第88話 悪魔は休日に何をすべきか
スノウ・ホワイトは騎馬火魔導士である。鎧を着て馬に乗って参戦する。平原での戦争は盾隊が前線を作り、その後に槍衾が控えている。そこに騎兵隊が突っ込むのだが、盾の前で一瞬止まってしまう。
騎馬の先頭で突入し、近接火魔法で敵の前線に穴をあけるのが、スノウ・ホワイトの役割だ。あとはジル隊の3人の槍の名手が、敵軍の柔らかい内臓を食い散らかす。
ザッツハルト傭兵団のオープナー、それがジル隊である。女性でもあり、スノウ・ホワイトは目立つが、リーダーはファーザー・ジル。歴戦の勇士だが、まだ戦場で人を殺したことがないという人格者。
ジル隊は基本的に、戦場で人を殺さない。槍に刃ではなく、メイスのような鉄棒がついている。これで骨を砕き、戦闘不能にして人質にする作戦だ。
スノウ・ホワイトは孤児院を経営している。セバートン王国の王都アリアスで、定員は3名。メイドを一人雇い、10歳まで育てている。美しい少女ばかり。今は7歳、5歳、3歳の3人だ。着ている服はお洒落で、教育はスノウ・ホワイト自身が完璧に教えている。
毎日の祈りも欠かさない。邸の庭にはバラの花園があり。純白のバラが1年中咲いている。誰の援助も受けていない。完全に傭兵スノウ・ホワイト自身のお金で運営されている。莫大な費用だ。
子供たちは10歳になる前に、やんごとなき貴族の養子にもらわれていく。その養子先は絶対の秘密として誰にも明かされることがない。
王都アリアスには、スノウ・ホワイトの孤児院以外にアズル教の孤児院と最近できたカシムの孤児院がある。評判はどちらも芳しいものではない。どちらも養子先のない子供は、奴隷商に売り払われるのだ。
戦争が途絶えていて、ザッツハルト傭兵団は活動休止中だ。貧しい傭兵たちは野盗になって稼いでいる。ジル隊はお金に困っていないから、優雅に遊んでいた。
ただジル隊は半年前に臨時のアルバイトをしていた。その日の仕事はエルフの少女の誘拐だ。サエカ村の北方10キロ地点にエルフの一家が住みはじめたという情報があった。女の子がいるという。数億円の稼ぎになる。
途中で見かけた妊婦。サエカ村だ。ジルが好きなのは妊婦殺しだ。まず妊婦のお腹を槍で強打し流産させて赤ちゃんを殺す。まだ血の流れている女のあそこの具合が最高だという。犯した後はそれを見たものは皆殺しにする。
予定通りエルフを浚った後、ジルは村を襲い父親と子供の見ている前で流産させて、女を犯す。ジルはその見ている子供も女の子だと思って連れて帰ろうとした。
ケチがつき始めたのはそのガキからだった。馬車に連れ込んで調べると、その子供は男だったのだ。ジルガ捨てようとしたが、もうピュリスの町の中だった。馬車にはエルフの少女もいるし、深夜に騒ぎにはしたくなかった。
スノウ・ホワイトが奴隷商の店のドアを蹴飛ばして、出てくる気配を確認して、ガキを捨てた。確認していないがあの子は死んでいるはずだ。
ピュリスを出るとエルフの少女に異変が起きた。それまで泣いていたのが、急に苦しみ出したのだ。死んでしまったら大損だ。だが医者に診せるわけにもいかない。
アリアスに帰って、あの方に連絡をして、腕利きのヒーラーを呼んでもらう。それでも苦しみはおさまらないようだった。
手の打ちようがないと悟るのに7日かかった。それ以後地下の牢屋に放置。闇のオークションに出したら、最低落札額の100万チコリで買った馬鹿がいて助かった。
下手をうった時は大人しくする。これが鉄則だ。本当の休日がやってきた。悪魔にも休日はある。いや休日は悪魔のためにある。スノウ・ホワイトはそう心の中で言い直した。
何よりも感覚を鋭敏に、新鮮に保つことが大事だ。美しいもの、清らかなものに囲まれていなければならない。悪魔が快楽を求める夜は、心は闇に染まる。悪魔の休日はその黒いものを完全に洗い流し、純白にするためにある。真っ黒な布を黒く染めても、何の面白みもない。純白の心が真っ黒になる時にこそ、快楽が味わえるのだ。
静かで清らかな孤児院の生活。だがそれから半年。スノウ・ホワイトは清らかな生活に飽きていた。大切に育てた少女の敏感な場所に、何本も針を刺して、いたぶって殺すにはまだ少し時期が早い。だがもう限界だった。6カ月真面目に生活したら完全に息が詰まった。
手なずけてある盗賊団を使って、ひと暴れしてみるか。少女殺しは3年に1回くらいしかできない。それ以外は盗賊団を使って、無防備な村を襲うのが彼女のスタイルだ。スノウ・ホワイトは退屈しのぎに、村を襲おうと決めた。
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