第140話 不死対不死の戦い?

「何種類の仕事ができるかまとめてください。結論だけ」


 セバスがサイスに聞いている。


「地図データの収集・冒険者・清書マシーン・能力値を上げてくれる相棒・伝書バトの代わり・モフモフのペット・馬車を引く馬・泥棒・学校の先生・居酒屋の手伝い。10種類かな」


「経理の事務員忘れています。それより大事なことはこのスキルを使えば、チームの人は誰も死ななくなるじゃないですか。サイスは一番大事なこと気がつかなかったんですか。控えめに言って抜けてます。死にそうになったらリンクしている誰かが、ポーション飲めばいいだけです」


「そう言えばそうかも。でも言い方ひどくない。まあいいけど。チームにはワイズとか、不死の人いるから、その人がポーション飲んでれば、だれも死なない。不死のチームになるんだ」


「リンクは敵のスキルなので、相手も不死のはずです。でもこのスキルをこっちも使わないと負け確定です。すぐアリアかジュリアスに来てもらって、これをチーム共有スキルに組み込んでもらいます」


 しばらくファントムとダンジョンで狩りをする。二人とも剣だが、その方がサイスの剣技のスキルも上がるので悪くはない。サイスには図書館と各都市での情報集めがあるから、魔物を倒して能力値を上げる時間がない。ファントムが能力値を上げてくれると、サイスは助かるのだ。


 アリアが来てサイスが呼ばれた。セバスが念話でみんなと話したようで、全員の賛成でリンクをチーム共有スキルの刺青に入れることになった。魔法陣は書き直しである。たくさんのスキルを一つの魔法陣に入れるのは、これでもう完全に限界らしい。


「サイスの背中の魔法陣そのままでもいいかな。もちろんリンクスキルの追加はしてあげるわよ。小さく別の刺青で。消すのって手間がかかるし、お肌に良くないの」


「追加でもう一ついい?」


「小さいスキルならいいわよ」


「検索が欲しい」


「それはセンサー(ライト版)にもう入っているけど」


「高速な検索が欲しいんだ。それとファントムはリペアの高レベルでお願いします」


「ファントムもか。まあリンクスキル発見したご褒美っていうことで、いいわよ」


「みんな幻像のスキルほしがるかな。アリアはどう思う」


「私は12体の幻像が欲しい。全部サチュロスにする。昔いたの。私の眷属のサチュロス。下半身山羊で上半身人間でね。それはたくましいやつらだった。幻像は全部サチュロスにして、全員にエロスの小弓を持たせるつもり」


セバスが口をはさむ。


「えっと、アリアさん。エロスの小弓は神器だからコピーできるかどうか。もしできたとしても、相当DPかかりますよ」


「一つワイズにあげるから、13個。何とかしてね。それと左目スキル、スクロールにしてあげるから活用して」


「右目がバフ、これはもうスクロール化されていますね。左目がデバフですね」


「右目は運を50上げる。運は最大で100なのに、限界突破スキルあるから100以上に上がる。博打やったら勝ちまくるわね。デバフは相手の運を50下げるの。昔のリリエスは博打やると必ず負けていたから。私のおかげで」


「アリア、それひどくないですか」


 とサイスは言う。


「それと私のお乳、戦いの時に飲むと陶酔感あって、死を怖れなくなるのね。悪いことに使うと気持ちいいわよ。サイスはお子様だからまだ分からないかな」


 セバスが慌てる。


「アリア、教育に悪いです」


「小瓶に絞っておくから、ワイズにあげて、再現してみなさいって言っておいてね。頼んだわよ。セバス」


 アリアは続ける。


「サイスとファントムは準備があるから、30分後にこっちの部屋に来てね」


「セバス、僕も欲しいスキルスクロールとかあるんだけど」


 混乱に乗じてサイスが頼みごとをする。


「念話で買えるようにしておくから、もう好きにしてください。お金はキース銀行の口座に1千万チコリ入れておきます。全員このシステムにします。特別じゃないから気にせずじゃんじゃん使っていいですよ」


「すぐ使える?」


「刺青が終わったころには使えるようにしておきます」


 サイスは自分が手柄を立てて、なんか得意である。


「セバスはどう思う。幻像のスキルみんなも欲しがるだろうか」


「幻像はスキルを覚えるコストが高くて、普通の魔法スキル3個分ですからね。よほどMPが高くないと無理です。アリアとリリエスくらいしか使えないと思います。リリエスは幻像を1から育てようとは思わないでしょうね。戦う気があまりないです。リリエスは」


「そうか僕には便利なんだけど」


「サイスは上手に可能性を引き出しましたけど、他の人では活用するのに苦労するでしょうね」


 サイスには大事に育てたい攻撃系の魔法スキルがないのである。幻像は最弱ゆえに持てたスキルだ。


「別の話なんだけど、エルザの新しいダンジョン同盟ね、進展している?」


「ええブルーハウスのダンジョンに、ここのダンジョンの訓練場を全部コピーしました。それと数も増えています。ピュリスの川のダンジョンを支配下に入れましたし。死の谷のダンジョンを復活しましたし、どんどん拡大中です。いくつか野良ダンジョンを攻略しては支配下に入れて、それなりに育てているようです」


「僕もダンジョン持とうと思っている。ブルーダンジョンの支配下ではなくて、それと同盟した独立ダンジョン。明日ジュリアスと野良ダンジョン攻略するつもり」


「サイスもダンジョンマスターデビューですね」


「ダンジョンマスターはファントムにやらせるつもりなんだ」


「詳しくは聞きませんけど、面白いかもしれませんね。幻像の使い方としては独創的です。幻像のできることまた増えますね」


「それでね、ファントムにテイム覚えさせて、従魔作ってやろうと思う」


「MP10あれば、テイムのスキル覚え魔られます。スキルスクロールは10万チコリです。可能です。レポートお願いします」


「こっちのイエローハウスのダンジョンは変化有った?」


「天使降臨で広げたダンジョンエリアを通常に戻しました。あとはリリエスの巡回しているピュリスの外側ゾーンを、4つのダンジョンに再編しようかと」


「そうすると何かいいことあるのかな」


「ダンジョンから魔物は出ないので、町の人が森に来ても安全になります。奥の方は危険なままですし、完全ではないんですけど、今よりはずっと安全になります」


 刺青が終わったらもう夕方だった。ファントムと森へ行く。ファントムにテイムを覚えさせる。10万チコリ。支払いはキース銀行から引き落とし。ファントムを灰色オオカミに変身させて、森の奥へ放つ。


 ファントムへの命令はオオカミの子供をテイムして従魔にすること。従魔にできたら自分で命名し、リンクすること。そのまま森で訓練し、朝になったら帰って来ること。


 サイスはまだ時間があるので、クロエッシエル教皇国のある都市へ転移し、いつも通りに調査業務をこなす。勤勉なサイスとファントムであった。

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