第50話 ある暑い日の午後

 暑い夏が終わりそうで、終わらない。テッドの下での行商が、今日は休み。ケリーは痛み取りの商売が終わると、やることが無くなった。サイスの図書館にでも寄るか。


 サイスは暑くて誰も来ないので、図書館を休みにして、冒険者ギルドに向けて歩いていた。ダンジョンは地下なので涼しい。ダンジョンに潜ろうかと思っていた。ルミエはイエローハウスに老人がだれもいなくなり、今日は休みだ。ルミエはあまり暑さを感じないから、目的も無く街を散歩していた。千日の試練に追い立てられているルミエには珍しい。サイス、ケリー、ルミエの3人は偶然出会って、冒険者ギルドのエルザのもとへ行くことにした。


 エルザのもとにはワイズがいた。ワイズも夕方の孤児院の子たちとのダンジョン攻略が無くなっていた。あまりに暑くて、孤児たちはゆっくりするようだ。ワイズも暇になった。


 エルザも暇だったので休みを取って、4人を涼しい湖のダンジョンに連れて行くことになった。湖のダンジョンはピュリスの西南、廃坑と古代遺跡の間にある。階層は9で、中規模のダンジョンだ。


 冒険者ギルドで定期的に依頼を出しているが、先月も今月も、だれも依頼を受けてくれなくて、放っても置けなかった。最下層まで行けなくても、表層のモンスターの数を減らしておきたかった。エルザがいれば、ちびっこパーティーでも危険はない。それに湖のダンジョンは涼しい。


 1層はスライム各種。前衛はルミエ、エルザ、サイス。斥候はケリー。ケリーとワイズは後衛。サイスも剣技をもらったから、スライムは倒せる。ケリーもスライムなら倒せるので、ときどき前衛に出る。エルザには指揮のスキルがある。連携は完璧だ。


 2層目は角兔とフォレストボア。ケリーにボアは無理だが、サイスはボアでも、協力すれば何とか倒せる。ワイズは後衛。飛んでから、毒針射出。そして弓。ルミエとエルザは、できるだけ手を出さないようにして、3人を育てる。


 エルザはワイズの毒針を見たのは初めてなので、ちょっと驚いた。冒険者ダンジョンでは、孤児院の子たちがいるところでは見せていない。遠隔攻撃が不足しているので貴重だ。


 3層目はゴブリン。並のゴブリン1体ならケリーでもやれる。だが1体ではなく、連携されると少々きつい。特に遠隔攻撃の弓と魔法は危険だ。エルザが吸収で弓技、剣技、火魔法。風魔法をゴブリンから奪っていく。あとはやっかいなホブゴブリンから指揮を奪う。


 こうなると、あとは単純な物理攻撃しかない。ルミエを無双させてみた。血まみれ聖女は強かった。メイスでゴブリンたちの頭を叩き潰す。整った顔立ちからは想像できない冷酷さだ。サイスとケリーの中にいる一真はそのギャップに萌える。


 ルミエは自分でヒールしているから、攻撃を受けてもすぐ回復する。しかも千日の試練で不死だ。エルザはその姿から、見知らぬダンジョンで、孤独に狩りをするルミエを感じた。ちょっと寂しすぎるよ。そう言いたくなったエルザである。


 4層はフォレストウルフ。オオカミなので、集団戦法が得意だが、指揮をする者はいない。この辺からはケリー、サイスには強敵すぎる。ワイズはネストがあるので、なんかあっても安心だ。


 今度はルミエに守ってもらって、エルザがメインアタッカーになる。まず6体の群れ。ウルフの威圧を全部吸収で奪う。威圧はケリーとサイスに贈与して、それで援護してもらう。


 エルザは気配を消して身体強化をする。敏捷を生かして接近し、近い敵から次々にレイピアの一撃で倒していく。いつもよりクリティカルが入るのは、ケリーの肌に隠れているアリアのおかげだ。


 ワイズは敵の近くに飛んで、毒針を射出。毒針だけでは倒せないが、動きが明らかに鈍くなるのでありがたい。少年二人の威圧も少しは効いている。


 次は7体。何体来ても同じだ。この程度は敵ではない。30体くらい倒して休憩。5層に降りる階段に来た。全員エルザとルミエのヒールで癒してもらい、MPもポーションで補充。


「ここで帰る?」


 エルザの問にみな不満そうだ。


「エルザ、外は暑い。もう一層だけ。お願い」


「ケリー上目遣いはやめて」


「浄化、手に入れたので、5層のアンデッド倒してみたいです」


 これはルミエからの念話。


「良し。じゃ次やっておしまいだよ」


 5層はアンデッドだ。スケルトンを倒したことはケリーにもある。が、5層のアンデッドはいろんな種類がいる。


 露払い役のキラーバッド。その後に、ゾンビ、ゴースト、スケルトンと続く。フロアボスはスケルトンキング。これはエルザと同格の強敵だ。でもルミエの浄化があれば倒せる。あとはちびっこを守れば大丈夫。


 まずキラーバッド。飛翔したワイズは、毒針や弓で攻撃し、次々撃ち落とす。ただゾンビには相性が悪い。ゾンビは魔法がなくても通用する。エルザのレイピアの餌食だ。


 ゴーストやスケルトンも倒せるが、火魔法や聖魔法があると効率が良い。エルザが討ちもらしたモンスターは、ルミエが浄化ですべて倒す。さすがに上級魔法だ。スケルトンキングもルミエが浄化で倒し、魔石を集めて帰ろうとした。


 反応したはのケリーだった。


「なんか来る。すごいたくさん。全部来ている」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る