第48話 別れる?
リリエスが3回目のタダ働きから帰ってきた。今度は一人だ。モンスターはウルフやボア、ミノタウロスなど。珍しいものはなく、ひたすら数が多かったという。そのため新しいスキルを覚えることもなかった。
その代わり宝箱やドロップがたくさん出た。それらは勇者パーティーは最初から辞退し、全部リリエスへの報酬となる。マジックバッグから出てくるは出てくるは。リリエスには物欲がなく、ただめんどくさいだけだった。売るという考えもない。リリエスがお金で買うのは塩などの調味料と少しの野菜だけだ。月5千チコリ程度。とりあえず、すべてエルザがいったん預かり、後日配分することになった。
エルザは今までに得て、まだ誰にも配分されていないチームの財産を、ワイズに頼んで一覧表にするつもりだ。ワイズは一真の影響を受けて、計算のスキルを表計算に変化させていた。スキルを進化させられるのは地味にすごいことなのだが。
スキルや能力のスクロール、武器や防具類、アクセサリー、魔道具、ポーション・薬類、種子、素材、レシピ、本、お金など。本やお金は共有すればいい。管理はワイズ。お金はキース銀行のケリー名義の口座に入れる。本は図書館を作ることにし、砦跡の家に土の家が新設された。
ついでに武器庫と薬品庫、その他保管庫も新設する。場所はやはり砦跡。崩落していた砦が無くなったので、スペースがある。今までも古代遺跡からでるあまりに高価なものは保管していたが、今回のことで武器庫の必要性がはっきりし、それ以外の保管庫も作ることになった。そしてそれを管理できるのはワイズしかいない。
確かにワイズはオーバーワークになっている。念話による全員の動静確認。スケジュール管理。日報。チーム口座管理。朝食の手伝い。リリエスの森仕事の手伝い。ダンジョン攻略。孤児院の子たちの育成。市場での買い物。夕方の狩。一真が憑依する受け皿。深夜の学習。しかもエルザが食品加工スキルを与えて、モーリーの手が回らないソーセージなどを作らせ始めた。それに加えて、一真はポーション作りの助手にしようと画策中。その上に倉庫などの財産管理を任せようというのである。
誰かワイズに代われないだろうか。順番に検討してみよう。リリエス、おおざっぱすぎるから無理。モーリー、物理特化型には無理だし、森仕事で多忙。アリア、能力はありそうだが気まぐれ。時間の単位が大きすぎ。エルザ、ギルド職員の仕事があるし、チームやカシム組の育成者として既に多忙。クルト、ギルマスとして多忙なうえ、転勤予定。ルミエ、千日の試練中。
適任者はワイズしかいないのだ。何とか頑張ってもらうしかない。
さてめぼしいアイテムを皆で見ていく。癒しのグローブがある。これはルミエだとみんんは思った。悲しい心、さびしい心を癒して、明るくしてくれる魔道具だ。イエローハウスの老人たちに必要のはず。
しかし物欲のないはずのリリエスが欲しいと立候補。ケリーの夜の泣き叫びはみんな知っているので、右手をリリエス。左手をルミエに。
遠視のイヤリング。これはケリー。みんなが一致する。遠くのものが見えるようになる。ケリーの感覚強化はだいぶ進んでいる。このスキルを得たら、さらにモンスターの発見が容易になるだろう。
武器系ではなぜか、日本刀など。一真の前世の世界の武器が多種類あった。一真によると、武士の装備以外に、忍者の装備もあるという。おそらく日本からの転生者がいたのだろう。なぜこのダンジョンの宝箱から出るのか。理由は分からない。一真が欲しがったが、彼が武器を持つことは、ケリーの内部から出ない限り無理だ。
進化の実が2つ。モンスターを進化させる。エルザが鑑定すると、モーリーには身体の能力向上の効果がある。ほぼ1,5倍になる。デメリットは特にない。モーリーは喜んで受け入れた。エルザはダンジョンの同盟からDPで購入できるものの中に、進化の実もあることを思い出していた。確かものすごく高価なものだ。
進化の実は、ワイズには2体に分裂と鑑定された。ただし新しい身体の能力値はもとの7割に低下と。スキルは維持される。これは今の状況にぴったりだと皆思った。一真がその新しい身体に憑依すればいい。能力値の低下はスクロールで補うことができる。
アリアは、一真が前世で薬師のようなことを仕事にしていて、こちらの世界でもその仕事を続けたいと言っていたことを思い出す。
「アリ型モンスターは性別・年齢。人格すべて自由に設定可能なのよね。だったら新しいアリさんは一真にしてあげない?好きな年齢にしてあげて、そこに一真が憑依すればいいのよ。独立した一真にこの世界で再出発してもらえばいいと思う」
「僕はやり残したことがあって、もう少し今の状態を続けたいんですけど」
「やり残したことって何よ。日本刀持った武士になれるのよ。それとも忍者がいいの。性転換してくノ一にもなれる。ハニートラップし放題よ。それより大事なことなの。やり残したことって?」
「あのう、従魔の立場で言う権利ないんですが、一真のやり残したことは、私の教育なんです。憑依されているせいで、私と一真、すごっくわかりあえて、私の中で表計算と連動した新しい記憶の仕方が生まれてきそうなんですね。それができたら別れますから、もうしばらく待ってください。私がんばりますから」
え、「別れる」って言ったの?
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