第4話 東の森へ
冒険者ギルドを出て、広場で二人はベンチに座った。リリエスはケリーに一度贈与のスキルを戻させた。そしてテイム(虫)というスキルと一緒にケリーに返した。
小さなクモを出してケリーに渡す。
「私は虫が嫌いだから、早くしまいな。これからずっと貸し出すから、蜘蛛女はケリーを全力で助けること。分かったらはいと言いな」
「はい分かりました」
「それじゃこれからこの場所で稼ぐから、大きい声で痛いの直します。1回500チコリ、それがないときは壊れたものを1つ持ってきてください、そう叫べ。何回も繰り返して」
言われたとおりにすると通りかかったおばあさんが寄ってきた。
「わたしゃ膝が痛いんだけど、直してもらえんかいな。穴の開いた鍋をちょうど捨てるとこだったんでこれでやっておくれ」
「良いよ。鍋はこの袋に入れな」
ケリーは膝を摩り
「贈与・痛み耐性」
を何回か繰り返した。すると
「痛くない。ほんとう?信じられない」
おばあさんは大喜びで帰って行った。次は歯の痛いおじさん。この人は現金で500チコリ払ってくれた。5人お客がついた。おじさんの後は女性が3人。お金は全部で1000チコリ。あとは折れたナイフと割れた皿。ガラクタだ。リリエスはそのガラクタをリペアという魔法で新品同然に直してしまった。それを持って今度は裏町の道具屋へ行く。
「爺さん、まだ生きてたか」
「子ども攫ってどうしようっていうんだ。金目当ての誘拐か」
「これ、私の奴隷でケリーというんだ。これから毎日来るから、品物引き取ってくれ。これ今日の分」
「鍋とナイフと皿か。状態がいいから全部で2000チコリだな」
たしかに現金でもらうよりちょっと高く買い取ってもらえる。無駄に魔法の才能があるらしい。
市場で調味料や野菜を買って、さていよいよ森へ向かうのだが、一カ所寄り道をした。ゴミ捨て場だ。何か拾ってこいと命令されたケリーはゴミ漁りに行く。折れた木のスプーンと壊れた木のコップを見つけた。
「いいもの見つけたな。帰りに必ずゴミ捨て場でなんか見つけてくることな」
そう言いながらリリエスはスプーンとコップにリペアをかけて新品に戻す。
1時間歩くと森の入り口に着いた。この町の周辺の森はリリエスの庭だ。彼女は森の中にいくつかセーフハウスを持っていた。今夜泊まるのは東の森。ゴブリンやスライム・角兔が出て各種の薬草もある。
「ケリー、これが薬草だ。明日から10本以上採取して、ギルドに持っていくのがお前の仕事だから。1回しか教えないからしっかり覚えな」
ケリーはマジックバッグをもらって、そこに薬草をしまった。次はゴブリン狩り。リリエスはゴブリン3体を見つけて、まず風魔法の風刃で1体倒す。次にバフをかけた弓で1体。こっちに突進してきた最後の1体は剣での近接戦で倒す。30年やってきたからさすがに手際が良い。
魔石を取って、ケリーのマジックバッグに入れる。ぼろぼろの短剣・小弓・革の胸当てと革の靴を手に入れた。リリエスがそれらにリペアをかけた。元は人間のものだったのだから、かなり立派なものが復元された。リリエスはこの4つに付与魔法をかけた。能力向上・自動調節・偽装の3つを付与した。能力向上は使うたびに能力がわずかに向上する。偽装は目立たないように見かけをぼろくする。この装備は小弓以外ケリーに与えられた。小弓だけはぼろくする偽装はない。明日道具屋に売るから。
能力向上の付与は、剣であれば1000体敵を倒すと切れ味が1上がる。ただ堅牢性や軽さ・スピードなどいろいろな要素がランダムで上がるから、その効果は長く使わないと実感できないのが難点だ。5歳のケリーなら長く使うだろうから有用かもしれない。
「いったん今日泊まる場所へ行くよ」
そこは大木の木の洞だった。入り口は地上1メートルくらいの場所にある。良く見ると足場もドアもあって使いやすくなっている。リリエスのセーフハウスのひとつだ。そこに荷物を置いて、リリエスはひと眠りするという。まだ夕方にもなっていない。
「ケリーはモンスター10体倒すまで帰って来るな。今日食べるから角兔は必ず持って帰って来ること。蜘蛛女はその手伝い。ゴー」
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