第108話 狂宴
アリアからの連絡は断続的に入っていた。これを受け、対処を決定するのは主に一真が担当する。6騎はなんとベガス村に寄生しているあの盗賊団のアジトに入って行った。
盗賊団同士が仲がいいということは普通ない。同盟を結んでいるとか、支配従属関係にあるとかはこの世界ではあまりない。盗賊団が別の盗賊団のアジトに予告なく侵入するというのは、殴り込みだ。
ここでも予想通りのことが起きていた。侵入者を迎え撃たない反社会勢力はいない。12人のならず者が武器を手に騎馬隊を取り囲む。一触即発の緊張が走る。赤い鎧を着た女騎士が兜をとって、妖艶に微笑する。戦いは起きなかった。女騎士、スノウ・ホワイトは魅了のスキルを使ったのだ。
男たちは一瞬でスノウ・ホワイトの魅了に服従してしまった。外見的な魅力もある。清純で美しい外見をしているのは確かだ。しかし荒くれ男たちを一瞬で服従させたのは、強力な魅了スキルだ。
騎馬隊の6人の女たちは馬から降りて、くつろいだ様子でボスの家の中に入る。男たちは下僕のように従う。
「今日はさんざんだったわね。私が失敗するとか、考えもしなかった」
「まさか変な奴らが出現するとは思いもしませんでした」
「本当にあいつら何なのかしら。でももういいわ。ここまで襲ってはこないみたいだから、この後は楽しくやりましょう」
スノウ・ホワイトがマジックバッグから、酒と肉を取り出す。男たち6人を見張りに立てる。残りの6人を顎で使って、酒の肴を用意させ、酒を飲みはじめる。敗北したという危機感は微塵もない。
庭に焚火がたかれ、大きなイノシシの丸焼きが始まる。盗賊団がため込んだ酒や肉は全部奪うつもりでいる。いい匂いがし始めると、スノウ・ホワイトが庭に出てきて、盗賊団を全員集める。その中から特に醜い獣人を4人選んで武芸大会を始めるという。
賞品はスノウ・ホワイトの身体だ。スノウ・ホワイト達、女性6人は、派手なドレスに着替えている。外見だけは美しく、それぞれ魅力的な女だ。さらに男たちは全員スノウ・ホワイトに魅了されているのだ。
男たちはギラギラした興奮で目を血走らせ、戦い始めた。興奮しているのは4人だけではない。他の男たちも自分にもチャンスがあるかもしれないと、本能をたぎらせている。
スノウ・ホワイトは焚火の傍にベッドを持って来させた。醜い獣人と皆の見ている前で一戦に及ぶつもりらしい。戦いを見ている女たちは、ドレスからわざと足を奥まで見せたり、胸の谷間を見せつけたりして、男の興奮を煽っている。
戦いは激しいものになる。メスを巡るオス同士の血みどろの戦いだ。3戦して勝者が決まると、スノウ・ホワイトは戦いの場に入る。勝った熊獣人を上半身裸に剥いて四つん這いにし、鞭を取り出し毛むくじゃらの男をむち打ち始めた。
狂気がその場を支配する。酒は飲み放題だ。男たちは幸運な男への嫉妬で「殺せ」と喚き始めた。女たちが交替で30分も鞭打っていると、熊獣人の男は血みどろになる。
戦いの場はベッドに移る。立場が逆転して、今度は血みどろの熊獣人がスノウ・ホワイトのドレスをまくり上げ、白い尻を叩く。胸をもみ、口を吸い、やりたい放題だ。スノウ・ホワイトは外見は貴族の清純な令嬢だから、男たちの隠微な欲望が目の前で実現しているのだ。
ついに熊獣人はスノウ・ホワイトを後ろから犯し始める。こうなると興奮のあまり場に静寂が訪れる。血まみれになったスノウ・ホワイトは苦しげにあえぎ、もうやめてと懇願し始める。周りで見ているものたちの興奮はますます高まっていく。
男がついに果てると、スノウ・ホワイトは立ち上がり、服装を直す。またざわめきが戻り、興奮した男たちは近くの女を押し倒しそうになっている。スノウ・ホワイトは、自分を犯して満足げな獣人を立ち上がらせ、ナイフを取り出す。ナイフで男の首の動脈を切断すると血が噴き出した。
スノウ・ホワイトは男を逆さに木に吊るさせ。血抜きを始める。血が溜まると、その血に赤ワインを足して乾杯する、イノシシの肉が食べごろに焼けはじめ、狂ったような笑い声が響く。
「今夜は朝まで寝かせないよ。快楽の限りを尽くす」
スノウ・ホワイトは血塗られた口で宣言した。
アリアは要所要所で、エクスタシーの魔法をかけている。スノウ・ホワイトまでがその魔法にかかり、狂い始めているのである。火と肉とエロスへの期待が興奮をさらに高めていく。もう見張りも何もなく、男女入り乱れた狂宴が始まった。
アリアはこういう宴には慣れている。目立たないように全員にヒールをかけている。快楽をむさぼるのは体力が勝負だ。酒を大量に飲むにはアルコールの分解がきちんと行われないといけない。あちこちで始まったセックスも、男に精力を補充しなければ、相手を替えて一晩中続けることはできないのだ。
アリアは念話のイメージ共有機能で、ときどき情報を送る。未成人(15差未満)には刺激が強いので、閲覧不可マークがついている。エルザは狂態を目を凝らしてみている。エルザの目を引いた一枚がある。スノウ・ホワイトが持っているナイフである。
エルザも同じナイフを持っていた。半年前サエカに、殺戮の現地調査に行ったとき拾ったものだ。リリエスにリペアしてもらって、使い勝手が良く愛用している。
同じものをスノウ・ホワイトが持っていた。男を刺したり、イノシシ肉の塊を、そのナイフで薄く剥いで、うまそうに食べている。ナイフには手で刻んだスノウ・ホワイトの愛用のマーク迄ついている。エルザのナイフにも、同じマークがあるのだ。
アジトでの狂態をリビーは見ない。つい先日まで自分はそこにいたのだ。もし女たちが去ったら、盗賊団の男たちは、また村に女を求めるだろう。誰が私の代わりに行かされるのだろうか。
エルザはこの女、スノウ。ホワイトが、ケリーの両親やサエカ村の人たちを虐殺した一人だと勘づき始める。ナイフもそうだが、この異常さがその証拠なのではないだろうか。念話で一真に連絡し、情報を集めてもらう。
サイスがあの女傭兵だと気がついた。白薔薇の孤児院を経営する、善意に満ちた聖女と名前が一致する。だがサイスには信じられない。天使が同時に悪魔であるなんて。
クルトはスノウ・ホワイトが、傭兵のジル隊の一員であることを皆に知らせる。そしてケリーとルミエの復讐の相手として、すでに調査対象にしていたことを明かす。
一真は、宴を長引かせ、朝まで寝かさないようにアリアに頼んだ。そして朝になったら、睡眠の魔法や毒霧を使って、夕方まで寝させるように。逃がすわけにはいかない。宴はもう一回やってもらう。
盗賊団への襲撃予定は、明日の早朝なのだ。
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