第4話 本当のかれん…、本当は知ってたでしょ?

「生きるのってしんどいな…」



十四歳の口から零れたこの言葉。



人に話しかけるだけでも気を遣うし、いつも元気でいなきゃいけないし…。



門奈かれん十四歳、これが心の本音。





―三年後―

高校三年、クラス委員長になった。

クラスを盛り上げなきゃ…。

みんな楽しめる委員会を決めるイベントを企画しようかな。

男女一人ずつで良いんだよね?

あ、やばい。このクラス、男子が一人多い…。

どうしたら…、あ、そうか。私が掛け持ち委員になればいいか…。

委員長の方は放課後頑張れば良いし…。

私が、今のバレー部から、帰宅部にすれば…、あ、そうか大学受験で不利か…。

平気平気。何もしてないより、絶対有意義なはず。

掃除当番は男女一人ずつで良いよね?

あ、私、もう一個掛け持ちすれば良いだけだ。

出来るかな?私結構不器用なんだよな…。

でも、期待されてるわけだし、責任感持ってやらなきゃ。




これが、かれんの高校三年生の始まりだった。

本当は滅茶苦茶緊張しいなのに、強がって、頑張って…。


明るい笑顔のかれんをみんな知ってる。


笑顔のかれんに、うんざりする、門奈かれん。

合コンで写メ撮る時、頬が引きつる。

慌ててピースで隠す。

撮り終わった瞬間、化粧室へ飛び込む。

過呼吸になる。

治まるのに五分ほど必要だ。

ゼイゼイ言いながら、持ち歩いている紙袋で呼吸を整える。



笑顔で戻って、また歌を歌う。



そのかれんは知ってる。みんな知ってる。誰もが知ってる。

だから、誰も気づかない。


高校生になって、色々な役に着いて、大変なことが積み重なって、クラス委員なんて雑事をやっていると、勉強にあてる時間がどんどん追いやられる。

別に勉強不得意じゃないけど、得意でもない。

時間がなければ、不得意になるばかりだ。

頭がおかしくなる。

瞬間的に意識が飛ぶ。


それでも、笑顔を絶やさない門奈かれん。





それは、学校の中だけの門奈かれん。

点数以外の門奈かれん。






家に帰ると、食事もお風呂も着替えも勉強もしないまま、ベッドに倒れこむように眠りにつく。


眠って…眠って…眠って…眠って…。

その堅く閉じられた目からは只々眠っているとは思えない、涙が枕に少し小さめの湖が出来上がる。



それでも、朝になれば目を覚まし、急いでシャワーを浴びて、少しだけでも…と、教科書をあさる。そうこうして朝ごはんの時間ははぎ取られ、空腹のまま学校へ走る。



走る…走る…走る―…。



それに遅れぬようにと、涙が付いてくる。



どうして…?どうして…?どうしてなんだろう?

涙が出るよ。



誰か…助けて…。



その一言が、言えなかった。


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