第62話 垂れ流しても大丈夫
ピラリ断崖での狙撃。最初の攻撃は弓隊中心の遠隔攻撃だ。断崖の南北の高所から、SSランクパーティーの二人の弓の達人が技を競い合う。それにAランクパーティーの弓士がどこまで絡めるか。そこが見どころだ。
ところがそれを上回るような矢が、ゴブリンを倒し始めた。威力、正確さが見事だ。おそらく4人。
いぶかしく思ったリリエスが見に行くと、なんとエルフたちがいた。敵ではなさそうなので、リリエスはそのまま帰ってきた。他と交わろうとしないエルフがここにいることは、何かのメッセージかもしれない。
もう一つ意外だったのは、カシム隊の弓士たち。けっこう当たる。最高水準の3人に比べて6割くらい。多分リリエスの右目の幸運のスキルがいい仕事をしている。幸運値が上がれば、彼等でも役に立てる。それに密集している敵に、高所から弓を射るのは、そんなに難しくない。
ピラリでの狙撃は2時間。ゴブリンからミノタウロスまで。終わったら、弓隊は馬車で移動して、中間よりややピュリス寄り、12キロ地点のフンベの断崖へ移動した。彼等は同じ狙撃を繰り返すことになる。
結果的に10人前後しかいない弓隊が計4時間で、モンスター全体を20%近く減らした。単純に一人平均すると50体前後。最高の成果と言っていいだろう。クルトはエルフの4人にも感謝した。それにしてもなぜエルフがいるのか、クルトは今はその意味を把握できない。
次に仕掛けたのは、自由行動を許されたジンメル隊。Sランクパーティーだ。ピラリの後ろで待ち伏せしていた。まずシーフが毒を塗ったマキビシを巻く。毒はゆっくりモンスターから体力を奪う。アンデッド系以外のモンスターには、これがじわりと効いた。
近づいたら毒霧を発生させる。その中にシーフが投擲(手裏剣)で攻撃。ネクロマンサー(闇魔導士)が、手裏剣で死んだ敵の魂に死霊術をかけ、さらに狂戦士化する。彼等は周りと戦って、もう一度死ぬまでに数体を倒す。
そこに待っているのが、居合の達人ジンメルだ。近づくものは日本刀の錆となる。周辺にはシーフが毒餌をまいてある。ゴブリン、コボルト、ボアやウルフなどには有効だった。
このパーティーだけで倒した数は不明。1時間後に倒れるモンスターもかなりいた。ピラリの後ろで戦った後、どこへ行ったかもわからない。
この戦いを観察していたのが美少女ワイズだ。ワイズは今日もアリアからエロスの小弓を借りていた。この弓は神器だから返さなくてはならない。
「狂戦士になる魔法をエンチャントしたら、エロスの小弓に似たことできるかな」
一人呟くワイズ。エロスの小弓で鉛の矢を射ると、周りにいる者が憎くてたまらなくなり、同士討ちが始まる。狂戦士化のスキルと似ている。リリエスに頼んでみよう。自分の弓が持てると良いな。ワイズは賢い5歳児(人化したアリ型モンスター)であった。
アンデッドとの緒戦。対ゾンビ戦は6キロ地点で始まった。斧使いの巨人アンザムと人化したカマキリ型モンスターのモーリー。Sランクの火魔導士、カシム隊で火魔法が使える者の混成チーム。戦いは広範囲の火魔法の一斉攻撃で始まる。
Sランクの魔導士たちはファイアーストームなど広範囲魔法。カシム隊はファイアーボール。それが収まると、アンザムの斧とモーリーの死神の鎌が、ゾンビの頭を砕く。
アンザムの合図で再び火魔法の嵐。モーリーは上空に飛んで、岩石バレットのスキルを使う。火の嵐の中に、上空から岩石がいくつも落下して、ゾンビを潰していく。600体いたゾンビは急激に数を減らした。
アンデッドとの第2戦は、500体いるスケルトン。挑むのは浄化スキルを使える5人。それにカシム隊の護衛が付く。4人のSランクの聖魔導士に加えて、石化した不死身のルミエ。浄化は範囲魔法なのでそれぞれ分散してスキルを使う。
ルミエは1回に15体くらい。他の魔導士はその2倍。1回で150近いスケルトンが消える。2回やって止める。残りは100体くらいになってしまった。
減りすぎるとピュリスを攻撃するモンスターがいなくなる。カシム隊が瀕死のスケルトンを倒して実績を作っている。経験値を稼ぐと、アーサーが買い取ってくれる。
このチームは次のボア退治に移行。聖魔法の範囲攻撃で100体くらい倒した後は、ルミエの育成に切り替える。ルミエは聖魔法の攻撃魔法を使えない。それを教えてくれるというのだ。ホーリーアローやホーリーレイ。お手本を見せて、ルミエにやれという。
最高峰の聖魔導士たち4人に囲まれて、幸せなルミエであった。MPポーションをがぶ飲みさせられて、トイレにも行かせてもらえない。彼女たちは戦いの最中は大も小も、すべて垂れ流しているという。
漏らすとすぐクリーンをかけてくれる親切なお姉さんたちであった。ルミエはホーリーアローを手に入れた。カシム隊は知らないふりで、こつこつボアを退治している。極道だってごく稀に、こつこつ働くこともある。
ホーリーアローは単体攻撃で、1体しか倒せない。ルミエは4人のお姉さんと、1時間以上こつこつとボアを倒していた。あと20体倒せば目標に達する。
こつこつに限界になったルミエは、メイスを取り出して20体のボアを惨殺してしまった。まさに血まみれ聖女。すぐにクリーンされたが。
時間は昼近く。フンベの断崖が近づいたので、地上部隊のルミエたちはもう高台に上がらなければならなかった。クルトの指示は良く守られている。そしてルミエのホーリーアローは習熟した。
フンベの断崖にエルフはついてこなかった。もうモンスター全体の7割は倒していた。クルトの指示では、ピュリスを襲うモンスターは500体以上800体以下。今残っているのは1000体くらいだから。あまり多く倒せない。
ここでも目標は若手育成に切り替わる。達人の下でカシム隊がしごかれ始めた。カシム隊の何人かの弓スキルがレベルアップしたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます