第141話 裏技発見
数字が何を意味するか。考察するには良いグラフが必要である。図書館への入場者数を、棒グラフや折れ線グラフにしてみる。色彩も大事だ。見やすさは大事なのだ。
多い順に並べ替えたり、水曜日だけ抜き出したりした。土曜日が特に入場者数が多い。多分土曜日が休みの職場もあり、かつ学校が半日で終わる為でもあった。
少ないのは水曜日であった。これは水曜日が、学校が校外のダンジョン実習で、午後遅くまでかかるためだった。こうやってみると図書館利用者に学校の生徒に多いことが分かる。
サイスはこのデータを受けて、図書館の休日を水曜日に変更し、安息日を開館日にしたのである 今までの表計算は縦横の合計や、平均値の計算をするだけだった。サイスは表計算にグラフ機能、ソート機能、検索機能を組み込んだ。
サイスがもう一つテーマとしたのは、塩の価格である。これを見やすくするためには、地図上にグラフを表示しなければならない。サイスはワイズの地図製作工房のマップデータを表計算に取り込もうとしている。
月曜日の朝、ファントムがテイムしてきたのは、灰色の小さい、本当に小さい子オオカミだった。調べたら雌だ。ファントムはちび丸と命名していた。「すぐ大きくなるのに」と思いながら、サイスは何も言わないでいた。夕方まで森で訓練と命じておく。
夕方、ジュリアス隊長の下、サイス・ファントム(人型)・ちび丸で野良ダンジョンの攻略。角兔とゴブリンしかいない2層のダンジョンだった。簡単に攻略。まだ人化もできない、幼いダンジョンコアだった。
「ダンジョンマスターはファントムにする。ダンジョンコアの命名をして」
ジュリアスが口をはさむ。
「ブラウニーというのはどうかしら。屋敷妖精はブラウニーよね」
サイスはどうでも良かった。ファントムが答える。
「わかりました。ブラウニーと命名します」
1層に薬草園を追加し、最下層の4層に大きな部屋を作る。DPはほとんどなかったので、50万チコリでDPを購入し、好きなように改装していいことにする。
それに食いついてきたのはジュリアスで、調理場を作ったり、トイレを作ったり、いろいろしていた。ファントムには、夜はダンジョンで稼いで来いと命令しておいた。
翌日火曜日、なぜかファントムとちび丸はジュリアスと訓練に行ってしまった。ファントムはモフモフバージョンだ。サイスは通常の図書館業務。夕方に帰ってきたファントムを連れて奴隷商へ出かける。
ここも20歳男性の姿のファントムが一人で入る。腹話術方式である。
「格安の獣人奴隷が欲しい」
「予算は?」
「一人3万チコリ以下」
「そんな値段じゃ、廃棄予定の奴隷しか買えないぜ。遊びなら奴隷を殺して遊ぶんじゃなくて、もっと健全なことをして遊んだらどうデェ。薬で女ヨガらせるとか」
「使用目的は秘密だ。居ないなら他へ行くが」
「捨てる予定の奴隷だから、1体、5000チコリで売る。獣人じゃなきゃダメか?」
「獣人以外も全部見せてくれ」
奴隷商は3人連れてきた。一人は這っている。
「最初のやつ。43歳の病気の熊獣人。歩けない。男性。土木作業員だったが、働けなくなって売られてきた。明日殺す予定だ」
「ほかの二人も紹介してくれ」
「次は狐獣人。32歳。女性。薬草採取をしていたが、オークに襲われ、3年間苗床にされていた。助けられた時、視力を失っていた」
「次」
「最後はヒューマン。25歳男性。狩人で罠使い。モンスターと戦って、左手を失う。罠も弓も使えなくなり奴隷落ちした」
「全部買う。この場で奴隷契約してくれ」
「本気か。歩けない、目が見えない、片手がない。ちゃんと言ったからな。返品不可だぞ」
サイスは3人を連れてブラウニーのダンジョンへ。歩けない熊獣人はファントムがおんぶしている。ずっと腹話術モードを解かないで、気配遮断して、サイスは姿を見せない。最下層の大部屋に連れて行き、ベッドと毛布を3つ買う。
最初に3人に限界突破のスキルを入れる。3人ともヒール、水魔法、火魔法のスキルが発現した。おそらく15歳以上なら経験値が十分あって、限界突破を使えば、この3魔法は発動するようだ。それぞれ自分をヒールさせる。ファントムを起点に相互リンクを完了。ちび丸、ブラウニー、サイスも含めて7人のチームだ。
「名前と持っているスキルを言ってくれ」
「シルベスタ。熊獣人です。スキルは怪力レベル2と土魔法レベル1です」
「病気は何?」
「腰痛でして。重いものが持てなくなり、それから痛くて歩けなくなったんで」
サイスは痛み耐性と剣技のスキルを買い与える。痛みは止まって歩けるようになった。
「カエリ。狐獣人。スキルはサーチレベル3です。思い描いたものがどこにあるかわかります。でも目が見えなくなって」
サイスはリンクとセンサー(ライト版)を買う。リンクでちび丸と感覚共有。これでちび丸の目を借りて一応見えるし、センサー(ライト版)で、強化された他の感覚が、見えないのを補ってくれるだろう。
「アミーフです。弓技レベル2と罠設置レベル3でしたが、左手を無くして、どちらも使えなくなりました」
サイスは吹き矢(魔法矢)のスキルと木製の吹き矢の筒の2つを買い与えた。
「シルベスタ、15万5千チコリ。カエリ20万5千チコリ。アミーフ11万5千チコリ。これだけ貸したから。家賃はタダ。その代わり僕が死なない保険になってもらう。質問は?」
「・・・・」
サイス以外誰も事態を把握できていない。
「食事はここのダンジョンで、自分で稼いで。角兔がいるから、その肉を食べれば生きていける。余ったら貯金して、自分を買い戻すと良いと思う」
熊獣人のシルベスタが質問する。
「ダンジョンで戦うには武器がいるんですが」
「武器は昨日ゴブリンが落としたやつ、リペアしてあるから、それ使って。あと限界突破スキルはそのうち返してもらうからね。ただ3つの魔法は消えないから安心して」
「それじゃ最初の食事はタダでいいから。頑張って。夕食後、ダンジョンに入った方がいいとぼくは思う。それと毎日MP使い切って寝ること」
水曜から土曜まで、サイスは通常業務。ファントムたちは冒険者登録や衣服の購入など、忙しくしていたようだ。ファントムはもちろん夜も働いている。稼いだ金はしばらくブラウニーダンジョンに使っていいことにしてある。
2回目のブラッシュアップの日。サイスは前日に表計算スキルをレベル2にしていた。目標達成だ。ファントムと二人でセバスと会う。
セバスはまずファントムに進化の実を試すという。幻像にも進化の実は有効だった。能力値が1.5倍になる。ファントムが力に充ちて輝いた時、同時にサイスも輝き始めた。幻像の能力は作成者の7割だから、ファントムの能力が上がると、それに合わせるようにサイスの能力も上がったのだ。裏技発見である。
【名前】 ファントム
【種】 幻像
【職業】 ダンジョンマスター
【HP】 49/49
【MP】 48/48
【攻撃力】 48
【防御力】 51
【知力】 70
【敏捷】 47
【器用さ】 51
【運】 52
【スキル】 リンクレベル1 テイムレベル1 リペアレベル4
剣技レベル1
チーム共有スキルは必要以外表示されない。
【名前】 サイス
【人種】 ヒューマン
【職業】 図書館長
【年齢】 11歳
【HP】 70/70
【MP】 68/68
【攻撃力】 68
【防御力】 71
【知力】 98
【敏捷】 66
【器用さ】 71
【運】 72
【スキル】 読書 幻像 表計算レベル2(1+1) 高速検索レベル1
剣技レベル1
検索レベル1を追加してもらったのだが、センサー(ライト
版)の似た機能と統合されて、高速検索が発現した。
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