第74話 アリアの教え子たち
アリアはショートスリーパーだ。アリアだけでなく、ワイズもモーリーもそうだ。何もすることのない時間ができる。
最近テッドと恋愛関係になって、夜に美味しい砂漠産のワインを飲んでいる。でも週1回だ。それにテッドは人間だから寝てしまう。孤独で無為な時間も意味深くて、嫌いではないアリアだった。
そんなアリアでも朝はやはり心が弾む。ワイズとケリーと一緒に狩をする。ケリーの中に一真もいる。
ワイズは新しいミスリルの弓を手に入れて、小弓の扱いが上手くなった。狂戦士化は珍しいから、多数を相手にする時は役に立つ。雷も使える人が少なく、対策が難しい。レベルは低いが、飛翔し、不死のワイズは強くなるとアリアは思う。アリ型モンスター恐るべしだ。
ケリーは糸術を使いこなせるようになって、負けることが無くなった。鋼糸で首を狩るのではなく、粘糸で拘束して、剣で倒すようにしているのもいいと思う。対人戦では生きたまま捕まえることも多い。
最近育成し始めたのが、ジュリアスという狐獣人の娘だ。賢くて、ハングリーだ。スラム出身で母と妹をスラムに残している。妹は6歳だが、何もしなければ、娼婦になる。ハングリーなことは人を強くするとアリアは思った。
ケリーがテッドと行商している間、アリアは冒険者ギルドのダンジョンで、ジュリアスを育成している。
最初にエクスタシーをかける。能力がアップして、まるで狂戦士になったように戦う。狂戦士と違うのは、理性のコントロールが効いていることだ。普通に戦うより、何倍も疲れるが、効果も大きい。
30分戦った後、もう戦いの訓練はしない。アリアはジュリアスに裁縫や染色を教えている。そのために絵画のスキルスクロールをジュリアスに与えていた。
スラムで育ったジュリアスは、破れた服を繕う以外、裁縫はしたことがなかった。機織り、染色、縫製、刺繍。最高級のスパイダーシルクを使って作る服は、夢のように美しい。
美しいだけでなく、その染色や刺繍は、布に様々な付与を与えるのだった。温度調節など生活に役立つものから、魔法耐性のように戦闘に役に立つものまで。
毎日受ける実習指導は、かけがえのないものだった。どんな学校もこれ以上の教育はできない。ジュリアスは貪欲だし、吸収は早い。ジュリアスは最高の縫製士に育つかもしれない。
今日はジュリアスの戦闘用の服についての相談だ。靴下から、各種下着、リボン、布の髪飾り、上着、パンツ、ベルト、籠手、脚絆、手袋まで、総てに機能を持たせる。それをジュリアスが自分で作るのだ。
温度と湿度の調節機能。物理耐性、魔法耐性、重さ軽減などの効果は魔法陣の刺繍で実現できる。防具でも補正されるが、衣類で細かく調整できたら、とてつもなく有利になる。
スケルトンをたくさん倒して、武器や防具を、リリエスにリペアしてもらった。神殿から出てくるものは高価に売れる。売り上げの2割をジュリアスに還元するとしても、予算は潤沢だ。色変わりまで数種類作っても余る。
もし余ったら、アクセサリーに回す予定になっている。しかもリリエスがすべてに自動調節と成長を付与してくれる。ジュリアスは一生服装と防具や武器で困ることはないだろう。
ジュリアスのダンジョン訓練は後半はワイズも加わる。ここで鍛えているのは連携だ。前半はワイズに向かう攻撃をどう防ぐか。ジュリアスの目指す自殺盾を訓練する。アリアの見るところでは、レベルの低い相手には通用する。相手がオーク以上の強さでは、無理だ。体重が不足して攻撃を受けたら遠くに飛ばされる。防御力を高めるのとは違った対策が必要という見立てだ。
後半は前衛のジュリアスをワイズがどう支援するか。ジュリアスはわざと相手を倒さず、ワイズの支援を待つ。ワイズは単体攻撃が主体なので、相手が1体の時は問題ない。狂戦士化はジュリアスに迷惑になるので、使えない。相手が多数の時が課題だった。範囲攻撃が必要とアリアは考える。
それが終わると、アリアはゴミ置き場に去る。そこでテッドとケリーの馬車に合流して帰る。ケリーの痛み取りの商売と、モンスターが落とす武器類をリペアするのが、チーム財政の基盤なのだが、ゴミ置き場にいいものが枯渇して来た。なんとかする必要があった。それはアリアの考えることではないが。
ジュリアスとワイズは、エルザと共に孤児院の子の訓練をする。その後文字や計算の指導。この頃ワイズは読み書きが上手になってきた。教える側にまわる。教えることで、もっと深く学ぶことができる。それに表計算のスキルを持っているので、計算を教えることも得意だ。
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