第3話 冒険者ギルド
リリエスが意気揚々と向かったのは冒険者ギルドだ。この少年を登録する。冒険者ギルドには年齢制限も、奴隷禁止の規制もない。早めに登録して、できるだけ早くランクを上げる。そしてこの少年に稼がせる予定だ。
それに追放されたばかりだから、ギルドはまだ何も知らない。使い込みがギルドにばれる前に、パーティー離脱して、新しいパーティーを登録した方がいい。
朝の喧騒が去って、冒険者ギルドは人が少なめだ。それでも朝から飲んでいる冒険者は必ずいる。そしてろくでもない冒険者はリリエスの古いなじみだ。決して友達とか仲間ではないが。
「リリエス。孫連れてきたのか」
「私にゃ子どもなんかいないんだから。そんなわけないし、それに孫とは失礼な。そんな歳じゃない」
「45だろ。ひ孫がいてもおかしくないだろうが」
「これは新しい男だよ」
「ついに子供に手を出すようになったか。そこまで落ちると憐れを通り越して、清々しい変態だな」
「余計なお世話だ。今日からこの子とパーティーを組むんだ。ちょっかいかけたらひどい目に合わせるよ。私がどんなにあくどい仕返しするか、知らないわけじゃないよな」
リリエスの性悪は知れ渡っていた。この子も気の毒に。ともかくろくでなしどもはこの少年に関わらないと決めた。
ギルドの受付には20歳前後の若い女の子が何人か座っている。狙うのは一番巨乳の女。
「リリエスさん。今日はどんな御用ですか」
「この子の登録を頼む。それと私と新しいパーティーを結成するからその手続き」
「さすがにこんな小さい子は無理です。それに奴隷の場合、命を危険にさらすだけで罰せられます」
「そんなことは知っているよ。奴隷を登録するのは禁止じゃないし、安全は私が守るから問題ない。5歳での登録は前例があるから。23年前に。あんたは知らないだろうけど」
「生まれる前のことは知りません」
「この子はね、今日処分されるはずだったんだ。自分で掘った穴に埋められるはずだったんだよ。それをあたしが拾ってきたんだ。もしあんたが登録しなかったら、この子は奴隷商に逆戻りで、今日で人生終わるんだ。この子を生かすも殺すもあんた次第だね」
「そんなこと言われても」
「あんた肩こりひどくないかい。もし肩こりするならこの子を試してみないか。1回500チコリだけど、あんたには特別サービスしてあげるわよ。ちょっと少年。さっきのやって」
受付嬢のエルザは巨乳のためにひどい肩こりだった。しかも今は生理の最中で腹痛もひどい。それがこの少年が何か唱えると、きれいに痛みが無くなった。
「すごい。人生が明るくなる」
「登録は問題ないね」
「もちろんですとも」
「登録料は今持ち合わせがない」
「ギルドが立て替えておきますので、次の換金の時に差し引かせてもらいます。それじゃこれに記入してもらえますか。字書けるかなボクちゃん?」
「あそれ、私が書く。名前なんて言うんだっけ」
「ケリー」
「ケリー。確か5歳よね。職業はテイマーでいいか」
「いい加減なこと書かれたら困ります。この子にテイムの能力があるわけないでしょ」
「いや、私の力を譲って、テイムしたモンスターと一緒に働いてもらうつもりなんだが」
「リリエスさんがテイマーだなんて初めて聞きました」
「テイムはしているがそのモンスター一度も使ったことがないんだ」
「ともかくこのケリー君に現在ない能力を書くのはやめてください」
「じゃ無難に剣士にしておくか」
「パーティー名は何にしますか」
「テンペスト」
「それではリリエスさんもカード一旦預かります」
30年やってもリリエスの冒険者ランクはEランク。成人の場合、冒険者ランクはFランクから始まる。ベテランなのにEランクは普通ありえない。
少し待っていると受付嬢が2枚のカードを持ってきた。Eランクパーティー、テンペスト。リリエスはE.ケリーはG.未成年なので当分の間はGらしい。40歳の歳の差パーティーはこうして始まった。
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