第11話 裸踊り

 ギルマスに報告しなくちゃ。エルザは来客が途切れたことを確認して、ギルマスのクルトの部屋に向かった。リリエスは異常だとエルザは思った。何か変だ。


 クルトは部屋にいた。彼も昔リリエスと一緒のパーティにいたことがある。


「クルト。リリエスが新しパーティを作ったの知っている?」


「知っているよ。16番目のパーティ。今度は5歳の奴隷の子と二人だって。ついに追い詰められたな」


「お酒ってやめられますか。リリエスなんて、30年毎日泥酔していたのに」


「リリエスが酔っ払っていないのか」


「ついに宿代も払えなくなって、森で野宿しているようなんです。奴隷の子と二人で」

 

「市場から酒買っているんじゃないのか。しかし落ちぶれたな」


「それがけっこう稼いでいます」


「いくらくらい?」


「今日は1万チコリ超えています。それに道具屋に売る武器なんかが10以上あるみたい」


「10万チコリくらいにはなる。盗賊に落ちぶれたのか。酒ならたっぷり買える」


「盗賊の情報はないの。昨日道具屋に売った分も、現金使う予定ないから、口座に全部入れろって」


「てっきりアル中になっていると思ったが」


「奴隷のケリー君、不思議な魔法持っていまして。痛みをとることができるんですね。私もやってもらいましたけど、見事なスキルで。それでケリー君の口座を作ったんです。私が勝手に」


「奴隷の口座は、持ち主の同意がなくてはできないのが規則だが」


「でもリリエスに渡したら、全部お酒に変わると思ったのよ」


「リリエスならそうなるだろうな」


「それで口座作ってお金半分入れたらですね、ケリー君が酒場や昔のパーティーの人に少しずつお金返すというのよ」


「感心な5歳児だな」


「それで昨日、一応酒場の御主人に聞いてみたんです」


「あいつ、なんて言ってた」


「返していらないそうです。逆にお金払いたいそうで」


「まあリリエスほどの美人に裸踊りさせると、1日1万チコリはかかる。1年で300万以上、30年だと1億チコリ。それで借金は?」


「50万チコリです」


「酒場の親父が、いくらか払ってもいいというのは当然だな」


「それを伝えたらケリー君は昔のパーティーの人にも聞いてくれっていうんです。生活苦しい人がいたら優先して払いたいって」


「そんな奴は一人もいない。リリエスの最初のパーティは勇者パーティになっていて、2番目以降もみんな成功しているよ。落ちこぼれたのは俺くらいだ」


「ギルドマスターで落ちこぼれ?」


「リリエスに会計まかせていたんだが、彼女は経験値も給料も、自分の分はほんの少ししか受け取っていなかったんだ。酒場や博打の借金をパーティの財産で払っていたから、使い込みといえばそうなんだが、正規の給料を払った場合に比べると、使い込みなんてとても言えない。逆に100万チコリは払ってやりたいくらいだったな。あとで調べて分かったんだがな」


「一応、全パーティーに確認してみます」


「多分経験値のこともあるから、どのパーティーもリリエスにお金を払いたいと言って来ると思うよ。ただリリエスが急に真面目になった理由は分からない。少し調べてみるから今後も様子を知らせてくれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る