第6話 エクスタシー

「僕に何かした?」


「元気をあげました。乳首しゃぶっている時に」


「やばい薬じゃないですよね」


「私のユニークスキル。エクスタシー。全能力値上昇と陶酔感」


「やっぱり麻薬だ」


「無害だわよ。リリエスに30年毎日使ってきたけど大丈夫だったでしょ」


「リリエスがあんなふうだったのはアリアさんのせいだったんだ」


「セックとお酒と博打。リリエスはエクスタシーを途切れなく感じて、幸福だったと思うけど」


「もしかしたらリリエス、すごい魔導士になるはずだったかも」


「賢者にはなれたかな」


「それがパーティーの金を使い込むEランク冒険者で終わった」


「まだ終わったわけじゃないし」


「悪意はあったんですか」


「少しはあったかもね。神獣の私を呼び出したのに、虫は嫌いだって。30年一度も外に出してくれないなんて、ひどすぎでしょ」


「リリエスが死に向かい合って、今、満足していると思いますか。ひどすぎるのアリアの方だよ」


「反省はしているの。ちょっと。だから最後は幸せになってほしいと思って、あんたを選んでやったのよ。たまたま入った奴隷商に痛み耐性持ちなんか普通いなわよ。私の力だから」


「偶然じゃなかったんだ」


「わたし偶然を支配できるの。神獣だから」


「それもスキル?」


「右目」


「左目もあるっていうこと?」


「右目は幸運度がすごく上がる。左目はその反対」


「従魔なのに主人に悪意あるスキルかけられるんだ」


「私は従魔じゃないの。神獣だから。同盟者よ。ケリーもテイムのスキル、私には使ってないから。別の虫テイムして育てると良いわよ。最初は1種類しかテイムできないから」


「それは分かりました」


「ケリーは転生者なの」


「なんで分かるの」


「スキル痛み耐性だけじゃないでしょ。チートなスキル隠しているわよね」


「言語理解・映像記憶・並列思考です」


「言語理解は定番。並列思考はチートね。映像記憶って、私でも知らないスキルよ」


「前世の記憶も含めて、動画で思い出せます。辞書引いたとき、目に入ったそのページ全部記憶しているんです」


「何の役に立つのかな」


「こっちの世界で父さんと母さん殺した奴の顔、忘れないで済みます」


「そっか何歳の時」


「つい最近です。10日前」


「忘れてしまった方が幸せだけど」


「忘れるつもりです。全員殺して復讐成し遂げたら」


「強くなりたいの」


「あいつらを殺せるようになりたい」


「まだ遠くへ行っていない。私が殺しておいてあげようか」


「自分の力で殺したい。正義を主張する気はないんだ。自分の気が済まないだけだから。だから自分でやらなけりゃいけないような気がする」


「リリエスはあと4,5年しか生きない。その間リリエスに愛されてほしい。リリエスはそれで幸せになれるから。強くなるのはお姉さんが協力してあげる。必ず数年後にそいつらを殺せるようにしてあげるから」


「同盟ですね」


「同盟者から、有益なアドバイスを一つ。魔法の詠唱いらないんだけど、二つの魔法を連続する時は詠唱した方がいいのよ。例えば「贈与痛み耐性」というの長いから、3文字にまとめるの」


「なら、祈り、です」


「そう言うことよ、そして慣れたら、祈り、と唱えることもいらなくなる」


「僕、並列思考なので、頭の半分で唱えて、あと半分で他の事します」


「私にもして。祈り。私のスキル、右目・左目もケリーにあげたいから。それに私が傍にいる時は幸運度爆上げの右目使うから、多分百万回しなくてもスキルのコピーできると思う」


 家に近づくと、アリアはケリーの装備を借りて夜のモンスター狩りに出かけた。


 木の洞に帰ったら、リリエスが焚火の傍でうつらうつらしていた。魔石とドロップの指輪を見せたら喜んでくれた。角兔の血抜きはリリエスの魔法で一瞬。血は捨てないでソーセージにするらしい。指輪は成長促進1.1倍の指輪で、能力向上・自動調整・偽装の付与魔法をかけて1つは僕にくれた。


 夕食はお茶と兔の肉と野菜を串焼きにしたもの。塩味とケリーの知らないハーブだけどおいしかった。


 木の洞でケリーは抱き枕にされてぐっすり寝た。

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