第12話 廃坑
冒険者ギルドで、壊れた武器などのゴミをもらって、ケリーはいつもの広場へ行く。既に10人くらいが並んでいる。痛い人たちだ。ケリーはもう何も言わないで痛み取りを始める。
この日は23人。ガラクタと4000チコリ。祈りと唱えるのに1秒。祈りを唱える回数は、1時間に3600回。並列思考のスキルで常に唱え続けている。10時間として1日36000回。このペースで唱えれば、1か月に1回誰かからスキルがもらえる。アリアの右目のスキルで幸運値が上がれば、その確率はもっと上がるだろう。痛み取りのお客の中に素晴らしいスキル持ちがいるかもしれないのだ。
次は道具屋さん。今日は武器だけで11。それ以外にも陶器のポットや靴など雑多なものが、新品同様になって袋に入っている。ケリーはおじさんに1品ずつ商品の説明と値付けのやり方教えてもらった。もしかしたら将来商人のふりをすることがあるかもしれなかった。
昨日はスケルトンがたくさん武器を持っていたのと、裕福な人たちのゴミだったのでなんと56万チコリになった。高額な現金を持つのが怖いので。冒険者ギルドに戻って、口座にお金を入れてもらう。受付嬢にエルザさんはいなかったが、びっくりした顔をされた。でもさすがプロ、大きな声を出さないでくれたので、他の人にはばれなかった。ばれたら狙われたに違いない。
最後にケリーは西門の近くのゴミ捨て場。こちらは中流階級の住宅街。豪華なものはないが、地味な生活必需品や衣類が多かった。ともかく袋一杯にはなった。
さて西門から出る。衛兵はいるが5歳の子供の出入りはチェックされない。犬と同じ扱い。近くの村の子供だと思われているのだろう。田園地帯の細い道をアリアに言われた通りに進む。もちろんケリーは走っているし、祈りのスキルは使っている。この道は途中の小さな村をつないで、ずっと遠くでカナスという大きな町につながっているそうだ。
麦畑を抜けると、左には大きな湖がある。湖を通り過ぎると森の入口。そこで大きなカマキリ型のモンスターに出会う。アリアがアラクネの形で実体化してくれる。ケリーだけでは到底倒せない。2メートルを超す巨大さ。2つのカマの刃は鋭い。
カマキリは死神のように大ガマをふるって来た。ケリーは剣でなんとか初激を受け流しながら下がる。アリアは素早くカマキリに近寄って、毒針を打つ。当たるがカマキリの固い装甲にはじかれ、刺さらないし、傷がつかないので毒も効かない。
カマキリは飛んで、ケリーの背後をとろうとする。だが着地の時に一瞬静止する。そこに隙ができた。アリアはそこを狙って粘糸を巻き付けてカマキリを拘束した。ケリーが近づいて、関節部分を攻撃。とどめはケリーの役割だ。動けなくしておいて、最後は首を切り落として、魔石を奪う。
何回目かの、カマキリとの戦いで、死んだはずのカマキリが立ち上がる。ケリーはびっくりして、剣を構えて警戒した。
「カマキリが仲間にしてほしいって。ケリーはテイマーだから、従魔にできるわよ」
「良いよ」
「名前を付けて、何か与えて、仕事を命じればいいわよ」
「名前はモーリー。成長促進の指輪をあげる。仕事はリリエスを手伝うこと。ただリリエスは虫が嫌いだから、見えないようにね」
モーリーはそのまま消えてしまった。それからも昆虫型のモンスターは現れたが、仲間にはなってくれるのはいなかった。魔石は25個。ドロップは蝶型モンスターが落とした宝石3つと、クワガタモンスターが落とした短槍。
到着したのは鉄や銀が取れなくなった廃坑だった。リリエスは鉱山の職員の住宅をリペアしていた。石で作られたこじんまりした住宅だ。ベッドの破片から復元されたベッドが一つ。寝るだけはできる。
「リリエス。カマキリを従魔にしたよ。リリエスを手伝うように命令したら、そのまま見えなくなった」
「虫は嫌いなんだけど」
「目に入らないように離れているように言ってあるから」
「ま、見えなきゃいい。それより今日から薬草だけでなく、毒消し草も採っておいで。蜘蛛女が教えてくれる。あとは今日食べる肉」
家から離れるとアリアが出てきてくれる。鉱山の入口の反対側にある森へ向かう。昆虫型モンスターだけでなく、スケルトンも出てきた。武器も持っているが、ここではツルハシやスコップ、ノミなどの採掘道具が多い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます