第2話 苛立ち

「テストで赤点だったやつは夏休み中に補習があるからなー。」

担任の発言にクラス中から「えー。」と声がもれる。


入学から約2ヶ月夏休みを目前にして最初の中間テストだ。そこそこ頭のいい僕からしたら別に進学校でもないこの高校で高得点をとることなんて余裕だった。


「なぁ、朔間って勉強できんだろ?ちょっと勉強教えてくんね?」


名前の分からない一軍のやつに急に言われて驚いた。


「なんで僕の頭がいいと思ったの?」


「いや、お前中高一貫の進学校から来たんだろ?誰かが前言ってたからさ」


そりゃあ県内なら知り合いは当然いるだろうし、誰かが知っていても無理はない。

じゃあそいつは僕のことをなんて聞いたんだろう。どうせ、調子乗ってるとか先生に媚びるのが美味いやつとでも言っていたんだろう。


「別にいいけど文系科目はちょっと苦手なんだよね」


そういうと一軍は「じゃあ数学と生物だけでいいから」なんてちょっと上から目線で言ってきた。ちらほら他の人もやってきて「分からないところがあったら朔間に聞こう」なんて風潮が出来上がってしまった。


次の授業のチャイムがなると皆、眠いだのお腹がすいただの、誰一人僕に教えてもらったことなど忘れたかの様に元の席に戻って行った。結局人間なんてこんなもんさ。


ロン毛はさすがに下ろしてると暑いのか髪をひとつにくくっている。そう言えば入学してからこいつが誰かと授業以外で話している姿を見たことがない気がする。

誰にも媚びない。むしろ俺は1人でいたいとさえ思わせるこいつの雰囲気に無性にイライラした。


反対に僕は別に仲のいい人がいない訳では無い。移動教室に誘ってくれる友人や学食で一緒にご飯を食べる友人もいる。

でも一軍のあいつみたいに休日に映画を見に行ったり、夏休みに花火大会を見に行く約束をしたりするほど仲のいい人はいない。

もしかしたら僕以外の人でどっかに行ってるのかもしれないがそんなのどうだっていい。



僕はそれでいい。



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僕達はまだ少年だった @gochimu

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