第1話 その男、ただの人。

「ヤバい、ヤバい、遅刻するーーー!!」

そう叫びながら道を駆け走る一人の男。走ってる男の名は只野 仁(ただの ひとし)。そこら辺にいるごくごく普通の男子高校生だ。

「今日も遅刻したら、次こそ絶対に生徒指導室行きだ。それだけは避けなければ!!」

走る仁。遂に学校までたどり着くが

キーンコーンカーンコーン

無情にも学校のチャイムが遅刻確定の音を鳴らしている。

「ああ、今日も間に合わなかった…」

そう言い仁はトボトボと教室に向かうのだった。


「今日も遅刻か、仁。今日で五日連続だな、記録更新だぞ。」

仁の担任、剛田 守(ごうだ まもる)通称ゴリマモがため息交じりに言葉を発した。

仁は今、教室の教卓の前で説教をされている最中だった。

「えへへ、ありがとうございます。先生。」

「誉めてねぇよ。それで?一応遅刻の理由は聞いてやる。」

剛田は仁に話すようにうながす。

「はい。ええと、道に迷っている男性の道案内をして、重い荷物を持って困っていたおばあちゃんの荷物を代わりに持ち、それから…」

「分かった、もういい。つまり、いつも通りの遅刻理由ってわけだな。」

仁の長くなりそうな説明に剛田は話を遮る。

「まぁ、そうなります。」

頭を掻きながら謝る仁。

「センセー、仕方ないよ。ヒトシは昔っからそう言う人間なんだから。」

そう声を上げたのは仁の一番の親友である佐藤 康太(さとう こうた)だ。

見た目はチャラく、ぱっと見、不良少年を連想させられる恰好をしている。

「ヒトシはヒーローになりたいから、困ってる人見かけたら助けずにはいられない性分なんだよ。な?」

康太はそう言葉を続ける。

「おう、俺はヒーローになるからな。」

仁は胸を張ってそう宣言する。

「それは知ってるんだがこうも遅刻が続くとなぁ…」

剛田は困ったように呟く。

「うっ、すんません…」

仁は申し訳なさそうに再び謝るのだった。


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