第49話 気がつけばハーレム

 純真なケリーは気がついていないが、俺たちはハーレムにいる。リリエスに固く抱かれてケリーが眠りにつくとき、俺は妖艶な女性の熟しきった感触を楽しんでいる。できることならリリエスの子宮に入って、自分をリリエスに生んでもらいたい。それくらいリリエスが好きだ。


 アラクネの時のアリアの、むき出しのおっぱいは、本当に見事な形をしている。どうして垂れてこないんだろうか。時々乳首に吸い付いて、エクスタシーの魔法にかかるのは、夢みたいな経験だ。アリアの声も素敵だ。


 エルザもきれいだ。モフモフの猫耳に触りたい衝動を何とか抑えている。ケリーのふりをして、さりげなく触ってみようかとも思うが、多分俺だとばれるだろう。それに一番の巨乳。大きければいいわけじゃないが、大きいのも嫌いじゃない。


 そしてルミエ。大理石の彫像になっているが、まさにギリシア彫刻の美少女だ。あまりに白くて、青い血管が透き通って見える。それが色っぽい。ブラジャーのないこの世界で、薄い服からボッチが見えているのが、何とも言えず目の栄養になる。ケリーは何にも感じていない。24歳の俺がどんなに穢れているか。でもこれが俺だ。


 そして決定的なのがワイズ。アリなのだとわかっているが、5歳の美少女だ。エルザはそういう目で見ても変態じゃない。しかしワイズはまずいと、俺も思ってはいる。


 ワイズに魅かれてしまうのは、外見じゃない。俺が女の身体に憑依するという、前世ではありえない経験をしているからだ。俺は並列思考だから、ワイズと普通に話しながら、もう一つの脳で彼女の体をつい意識してしまう。


 ワイズも5歳だから、俺が憑依していても、平気でトイレ行ってるし。ワイズが5歳というのも設定で、本当は何歳にもなれるんだと思う。彼女の内部に、いろんな可能性が隠されていて、オンデマンドで彼女の中の大人の女の要素がにじみ出てくるのかも。


 ワイズと一緒にいる時間は4時間くらい。基本的にまじめに仕事している。字も教えたし、計算のスキルを表計算のスキルに作り替えた。俺は表計算で、ワープロもお絵描きも、データベースもしていた。表計算で何でもできるほど達人だった。


 ワイズの知性はおそらく人工的に高く設定されていて、俺の過去の記憶の吸収も相まって、計算スキルの表計算化は成功した。俺は小学校の時は珠算の達人だったから、かえってパソコンで出会った表計算の凄さが良くわかる。表計算が魔法のスキルになったら、この世界での可能性がどれだけ広がるか。


 今やっているのは俺の記憶法の映像記憶を、何らかの形でワイズに移植できないかだ。映像記憶は人間以外の動物ではむしろ一般的だだから、可能かもしれなかった。でも俺たちが目指しているのは、カード型映像記憶というべきものだ。表計算スキルと合わせたら、使い勝手が良くなることは間違いがない。


 それでワイズの身体を共有している時間は、いろいろな意味でハニータイムだ。ワイズには過去がない。そこに俺の前世の記憶がしみだしていく。


 おれは前世でボッチのコミュ障だった。多分親にも愛されていなかった。他人への反応の仕方が分からないので、いじめられても無反応だったから、いじめがいもなかっただろう。それでもいじめは受けたけどね。


 厄介なのは女性への関心だけは人並み以上にあったことだ。どうせ関わりを持つことはないのだから、クラスで一番美しい聖女を好きになった。聖女は俺にまで優しかった。


 6年生のころだ。聖女はクラスのボスに「やられた」といううわさが広がった。話はやけに具体的で、聖女は「やめて」と何回も言ったらしい。 それでも俺は何も反応せず、氷の少年のままだった。ただボスの女になった聖女が「やめて」という夢を見た。俺の初めての夢精だった。それからの俺の黒歴史の記憶を、ワイズは本を読むように読んで、そのまま共有してくれた。


 ボッチだった俺が、こんなに濃密な関係を人と共有するのは、前世を通じて初めてだった。だからワイズから新しい体を作り出して、そこに俺を憑依させると言われた時、俺は心底怯えてしまった。


 今はケリーの中に隠れているから、安心して念話で話ができる。もし独立したら、おそらくまた誰とも話せない氷人間になってしまう。それだけは避けたかった。今の状態が、前世を含めた俺の人生すべての中で最高なのだ。この幸せを捨てたくなかった。変わりたくなかった。


 ワイズが俺と「別れたくない」と言ってくれた。それは俺の気持ちを代弁してくれたのだ。おれは5歳のアリ型モンスターに救われた。俺にはワイズは、かけがえのない存在になっている。もう少し待ってほしい。この天国がいつまでも続かないとしても、もう少しでいいから。

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