第135話 ダレンがビビっている?

 またクルトとアリアが話している。


「スキルの外部化か。それができればスキルを持つ制限がなくなるかもしれないな。一真にできるかな」


「私はできるわよ。魔法陣にするの。そして刺青する。古代魔法だから、今生きている人で使えるのは私くらいしかいないと思う」


「それじゃこの仕事はアリアに任す」


「刺青はジュリアスに頼もうかしら。この機会に古代の魔法陣教えこむつもり。あとはセバスとチーム共有スキルを何にするか詰めておく。10個くらい可能だと思う。一旦入れたら変えられないから、慎重にしなくちゃね」


「変えられないんだ」


「追加はできるけど、面倒だわね」


「それにしてもスクロールやお金を使っても、このくらいしか上がらないのか」


「能力値はスクロールを使っても、1回に5%しか上げられないみたい」


「毎週スクロールを使って能力値を上げるということはできないのか」


「半年期間を空けないとだめだってセバスが言っていた」


「3年半だと7回しかできない。5%を7回やると、どれくらい上がるか。アリア計算できるか」


「1.4倍くらいかな。実際は年齢が上がると15歳までは自然に上がるし、訓練すれば少しずつ上がる。若い子なら1,5倍はいけると思う」


「進化の実を毎日食べるというのは?」


「こちらは数年期間を空けないとだめだって」


「能力値があげられないと、新しいスキルをスクロールで覚えさせることもできない」


「シエラはまだ12歳よ。12歳の能力値の平均は36。それがシエラは58もある。スキルの数も多いし、天才だわよ」


「そこが問題なんだ。若い連中はどんなに頑張っても、能力の平均値は200にはいかない。3年半後だって、カリクガルには到底かなわないんだ」


「何を言いたいの」


「ジル隊を殺したら、チームを解散することにしないか」


「カリクガルは見逃すということ」


「そっちはアリアとユグドラシルが同盟したらいいんじゃないか。場合に寄ったらヴェイユ家のダレンも乗ると思う」


「リリエスにだって恨みはあるはず」


「あいつは他人を恨んだりしないんだ。それにジンウヱモンは死んでいる。後継者まで恨んだりは絶対しない。リリエスってそういう女だよ。知っているだろ。リリエスはさ、今回のこともケリーのためだけなんだよ」


「私はカリクガルを見逃すわけにはいかない」


「進化の実を食べな。自分で。アリアなら能力平均700に行く。頑張れば1,5倍になるんだろ。能力値の平均は1000を超える。それならカリクガルと戦える。腐れ縁で俺も手伝う。無力だけどな」


「なんかクルトに励まされたの初めてかもしれない」


「リリエスも老衰で死ぬよりもいいって、手伝うかもしれない。ケリーが自立したらリリエスも寂しくなるから。それにユグドラシルが本気で怒っている。神様は強いし、エルフやドライアドもついて来るさ」


「ユグドラシルがルミエに千日の試練を課しているのはなぜなんだろう」


「エルフには本当はハイエルフっていないんだ。あくまで平等なのがエルフだから。それを無理やりハイエルフという上位種を作った。戦うためだろうな。カリクガルと。きっとルミエひとりじゃない。何人かいて、ユグドラシルを強力に補佐するんだと思う」


「ヴェイユ家のダレンはどうしてこの話に乗ってくるの?」


「ダレンは自分も辺境伯になりたかっただけだと思う。最初はね。実際辺境にいるんだし。辺境伯になれば2000人の兵士を持てる。国の予算で」


「それで?」


「実績をあげようとして頑張りすぎた。まずかったのは塩だな。王都の塩市場でカナスに勝ってしまった。ジュリアスが泥炭を発見して潮目が変わったからな」


「本当に戦争になるのかしら」


「いつかは必ず起きると俺は読んでいる。今回はただの嫌がらせさ。カナスの2000人の正規軍をに攻められたら、100人ちょっとの兵隊しかいないピュリスが勝てるわけがない。しかも相手にはカリクガルがいる」


「カリクガルだけでも先に倒しておきたいということね。ダレンの考えていることは」


「ダレンはビビったんだ。あいつも馬鹿じゃないから、自分の置かれた状況がやばいって気がついたんだと思う」


「勝てるかしら。私達が組んで」


「ユグドラシルの配下には弓と魔法が使えるエルフがいるし、ドライアドの長弓隊が2000人以上いる。ピュリスがカナスと対抗するには、どうしてもユグドラシルと手を結びたい。俺の読みではそのはずなんだ」


「エルフの側はどういうメリットがあるっていうの」


「魔法も弓も遠距離攻撃だから、近接部隊が欲しいんだ」


「そう言えばスタンピードの時も、カナスが危なかった時も、エルフが助けてくれたわね。今度はドライアドも」


「その内ヴェイユ家とエルフの秘密同盟が結ばれるさ」


「リングルは助けてくれないかしら?」


「リングルはン・ガイラ帝国の手先だよ。リングルは帝国のドンザヒと親戚だし、カナス辺境伯を死ぬほど憎んでいる。だから助けてくれる。ゾルビデム商会もジェビック商会も助けてくれるさ。みんな帝国の手先だから」


「確か今の帝国の宰相は、ゾルビデム商会の会長でもあるのよね」


「一見ピュリスのダレンは追い詰められている。しかしカナスの敵は案外多いから、それと手を組めば情勢は逆転する。難しいのはン・ガイラ帝国とどこまで関わるかだな」


「ヴェイユ家のプリムがリングルにお嫁入するということはそういう意味があるのね」


「ドライアドのダンジョン同盟に入れてくれたのも、最初から連中はこうなることを読んでいたんだと思う。カナス辺境伯とエルフの関係はずっと昔からこじれているんだろうな」


「私達古くからの喧嘩に、横から割り込んでいるのね。そしてもう私も引けなくなっている」


「それもすべてカリクガルを誰かが倒さないとだめなんだ。そんな大舞台にチームの若い連中じゃまだ無理なんだよ。力不足なんだ。ここがエースのアリア姫の出番だな」


「クルト、天才軍師だね」


「いや、まだ隠れたる神の教会と、ハルミナの500人消えた事件が分からない。俺なんかまだまださ」


 アリアはジュリアスに魔法陣を教え始めた。自分も激しく訓練するようになった。進化の実を食べて能力の平均値は700を超えた。さらにスクロールを使って、5%能力値をあげた。現在各能力値は750前後。成長促進の指輪も活用して、強化中である。


 アリア、案外ちょろかった。

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