第2話 死

「はぁ…結局、生徒指導室に呼ばれてしまった。」

落ち込む仁、そんな仁に康太は励ましの言葉をかける。

「そんな落ちこむなよ、俺なんてしょっちゅう呼び出しくらってるぜ。」

「それ、励ましてるつもりか?まったく、生徒指導室に呼び出しくらってる間に何人助けれたと思うんだよ。」

「さあな、1人、2人くらい?」

「もっと助けられるわっ。」

そんなたわいもない話をしながら帰り道を歩く。


そんな時だった。


「待って!!」

 そんな叫ぶ声が聞こえる。仁達が声のした方を見ると取り乱した女性が一生懸命に走っている。その目の先には女性の子供らしき男の子が、ボールを追いかけて道路に飛び出していた。

 嫌な予感がする、そう思った仁は周りを見渡す。そこには、トラックが走ってきているのが見えた。運転手は男の子に気が付いてないのかスピードを緩めない。

 その事実に気づいた瞬間、世界がスローモーションになる。自分の動きさえも遅く感じる。女性の叫ぶ声、隣にいる康太が息をのむのが伝わる。

 考える暇もない、仁は走り出した。真っ直ぐに男の子に向かって。

「間に合えぇえええ!!」

仁は叫ぶ。あと少し、あと少しで手が届く。

「やった、届いた。」

だが、一緒に手を引いて逃げる暇もない。仁は男の子を突き飛ばす。次に瞬間、

   バアーン

体に衝撃が走る。仁は体が宙をまうの感じた。その後、直ぐに体が地面に勢いよく叩きつけられる。体全体に衝撃が走った。

「がっは」

思わず声が漏れる。空気が肺まで入ってこない、鈍い痛みがどんどんやってくる。頭がすごく痛い。強く打ってしまったのだろう。地面に血だまりが出来るのを視界の端で確認した。ヤバい、これ死んだかも。そう思った瞬間、体を恐怖が襲う。

ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい死ぬ苦しい死ぬ息ができない死ぬ体が痛い耳鳴りがする死ぬ死ぬ死ぬ

「救急車、救急車読んでください!!誰かっ!!」

 康太の叫んでいるのが遠くの方で聞こえる。女性の叫び声も聞こえる。さっきの男の子の泣き声も。

誰かが泣いている、そう思うとスッと恐怖心は消えた。

「こ…こうた…」

仁は呼びかける。康太はその呼びかけに気づき近づいてきた。

「どうした?今、救急車呼んでもらったから。すぐ来てくれるから。だから、もう少しの辛抱だ。なっ?」

「こうた…そ…んな…かお…する…な…よ」

「うるせぇよ。元々こんな顔だよ。」

 康太は笑いながら言う。仁も少し笑みを浮かべ

「こうた…たのみ…きいてくれ…」

「頼み?何だ?言ってみろよ。」

「かあさんに…いつも…おいしいごはんありがとうって。とうさんには…さけはほどほどにって。そ…れから…ごめんね、ありがとうって…つたえてくれ。」

 そう言いきると仁の視界から世界はログアウトした。

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