化の実を食べてください」


「意味が分からない」


「一真は1.5倍になります。能力値が。でも5年の間隔を空けないと、次の進化の実は食べられません。でもネストに入っていたら、5年はすぐ経ちますから、また進化の実を食べられます」


「いやそんなに長く虚無に向かい合うのは無理」


「チャレンジしましょう!」

 

一真の能力値は1.5倍に増えたのである。夕方まで一真は慣れるためにダンジョンで狩りに励んだ。夕方、ファントムと左手のない奴隷がやってきた。奴隷はいう。


「アミーフと言います。魔石喰いのスキル持ってます。指名依頼してくれるそうで」


「今までに魔石を食べて手に入れたスキルはあるの?」


「くだらないスキルで、ウィンクというやつでした。片目をつぶれるようになる。そんなんじゃ買ってもらえませんよね。あんまりくだらないからこの魔石喰いのスキルのこともファントムには言わなかったんで」


「いや10万チコリで買う。もし仲間がいるなら、一緒に魔石喰いやってほしい。それで変なスキル集まるとうれしい。詳しいことはセバスと詰めて」


「私はファントムというサイスの幻像です、今はヒューマンに実体化しています」


 セバス2に頼んでファントムから、スキルスクロールにできるものを検証してもらう。物化だけはスクロール化できた。幻像化などがなぜスクロール化できないかは分からない。


 物化は有用なスキルだ。生物を物化すると仮死状態になる。マジックバッグに入れることもできて、家畜の大量輸送もできる。人間も同じことができるはずだ。


 夜、ワイズがやってきた。ワイズもネストに行くという。薬師として必要な最低限の器具と素材を準備している。一真がアリアのエクスタシーのポーションを忘れないようにアドバイスしている。坐禅の無の境地と、陶酔はよく似ているというのだが、気を紛らわすにはいいのだろう。


 ワイズがネストに行くのは、薬師のレベル上げもあるが、自分だけ取り残されたくないというのだ。この二人の関係は案外進展しているのかもしれない。セバス2にはワイズがエリクサーを開発できる可能性が出てきたと思う。ちなみにネストでもリンクはできるそうだ。


 2週間後、一真は冷蔵庫やオーブン、ミキサーだけでなく、魔石コンロや汎用精製樹(不純物を取り除く道具)、真偽判別機(衛兵が使う)、ゴーレム馬のブースターなどを製品化した。


 指揮スキルも、鑑定、表計算2、並列思考、高速思考などを統合し、統合指揮にバージョンアップした。


 それ以外のスキルも温度調節、回転、物化、反転(アンチ)、能力ブースト、毒霧発生、精製を新規あるいは改良して、リストに付け加えた。回転は例えば風魔法と組み合わせるとトルネードという魔法スキルになる。そこは各自の創意工夫に任せているのだ。


【名前】 一真

【種】  アリ型モンスター

【年齢】 13歳

【職業】 見習い剣士 魔道具士

【HP】  80/80

【MP】  88/88

【攻撃力】 71

【防御力】 61

【知力】  108

【敏捷】  62

【器用さ】 103

【運】   72

【ユニークスキル】 分解・統合

【種族スキル】  飛翔レベル1 人化 ネスト

【ギフトスキル】 憑依

【武技】     刀技レベル1 糸術レベル1

【攻撃魔法】   闇魔法レベル1

【その他】    総合指揮レベル1




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