甲賀クラン流:医療忍術の修行方法


甲賀の里、屋敷の広間。


岩爺:よし、揃ったか。


宇迦、於兎、ネム、シャオラン、咲耶、おえん、6人のくのいちが集められた。


於兎:がんじー、いきなり全員集めて、どうしたの?ご飯の途中だったのに……。

宇迦:え、お前、まだ朝ごはん食ってたのか……てか、持ってくるなよ!

シャオラン:あっそれ、私の肉まんアル!また勝手に食べたな!

於兎:もぐもぐっ★

おえん:(にぎやかだなぁ……)

岩爺:ごほん……今日は、新しく来てくれた、お前たちの忍術の先生を紹介する。

ネム:えっ!ゴリラ以外の先生!?

岩爺:うむ。コンガは、忍術というより、体術のほうが得意じゃからな。

咲耶:(忍術もっと学びたかったら嬉しい……)

岩爺:入ってきてくれ。


====


扉が開く。

巫女服を来た、黒髪の美女が入ってくる。

一目見て、ぎょっとする宇迦。


イズナ:みなさん、よろしくね。私の名前はイズナ。しばらく貴方たちの指導をさせていただくことになりました。

宇迦:……な、な、なんで姉ちゃんが!里から出ていいの!?

イズナ:あら、宇迦、よろしくね。

宇迦:え、いや、よろしくって……。

於兎:えっ、宇迦のお姉ちゃんなの!?★

イズナ:そうよ。宇迦は私の大切な妹なの。

於兎:宇迦のことなんでも知ってるの!?

イズナ:赤ちゃんの頃からぜ〜んぶ知ってるわ。

宇迦:だ、だから嫌なんだよ!姉ちゃんも、余計なこと話すなよ!

於兎:うっふふふ〜★

岩爺:と、いうわけじゃ。

イズナ:お昼ごはんを食べたら、早速指導に入るわ。あとで集まってね。

宇迦:……くっそー、やりにくいわ……。

於兎:うっふふふ〜★

宇迦:耳元で、やめろ!


====


修練場に集まるくのいち、前に立つイズナ。


イズナ:みなさん、お昼ごはんをたっぷり食べて眠くなってないかしら?

於兎:ぐぅ★

咲耶:(立って寝るのすごい……)

イズナ:私は色々な忍術が使えるんだけど……おえんちゃん?

おえん:ひぇ!? 私!?

イズナ:あなたは珍しい忍術【糸脈】が使えると聞いたわ。

おえん:ひゃい!糸を通して、相手のことがわかる忍術です!

イズナ:病気の原因とかもわかるの?

おえん:はい、だいたい……。原因がわかるだけで、何もできないんですけどね……。

イズナ:……わかったわ、あなたは特別に修行してあげる。

おえん:ふへ!?

宇迦:よかったな!おえん!じゃあ私たちは帰るね!

イズナ:だめよ。しょうがない子ね……。

咲耶:あ、でも、先生、私たちはいつもの練習メニューがあるんです。今日は、早速おえんちゃんの特訓に入ってもらってもいいと思います。

ネム:そうだな。私たちの指導は明日からでもいいし。

イズナ:……そうね。最初におえんちゃんを指導したほうが、明日からの修練も効率がよくなりそうだし、そうしましょう。

宇迦:じゃあ、私たちは帰るね!

イズナ:帰るのはだめよ。

於兎:ぐぅ★

咲耶:(まだ寝てる……)


====


くのいちは修練場の別エリアへ。

イズナとおえんが残る。


イズナ:あなたを残したのは、私の医療忍術と相性がいいからなの。

おえん:い、医療忍術が使えるんですかっ!?

イズナ:えぇ。岩爺様から呼ばれたのも、医療忍術を広く伝えるためなの。

おえん:わ、私と相性がいいってどういうことですか?

イズナ:私は病気や怪我を治せるのだけど、病気の詳しい原因や、心の問題についてはわからないの。

おえん:そうか、私の糸脈と合わせたら、原因もわかるし、治療もできるんだ。

イズナ:そう。そして、あなたが医療忍術をもっと使えたら、とっても人の役に立つはず。

おえん:先生!ありがとうございます。私、がんばります!

イズナ:えぇ、よろしくお願いね。じゃあ、早速、医療忍術の基礎を教えていくわ。


====


翌日、朝。

食堂にて。


岩爺:咲耶、コンガを知らんか?見当たらんのだが……。

咲耶:え?見てませんけど……。

シャオラン:昨日、修練場のあたりで見たアルよ。

ネム:なんか、おえんとイズナのことずっと見てたな。

岩爺:い、嫌な予感がするのう……。


====


修練場。

コンガが硬直し、立ち尽くしている。

岩爺が近寄る。


岩爺:コンガ……どうしたんじゃ。

コンガ:………

岩爺:何かの妖術に掛かってるのか……?


宇迦が近づいてくる。


岩爺:宇迦。コンガがおかしいんじゃが……。

宇迦:これは……魅了ね。ほら、よく見ると、目がハートになってる。

岩爺:なんと。やはり妖術か。一体誰が……。

宇迦:……わ、私の姉ちゃん……だと思う。

岩爺:なんと!? イズナが!?

宇迦:昔からよくあったの。姉ちゃん、美人だから……。

岩爺:男どもが勝手に魅了されてしまうのか?

宇迦:そうなの。惚れっぽい、純情な男の子が次から次へ大変なことに……だから、姉ちゃんは、里からはなるべく出ないようにしていたの。

岩爺:そうか、それは知らなんだ……。

宇迦:姉ちゃん、昔からトラブルメーカーなんだよね……。

岩爺:で、魅了されたコンガはどうすればいいんじゃ?

宇迦:一番効くのは雷遁。ビシャーン!って、電撃。

岩爺:電撃……。

宇迦:それか、炎。メラメラ、と欲望ごと燃やすの。

岩爺:し、死んでしまうのではないか?

宇迦:だから、そのあと、お姉ちゃんが急いで治すの。また魅了されないように、被害者に目隠しをして……。

岩爺:そ、壮絶じゃな……。

宇迦:うん……。


====


修練場。


魅了され、口を開けて立ち尽くすコンガ。

コンガの前に立つ、宇迦。

コンガの後ろに控える、イズナとおえん。

全員集まり、固唾をのむ。


於兎:ゴリラ先生、今から燃やされるの〜っ?★

ネム:おいっ、不謹慎だぞ。

於兎:燃えたら毛とか全部なくなっちゃうかもっ!★

シャオラン:ゴリラの地肌って何色なんだアル?

ネム:おいっ、シャオランまでやめろよ!

咲耶:(わ、笑っちゃだめ……)

岩爺:よし、宇迦、やってくれ。

於兎:ファイヤーッ★


宇迦が、九字を切る。

宇迦の尻尾が、9つに増える。


宇迦:九尾の……炎(ほむら)っ!


コンガが火柱に包まれる。


於兎:ゴッ、ゴリラ先生ーっ!★

ネム:うぉぉ、めっちゃ燃えてる……。


宇迦が術を解くと、はたと火が消える。


コンガ:……あっちーーー!!

宇迦:おえん、お姉ちゃん!急いで!


おえんがコンガに目隠しを被せ、イズナが呪法を唱える。

イズナの髪がコンガを包むように広がり、蒼く輝く。


イズナ:……オン チラチラヤ ソワカ。


みるみるうちに、コンガの皮膚が再生され、毛並みが戻っていく。

姿を見られないように、そそくさと去るイズナ。


於兎:……い、今、一瞬だけ、ゴリラの地肌が見えたよね!?★

シャオラン:なんか汚い感じの色だったアル!

ネム:おいっ、やめろよ!

咲耶:(わ、笑っちゃだめ……)


正気に戻ったコンガが、目隠しを取る。


コンガ:な、なんだ!? なんで目隠しが!? なんかすごい熱かったぞ!

宇迦:な、夏だからね。

岩爺:そ、そうじゃなぁ、今年は暑いのう……。

コンガ:おぉ、そうか!この目隠しでスイカ割りをやるのか?いいじゃないか!

於兎:スイカ割りやりた〜〜〜い!★


岩爺:(……宇迦、コンガは何も覚えてないのか?)

宇迦:(魅了されてる間のことは、忘れてしまう人が多いの)

岩爺:(どうしたもんか……)


====


岩爺の部屋。

イズナ、岩爺、宇迦が集まっている。


イズナ:岩爺様、ほんとうに申し訳ありませんでした。

宇迦:姉ちゃんは悪くないよ!いい年して魅了されるバカゴリラが悪いんだよ!

岩爺:いや、わしも悪かった。魅了されたコンガが暴走せずに済んで、ほんとうによかった。

宇迦:そうよ……筋肉ゴリラが影分身して暴走してたら……。

イズナ:……私はやっぱり、来るべきではなかったのではないかしら……。

宇迦:……そんな、姉ちゃんは悪くないのに……。

イズナ:ごめんね。お姉ちゃん、宇迦の成長を近くで見守れる、と思って張り切っちゃったの。

宇迦:姉ちゃん……。

岩爺:うむ。安心せい、帰るなんてことはさせんよ。

イズナ:でも、どうすれば……。

宇迦:また魅了されたら……。

岩爺:わしに考えがある。


====


修練場。

コンガが、くのいちたちを指導している。


於兎:ねぇねぇゴリラ先生っ!★

コンガ:なんだ、於兎!

於兎:なんで目隠ししてるの?今日も変態なのっ?★

コンガ:へ、変態ではない!なんだ「今日も」って!岩爺様から【視覚に頼らない体術を極めるべきだ】とアドバイスをもらったんだ!

於兎:えいっ★

コンガ:おふぅ、脇腹を突くな!


ネム:……宇迦、こんなんでいいのかこれは……。

宇迦:コンガ先生が魅了されなくなるのがいいんだけど……。

ネム:いつまでごまかせるのか……。

宇迦:いやまぁ、また燃やせばいいんだけど、あの術、疲れるんだよね……。


イズナが近づいてくる。


宇迦:ね、姉ちゃん、こっち来ちゃだめだよ!

イズナ:え、いいのよぉ。また宇迦が燃やして、私がすぐ治せばいいんだから。

宇迦:やだよ、燃やすの疲れるんだって……。

イズナ:修行よ、修行!

おえん:せ、先生っ!次は私も治療に参加させてください!

イズナ:もちろんよ。一緒に治しましょうね。

おえん:た、楽しみですっ!

ネム:(……ちょっと気の毒になってきた……)


シャオランがふざけて、コンガのみぞおちを突く。


シャオラン:ホアチョーッ!

コンガ:おぐふぅ!

ネム:あ、やばい!目隠し取れそう!!!


焦る宇迦。

目を輝かせる、イズナとおえん。


(終)



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ニンジャ犯科帳 @ikehaya

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