第5話 転生世界

 ーこの世界の名は「リムルド」。獣人、エルフ、ヒューマンなどの種族が多数存在し、各種族で国や町を創り上げ出来た世界である。各種族の国や町、物流などの交流などもあり、種族間の戦いなどはここ最近は起きていない。

この世界には『魔法』と言う概念が存在する。『魔法』は持つ者のによって属性が異なるが、魔力などは皆少なからず持っているものである。ー


 俺がこの世界、「リムルド」に転生してから早十年になろうとしていた。

「ルカラ、もう朝よ、起きなさい。」

母のカリン・シャルティが呼びかける。

この世界での俺の名前はルカラ・シャルティ。カリン・シャルティとロム・シャルティの間に生まれ、妹リン・シャルティの兄である。

俺は呻く。

「う~ん、後五分…」

「駄目よ、今日は大聖堂に行く日でしょ?早く起きなさい!!」

そうだった。今日は俺にとっての重要な日だ。

「いっけね。」

俺はベットから出て、慌てて準備をする。

「おはよう、父さん、母さん、リン。」

「ああ、おはよう、ルカラ。」

「おはよう、お兄ちゃん!!」

「全く…寝坊助なんだから。おはよう、愛しの我が子。」

三人が挨拶を返してくるれる。

「母さん、その呼び方止めてくれよ。恥ずかしい。」

「あら、どうして?私は思ったことを言っているのよ?現に家族全員に言ってるじゃない。」

「もう…」

母さんはこう言った恥ずかしいことを平然とした顔で言ってくる。言われたこっちは恥ずかしくてたまらない。

「じゃあ、俺もう行ってくるよ。」

そう言って俺は家を出る。

「いってらっしゃーい。」

リンが大きな声で見送ってくれた。


 この世界では、子供が10歳の誕生日になると大聖堂に行き“導き"を受ける。その“導き”を受けることで、その子供らは魔法を授かることが出来る。そう言う仕来りだった。

今日は俺の10歳の誕生日。そう、つまり俺も魔法を授かることが出来るのだ。一体どんな魔法が使えるようになるのだろうか。そう考えると昨日の夜からワクワクして眠れなかった。

「ヤバい、ヤバい、遅刻するーーー!!」

前世と同じように俺は聖堂への道を全力で走る。寝坊したのもそうだが、いつもの癖で困っている人達を見ると手助けせずには居られなかった。そのせいで遅刻寸前だ。

“導き”は10歳の誕生日を迎えた子供達に毎日行われている。その日その日で必ず10歳の誕生日を迎えるから当然だ。だから、一人一人に“導き”をするのは面倒なので、その日の午前中に皆で一気に“導き”をする。


 大聖堂にようやく辿り着く。ギリギリ午前中だ。と思う。まだ“お導き”はやっているだろうか。大聖堂の扉を開き、中を覗く。

「おや、どうしたんだい?」

神父様が聞いてきた。大聖堂の中には神父様しかいなかった。

遅かった。俺はへなへなと座り込んでしまった。

今日出来なかったら、原則次の11歳の誕生日までお預けになってしまう。今日と言う日を我慢して待っていたのにさらに一年後なんて。

俺が項垂れていると神父様が

「君、もしかして“お導き”を受けに来た子かい?」

「はい。でも、既に終わってしまったようですね…」

そう言い落ち込む俺に

「いや、君はついているぞ。今、丁度“お導き”の片づけをしようとしていたところだ。まだ間に合うよ。」

そう言ってニッコリ微笑む神父様。

「本当ですか!!やった!!」

「よし、ではさっそく始めよう。」

神父様は咳払いをし“導き”を始めてくれた。

「汝の名を示せ。汝の心を示せ。汝の意義を示せ。汝の運命を示せ。」

俺は答える。

「我が名はルカラ・シャルティ。我が心は神の供にあり。我が意義は人を助けることにあり。我が運命は…俺はヒーローになる。」

神父様は頷き

「神よ、この者に導きを。」

俺の体が少し光る。が、すぐに光は消えた。

神父様は驚いたような顔をしている。

「神父様、俺の魔法属性は何なんでしょか?」

その顔を見た俺は不安に思い質問する。

「ああ、神よ。なぜこんなことに…」

そう言った神父様は少し憐みを持った声で答える。

「君は…君は魔法が使えない。そもそも君の体には魔力が無いんだ。」

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