第83話 ケリーとアリア

 図書館だけでなく、イエローハウスにしばらく老人がいなくなった。孤児院の子たちの訓練も、冒険者ギルド建て替えでダンジョンが使えず、お休みになった。テッドの仕事が急に忙しくなり、ケリーの行商も休みになった。


 ケリーの仕事は痛み取りの商売だけになった。これはエルザが手配してくれて、1週間有効の痛み取りスクロールを販売することになった。冒険者ギルドで500チコリだ。


 ケリーは何もすることが無くなった。それがみんなの狙いだった。この機会にチームは変る。アリアがケリーの先生になってくれる。アリアが最初にしたのは、ケリーの攻撃魔法を風魔法に変えたこと。


 ケリーも火魔法にこだわりはなかったので、大丈夫。朝の狩は同じようにワイズと一緒にやっている。8つも年上のお姉さんになってもワイズは可愛い。5歳だったころの可愛さが何にも変わっていない。ケリーは一真に取られて少し寂しい。テイムの枠が空いているので、だれか従魔になってほしいなと思うケリーだった。


 地中活動と土魔法を覚えたワイズは、今その特訓中だ。それに付き合ってくれるのはリリエスだ。朝から土の中に潜って、なんかやっている気配はある。


 アリアがエクスタシーをかけてくれる。15分間狂ったように風刃を使ってモンスターを倒す。疲れきったら、MPポーションを飲んで、魔力操作15分。このくり返しで1時間。5歳児にはこれが限界だ。


 リリエスと朝食の後、アリアとケリーはピュリスへ出かける。イエローハウスから新しいダンジョンに入る、それが楽しくてたまらないケリーだった。ここは今のところケリーだけの楽園だ。


 まず薬草園がある。薬草採取は映像記憶と検索を使えば楽勝だ。だが毎日しているとよくある薬草3種類くらいはスキル使うまでもなくできる。ギルドで換金してくれるのは1種類だけだが、ケリーは構わず大量採取する。薬草もモンスター扱いで、15分でリポップするから、いくら採っても大丈夫。 


 どこの階層でにでも移動できる。スライムの階層へ移動。エクスタシーをかけて、風刃15分。また階層移動でトレーニングルーム。ケリーはアリアから帽子をもらって、糸の指輪を入れ、頭から糸を出す。風魔法も使ってまっすぐ上に糸をピンと伸ばす訓練だ。糸術と風魔法の連携。これがけっこう難しい。並列思考があるから、訓練になる程度にはできる。


 頭から糸を出しながら、ボルダリングに挑戦。ボルダリングもケリーの体の大きさに自動調節されるから、ケリーも夢中になる。ただ夢中になると糸を忘れてアリアに怒られる。この訓練は楽しいが、効果も抜群だ。1か月後のケリーの成長が楽しみだ。


 また階層移動。エクスタシーをかけられて、今度はゴブリンを糸で倒す。15分。またトレーニングルームに移動してダーツ。お母さんと遊園地状態のケリーである。こんな楽しいことはサエカ村では一度もなかったが。


 疲れたらヒールするので、いつまででも遊べる。いや訓練なのだが。コボルト、スケルトンを風魔法や糸魔法で倒して、楽しいお昼は、露店で肉の串焼き。午後の訓練は角兔から。エクスタシーで風刃。通常の数倍モンスターを倒せる。


 その次は奥のトレーニングルームで水泳だ。アリアは素っ裸になって優雅に泳ぐ。見事な体なのだが、ケリーは幼すぎて何にも感じないのが惜しい。ケリーも海辺の子なので泳ぎはできる。むしろ得意。今は二人とも素っ裸でもいいが、チームの他の人も来るので、水着は必要かも。


 風魔法で乾かして、次は斥候訓練。コボルトがランダムに現れるので、隠れて糸か風刃で倒す。いろんな感覚を活性化して、気配を確かめ。跡を追って、巣を発見。巣の位置は毎回変わるから、慣れることはない。周りにいるコボルトの数を減らして、巣に突入。完全に駆逐しておしまい。気配察知や気配遮断が重要なトレーニングだ。


 最後は乗馬。馬は生きている馬ではなくてゴーレム馬。また頭から糸をはやして、風魔法の訓練をしながら馬に乗る。テッドの行商の時に馬に乗っていたことがあるので、ケリーは馬にも乗れるのだ。これが終わるとコアルームというところで、甘いお茶を出してもらって訓練は終わり。


 コアルームにはセバスというコアがいて、話し相手をしてくれる。この叔父さんが最近毎日念話してくれて、体調や予定を聞いてくれる。甘いお茶を飲ませてくれるし、この人も大好きだ。顔とか身体はないけど、ケリーはそんなこと気にしていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る