第63話 極道殺法

 リビングアーマーは鎧にアンデッドが憑依している。倒し方が特殊で物理攻撃では倒せない。魔法をエンチャントした武器で倒すしかない。クルトは特殊部隊での敵の全滅を指示した。リビングデッドはピュリスの城壁には来ない方がいいということだ。


 アーサーとマーシャルというSSランクの剣士の見せ場だ。リリエスにエンチャントしてもらったカシム隊も、足止めくらいはできる。


 極道カシムはアーサーに申し入れる。俺たちにもやらせろと。カシムたちの倒し方は数の暴力。極道殺法だ。カシムが盾でヘイトを稼ぎ、残りの24人がめちゃくちゃに攻撃する。


 時間がかかるがこれでも倒せる。カシム隊が攻撃している間、アーサーとマーシャルは、他のリビングアーマーを足止めしてくれる。結局半分はカシム隊が倒し、極道カシムは男を上げた。


 このチームは次にやってきた強敵、ロックゴーレムとの戦いに入る。ロックゴーレムはとてつもなく硬い。彼等が戦い始めた時、ロックゴーレムは既に22体しかいなかった。4体は残さないとならないから倒せるのは18体。


 アーサーとマーシャルが6体ずつ倒す。見事に関節の弱点を攻撃して動きを止め、核を狙って連続攻撃。素早く倒すのは天才の美技である。


 残り6体はカシム隊。勇者たちはゴーレムを足止めしてくれる。極道殺法でゴーレムだって倒せるのだ。美しくはないが。そしてこの戦い唯一の死者を出してしまったが。


 ジンメル達がどこかに去ってから、ワイズは一人でオークに立ち向かっていた。ピラリでの弓攻撃、ジンメル達の闇攻撃で、100体いたオークは半分に数を減らしていた。


 ワイズは強敵のオークに緊張していなかった。アリ型モンスターのワイズには、ネストというスキルがある。HPが0になる前に、ネストに逃げ込み、しばらくして全回復して復活する。事実上不死なのだ。


 エロスの小弓があるから、飛んで鉛の矢を当てればいいだけだ。鉛の矢を受けた者は、憎しみに狂う。あとは狂ったオークが同士討ちしてくれる。近づきすぎて2回ネストを使ったが、9回やったら29体倒せた。やりすぎかな。あとは他の人に任そう。5歳の少女としては十分だ。


 商人の護衛と衛兵たちは手持無沙汰だった。ヒーラーが二人いるので、そこへ来るカシム隊はいるが、護衛はやることがない。戦場を見るとウルフを攻撃する人がいない。


 ウルフは、護衛が馬車に付くときとき、一番出会うモンスターだ。護衛はウルフと戦うことに慣れていた。ゾルビデム商会チームとジェビック商会チームで、ウルフ討伐ゲームが始まった。衛兵も参加している。


 クルトから自由行動を指示されたシーフ達。シーフ達8人は、気配を消して少しずつウルフを倒していた。商人隊や護衛に、それが見破れるわけがない。シーフと商人隊、両方に攻撃されて、120体いたウルフは、いつの間にか20体くらいに減少していた。シーフの功績が語られることはないだろう。人知れず戦う。それがシーフの誇りだった。


 エルザはギルド職員だから、城内でギルマスのクルトの補佐をしていた。そこに義勇軍の丸投げである。28人の年齢・職業・能力・性別、全く共通点がない人々。ただ町を守りたいという目的だけが共通していた。お金が欲しいと思う人も確かにいたが、それは主目的ではなかった。


 能力的には、剣技のスキルを持つ人はいたが、遠隔攻撃を持っている人はいない。エルザは鑑定でそれを確認した。クルトからの指示は城壁の上での遠隔攻撃。彼等を死なせるわけにはいかない。


 吸収のスキルで、28人分の弓技や攻撃魔法スキルを、モンスターから奪って来よう。エルザはそう決意した。28人分と言わず、スキル経験値がもらえない冒険者に、できるだけスキルを持ってきてあげたかった。


 エルザは7時のモンスター出発を聞いて、クルトに事情を説明して城外へ出た。商人隊から馬を借りて、前線に向かう。着いたのは9時。ジンメルの影の部隊が見事な戦いをしていた。自分もシーフであるエルザは、息をのんでその戦いを見ていた。


 手裏剣の投擲が珍しかった。毒マキビシも参考になる。大技は無理だが小技ですぐ使えるものがいくつもあった。この体験は悩むエルザに、大きなヒントを与えてくれた。


 ゴブリンから指揮・弓技・火魔法などを30くらい奪った。吸収するのは、さしあたりこれが限界。エルザは急いで戻って義勇軍の人たちに、贈与する。


 エルザがいない間、義勇軍はジュリアスに面倒を見てもらった。ジュリアスには指揮のスキルを贈与。ジュリアスは10歳だが、賢いし、指揮スキルがあれば大丈夫だと信じる。


 まだ11時。もう1回行けそうなので、エルザはまた前線へ。今度はコボルトからも、同じようなスキルをたくさん吸収し、無理やり50くらい奪った。スキルが自分から溢れて暴発しそうだ。もしそうなったら、死ぬ予感がする。


 急いで帰り、冒険者の低レベルの人たちに、スキルを贈与して回る。そこでサミュエル達のパーティーに会う。リリエスを追放したパーティーだ。彼等にはちょっと意地悪して何にもあげない。意地悪というより、命をかけた特別な親切だから、それはあげたくなかったエルザである。


 13時。さすがにもう1回は無理だ。

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