第139話 ファントムとサイス
次のブラッシュアップは1週間後だ。サイスは表計算をレベル2にするため、テーマを何にするか考えている。身近なことを題材にするしかない。つまり図書館の仕事だ。
サイスが考察に使ったのは、図書館への入場者数である。脳内に縦長に3か月分の日付と曜日を入れる。その右側に行を作り、図書館の記録簿から、入場者数を転記していく。今日はここまでしておけばいいだろう。
ファントムは何をしているか。寝る前に念話をしてみた。
「ファントム。大丈夫か?」
「サイス。オレ大丈夫」
「明日、日が昇ったら帰ってこい。僕の部屋の窓の下に来たら念話して」
まだ複雑なことはしゃべれないようだ。まあ歩いているだけでも、能力値は上がるだろう。
翌朝帰ってきたクロネコを連れて、ダンジョンの地図作製工房に連れて行き、ワイズの管理している地図データボックスの前まで来る。
ファントムのマッピングした、ピュリスの地下のデータを追加した。地下は勝手にいろんなものができているので、誰も分からない本当の迷路になっている。
「ファントム。やり方はもうわかったね。常にマッピングして週に1回、データをここに入れていくように。次からは一人でやる事」
「サイス。了解した」
ファントムがマッピングマシーンとして使えることは確実だ。次は冒険者ギルドの地下にある初心者用ダンジョンへ移動する。レンタル武器を借りて、ファントムと一緒に1層に。薬草園で薬草を採取し、マジックバッグに入れることを教える。念話でイメージ共有ができるので、薬草のイメージを共有して1層はクリア。
次に角兔を討伐。剣の扱いはぎこちないが、一人でもできそうだ。そう思っていたら、やられてカードになった。3分後に復活した。ファントムは死なないとわかる。死なない冒険者は強い。ついでなので冒険者登録をした。20歳のヒューマンの姿なので、何の問題もなく、Fランク冒険者ファントム誕生である。
図書館に連れて行き、手書きの料理のレシピ本を読ませた。この本はカシム図書館から購入した。やっと字を書き始めた人の手書きなので、内容は悪くないのだが、正直読みにくい。
ファントムは意味が分からないだろうに、カード型記憶を使い記憶し、チーム共有スキルのリテラシーを使って読んでいる。30分後にイメージ共有で見ると、とても読みやすい書体でデータ化されていた。ファントムが清書マシーンであることも確定。
図書館の接客業務もやらせてみた。もちろん一人でできるわけがない。腹話術のようにサイスが念話を使うと、ファントムの声で話すことができる。完全自立職員ではないが、サイスの研究時間が増えそうだ。サイスの図書館は待つことも仕事なので。
夕方、サイスは世界中の都市にを転移し情報収集をしている。闇の情報屋から情報を買ったり、市場でモノの値段を調べたりする。これも自由に外見を変えられるファントムの方がいい。しかし今日はファントムはクロネコになってマッピングに専念する。地図は大事な情報なのだ。
夜、今夜はアリアが面倒を見てくれる。寄生させて能力値を上げてくれる約束だ。最近のアリアはダンジョンの最下層のドラゴン級のモンスターを倒している。しかも大量に。ちょっと狂気を感じるくらいだ。でもサイスはファントムの能力値のアップには期待していた。
翌朝早く、アリアが不機嫌そうにサイスを起こす。
「こいつ、能力値上がらなくなったから、連れてきた。私はダンジョンに戻る。それから新しいスキル発現したから。リンクというやつ」
まだ暗いが、サイスの眠気は去った。まず能力値を確認してみる。およそ30代。知力だけが50突破。サイスの7割のところで止まっている。剣技1も発現していた。それよりリンクだ。
たしかにステータスにリンクと表示されている。タップすると相互リンク・サイス↓ファントム・ファントム↓サイスと3つの選択肢が出てきた。相互リンクから検証していく。
相互リンクにしたとたん、サイスからごっそりHPとMPが失われた。ステータスを見るとファントムの失われたHPとMPがかなり回復している。相互リンクでは二人のHPとMPは補い合うらしい。同じ値になるのではなくて、最大値の何%という同率に充足されるようだ。サイスがピンチの時は、ファントムがHPとMP充足してくれるのだろう。
「サイス ありがとう」
「辛かったか。頑張ったね」
他の2つのモードはどちらかが一方的に支援するのだろう。経験値を共有しますか、という選択肢も出ている。おそらく幻像の能力値は作成者の7割が上限なのだろう。アリアのハードワークに付き合って、ファントムは上限値に達したのだ。サイスは貧弱な自分の能力に泣く。
経験値を共有すれば、ファントムの稼いだ経験値の一部が、作成者のサイスのものになるみたいだ。サイスには美味しい話しだった。深夜ファントムを働かせて、サイスは寝ていて経験値が稼げる。
朝のダンジョンで昨日と同じ訓練。そこからファントムをハヤブサにしてクルトのいるアリアスに飛ばす。クルトには念話で到着時間を知らせてくれるように頼んである。伝書バトの代わりだ。
馬なら3日かかるところを、片道3時間。夕方にはクルトの手紙を持って帰ってきた。念話のできない相手には便利だ。ファントムとサイスの敏捷が1上がった。
夜はルミエに訓練を依頼。ルミエはこの頃ダンジョンの8層を巡回している。ルミエやジュリアスにファントムのクロネコバージンを見せたら大人気で、モフモフされて可愛がられている。少し羨ましい。それはともかくハードな訓練をしたら、ファントムの能力値が上昇するだけでなく、サイスの能力も上がるはずだ。
翌日はファントムを馬にして、荷馬車の馬に貸し出す。HP上昇狙いだ。マジックバッグを利用した運搬だけなら、ハヤブサの姿で十分可能だ。馬車を引いて人間を運ぶこともあるかもしれないので、馬型も重要だ。夜はまたルミエ。
木曜日は図書館業務。今日は泥棒訓練をする。実体モードで、透明人間になって、学生のカバンをマジックバッグに収納。そのまま物質化し机と一体化する。完璧な泥棒が出来上がった。もちろんカバンは気づかれないうちに返している。
夕方はテッドのゾルビデム商会で帳簿の点検。計算の合わない部分を指摘し、訂正してもらう。夜はイエローハウスのダンジョンでひたすら魔法矢を使ってMP上昇を狙う。
金曜日は図書館にミーシャが来てくれたので、ファントムはひたすらミーシャのお相手を務める。ミーシャはもうすぐ学校へ入る。楽しみでしょうがないらしく、本を読みたがるので、そのお付き合いをしてもらう。ファントムは先生もできそうである。
土曜日は午前中の図書館の料理本の清書マーシーンを務めてもらう。昼からは18歳の女子になり、森の銀狐のお手伝い。いろいろ料理も教えてもらう。夜はもう一度だけと頼みこんんでアリアに預ける。自分とファントムの能力値アップを狙う。寄生と言われても、利用できるものは利用する。それがサイスである。
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