第6話 欠陥品
俺が大聖堂から出ると、空からは雨が降ってきていた。さっきまでは晴れていたはずなのに。つくづく付いてない。
俺は、そのまま雨に濡れながらトボトボと歩き始める。家に帰らなくては、そう思っても足が家の方向に進まない。
頭の中にある考えはさっきの神父様の言葉。
“君は…君は魔法が使えない。そもそも君の体には魔力が無いんだ。”
そんなことがあっていいいのか?皆が必ず持っているものを俺は持っていないんだ。何でだ?やっと…やっと本物のヒーローになれると思っていたのに。スーパーパワーを使って、困ってる人や悪い奴をやっつけることが出来ると思っていたのに。
俺は、俺が死んだときに会った謎の男が言っていたこと思い出す。
“…お前はヒーローになりたいんだろ?”
これじゃあなれないじゃないか!!ただでさえ皆、魔法が使えるんだぞ!!使えない俺がどう出来るって言うんだ!!
そんなことを思っているうちに、家に着いてしまった。
「ただいま…」
そう言い俺は家に入る。
「お帰り!!お兄ちゃん。」
「おお、お帰り、ルカラ。どうだった?」
「お帰りなさい、愛しの我が子。今日はごちそうよ。」
家族の皆が笑顔で迎えてくれるが、元気のない俺の姿を見て心配そうな顔をする。
母さんが
「どうしたの?何かあったの?」
と聞いてきたが何も答えられなかった。
「今日はもう寝るよ…」
俺はそう言い自分の部屋に引き込もった。
その夜
「ルカラ、入っていいかしら?」
母さんが俺の部屋を訪ねてきた。
「…いいよ」
正直誰とも話したくはなかったが、これ以上心配させるのは不本意なので母さんを部屋に入れる。
「ルカラ、何かあったの?」
母さんが優しく聞いてくる。俺は精一杯の笑顔を作り
「別に、何にもなかったよ?魔法が使えるようになって、はしゃいじゃって疲れただけだよ。」
「嘘をつかなくてもいいのよ?」
一瞬で見抜かれた。やはり、どの世界でも親には嘘はつけないらしい。俺は正直に話し始めた。
「俺、魔法が使えないって、魔力が無いって、神父様にそう言われたんだ。俺、皆が魔法使えるのに、俺だけ使えないんだ…」
情けないことに、そう言い切った俺は泣き出してしまった。そんな俺を母さんは優しく抱きしめてくれた。そのまま俺は泣き続けた。
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