第24話 モーリーをとられた

 ケリーが描いた絵は、作る順番に4つ。。まず家の土床から掘り進み、地下室を作る。地下室は食品などの保存庫にする。土は粘土質の地層を選ぶ。幸いピュリスは1メートルぐらい下で分厚い粘土層の地層に支えられていた。


 次に大きな箱のようなものを作り、土と麦わらを切って水を加えて混ぜる。それを外から屋根を除いて、できるだけ分厚く塗っていく。それが終わったら、同じ材料で竈を作る。もしできたら、天井に夏は排気、冬は空気循環の風魔道具をつける。


「でも問題が一つだけあって、窓にガラスをつけたいんだ」


「ガラスは無理だな。お金がかかりすぎる」


「でも窓がないと暗い。そしてどうしても家の中と外の空気は遮断しないとだめなんだ。リリエス。魔法で何とかならない」


「魔法じゃないけど、スライムの体液、いつも捨てているんだが、あれを型に入れて乾燥させれば透き通った板ができる。それならタダでできる」


「それだよ。穴を掘るのは土魔法使えればすぐだし。お金を出して買うのは麦わらだけだ」


「スライムゼリー使うなら、窓を大きくすることも可能かな」


「これで薪の使用量は凄く減るはず」


「じゃあ、ケリー明日から頼む」


「え、僕がやるの」


「スライムくらい倒せるよ。強くなってるから。自信持て」


「えっと、従魔使っちゃだめですか」


「モーリーはお前と違って忙しい」


「モーリーは僕の従魔なんだけど」


「ケリーは私の奴隷だということ忘れていないかな。それにモーリーはもう私の従魔になっている」


「テイムのスキルは僕にくれたんじゃなかった」


「なぜかまた生えてきた」


「リリエスお願い」


「上目遣いはやめろ。しょうがないな。それじゃ家作りはモーリーに任そう。明日私も一緒に街に出て、荷車借りて麦わら運ぶの手伝おう」


 モーリーを呼んで、スライムゼリーを乾かす木枠作りから、すべて丸投げした。モーリーは夜ほとんど寝ないらしい。でもケリーは子供なのですぐ眠たくなる。今夜もリリエスに抱かれて安心して寝てしまう。


 奴隷として許されないことがだ、今朝もケリーは遅く起きる。夜中にうなされ叫んでいることはリリエスだけが知っている。リリエスはケリーにたくさん寝てほしい。だから寝坊しても怒ることはない。


 安息日明けの月曜日。ちなみに1週間は地球と同じ曜日で構成されている。今日はいつもの仕事はモーリーに任せ、リリエスは町に出るつもりだ。塩と麦が不足していた。農家から大量の藁を買わなくてはならない。それにケリーが町でちゃんとやっているか確かめたかった。


 ケリーはいつも通り、走って町へ向かった。今日はアリアではなく、リリエスがいる。城門を入り、衛兵たちの驚いたような挨拶を受ける。リリエスは話題の人だから、驚くのも分かる。


 冒険者ギルドに入ると、大きくざわめく。猫獣人のエルザが急いでやってきて、ケリーの袋から魔石と薬草を取り出し、ギルドで出たガラクタを袋に入れる。エルザはダンジョンでケリーを訓練するつもりだ。


「ケリーは資料室で本を読んでおいで。エルザとは少し話していいか。その前に今のガラクタ、ほとんど武器や防具だと思うけど、リペアしてギルドに寄付してあげよう。レンタルの武器類なんかも、帰りにリペアしてあげるから集めときな」


ギルドの小会議室で。


「ケリーはちゃんとやっているか」


「もちろんです。あの私テンペストの専属になりました。それでケリー君の換金手続き優先してやっています。それだけじゃなくて、換金を他の受付嬢にやってもらって、その時間でダンジョンで訓練をしています。勝手にやってしまったんですが、いいですか。訓練続けて」


「ああ、もちろんだ。ありがたく思っているよ」


「それとケリー君の口座作って、半分はケリー君の口座に入れています。これも確認していなかったんですが、大丈夫ですか」


「ああ問題ない」


「それでケリー君が、リリエスさんの作った借金は自分が全部返すと言っているんですね」


「ケリーに心配されなくても、私がやるさ。5歳児の考えることじゃないな」


「酒場の親方に聞いてみたら、受け取れないっていうんです。リリエスさんのおかげで儲けさせてもらったからって」


「無理やり100万チコリ押しつけてやる。他に迷惑をかけた15のパーティー全部に100万チコリずつ。お金がたまり次第手続してもらう。下から順番にギルドの口座に送金頼む」


「えっと、もう100万チコリ越えているので、サミュエルのパーティーに払えますけど」


「今日は市場で買い物をするので3万チコリくらい必要なんだ」


「それくらい払い戻しても余裕だと思います」


「それじゃそのように頼む」


「それで私、私と父のクルトですが、アリアさんと同盟を組むことになりました。よろしくお願いします」


「アリアと会ったのか」


「ええ、昨日。もう私たち同志ですから」


「良く分からないが、まあよろしく頼む」


「森ではどうされているんですか」


「今は森で冬を迎える準備だな」


「まだ夏にもなっていないのに、今からですか」


「寒いのは嫌なんだ。それで暖かい家を作ろうと思っている」


 ケリーは資料室のすべての本に目を通している。さっと目を通すだけで、じっくり読むのは後でいい。有用植物の図鑑。魔法の種類と解説。近辺のダンジョンの地図と説明。モンスター図鑑。世界地図。他にも興味深い本をたくさん映像記憶に詰め込んだ。


 次は広場で痛み取りの商売。いつも通り順調に商売を始めると、それを確認して、リリエスは市場に買い物に行く。塩や油、何種類かのハーブやニンニク。それと麦を3種類。肉や魚を保存食にするので、塩が大量だ。それでも2万チコリもかからない。市場のみんなに声をかけられて、リリエスの周りは陽気だ。

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