第116話 久しぶりの再会
グラベンに凱旋した俺達は、中央広場においてエルン平定の報告と遠征軍の解散式を執り行った。
無事に報告と解散式が終了した後、まだ熱狂が冷めやらぬ中央広場を後にした俺は馬に騎乗してコルとマナの二匹の従魔を伴い、妻達が待つ領主館へと足早に向かっていった。
領主館の敷地内にある別館に住むラモンさんとロドリゴも俺と同行しており、親衛隊隊長となったルネも、警護する対象の俺が住む領主館を案内する為に俺に付き従ってもらっている。ロドリゴが隊長の時は同じ敷地内の別館に住んでいたから問題はなかったが、これからは領主館内にルネの部屋を用意しておこう。
領主館に到着すると、既に俺が帰還するのは連絡済みなので領主館で働いている配下や使用人達が両脇に並んで総出で出迎えてくれていた。
「「「エリオ様、お帰りなさいませ!」」」
「出迎えご苦労。長く留守をしてしまったがようやく帰還する事が出来た。俺の居ない間の留守を守ってくれてありがとう。皆も相変わらず元気そうで何よりだよ」
待ち受けていた配下や使用人達に労いの言葉をかけてあげると、俺達が無事に帰ってきた安堵感からか、感極まって泣いてしまう女性の使用人の姿もあった。留守を守るという仕事も間接的に俺達と同様に戦ってるのだと改めて実感させられる。
そして、馬から降りて手綱を配下に預けた後、前方に見える領主館の玄関を見ると、そこには大きなお腹を抱えたリタとミリアムの二人が微笑みながら並んで立っていた。
「リタ! ミリアム! 今帰ったぞ!」
俺は二人の待つ領主館の玄関に向けて走っていき、並んで立っている二人を両手で思い切り抱きしめてあげた。
「二人には心配をかけてすまなかったな。やっと帰ってこれた」
「あたしはあんたが無事で帰って来てくれさえすれば他には何も要らないよ。お帰りエリオ」
「エリオさんお帰りなさい。一緒に行けなくてとても心配していましたけど、エリオさんをずっと信じて待っていました。無事に帰って来てくれてありがとう」
久しぶりに感じる妻の温もり、そして愛しい声を耳にして、本当の意味で俺は帰ってきたのだなと湧き上がるその思いを胸の奥に強く感じていた。二人から身を離して後ろを振り返ると、ロドリゴとラモンさん、そしてルネがこちらへ近づいてきていた。
「姉貴、ミリアムさん、ただいまっす」
「ロドリゴもお帰り。あんたは殺しても死ななさそうだから大して心配してなかったよ」
「いつも通りで慣れてますけど、姉貴は相変わらず僕には薄情で辛辣っすね」
「ロドリゴさん。リタさんは強がってこう言ってますけど、あなたの事もエリオさんと同じくらいにずっと心配してたんですよ」
「うるさーい! 何でミリアムまでロドリゴみたいにあたしの本心を喋っちゃうんだよ。恥ずかしいだろ!」
「ふふ、いいじゃないですか。私は姉弟がいないのでリタさんとロドリゴさんが仲の良い姉弟なのが羨ましいのです。お二人は本当は仲が良いのですからね」
ハハ、ミリアムもこの姉弟をよくわかってるな。
「ミリアムよ、随分とお腹が大きくなってきてるではないか。私ももうすぐ祖父になってしまうのかと思うと感慨深い。子供の頃は結構な歳になるまでおねしょばかりして泣いていた娘が人の親になる日がすぐそこまで来てるとは……月日が経つのも早いものよ」
「おねしょしてたのをバラすなんてお父さんやめてよ! 今ここで言わなくてもいいでしょ!」
ハハ、今度はラモンさんにミリアムの恥ずかしい過去がバラされる番か。しかし、こんな美人が結構な歳までおねしょをしてたのか。いい事を聞いてしまったぞ。
「まあ、ここで立ち話もなんだからとりあえず中へ入ろう」
このまま玄関先で騒いでる訳にもいかないからな。遠巻きにこちらを眺めている配下や使用人もどうしたらいいのか困ってるぞ。俺は外にいる配下や使用人達に自分の持ち場に戻るように指示を出しておいた。
一緒に連れてきたルネだが、配下にこの家と周囲を案内させるように命じておく。それと、忘れずに領主館の空いてる部屋をルネの部屋にするようにも言っておいた。ラモンさんとロドリゴは自分の住む別館に向かい、ルネは配下に案内されて領主館の空き部屋に向かっていく。
『コルもマナも久しぶりにこの領主館に戻って来た感想はどうだ?』
『懐かしい匂いがします』
『皆さん元気そうで良かったです』
コルはともかく、マナは普通の人間っぽい感想なのが面白い。
ずっと身重の妻達を立たせておくのも何なので、先にリタとミリアムをコルとマナをお供役にしてソファーのあるリビングルームに向かわせる。
「リタ、ミリアム。俺は着替えてくるからコルとマナを連れて先にリビングルームに行ってくれ」
その間に俺は自室で旅装を解いて着替えてこよう。俺が着替えている間にリタとミリアムは久しぶりに会う従魔達を撫でながらモフ分補給もしたいだろうしな。
『コル、マナ。暫くの間リタとミリアムの相手をしていてくれ』
『わかりました主様。撫でられる準備は出来ていますよ』
『久しぶりなのでお二人にはいっぱい撫でさせてあげましょう』
気が利いて頼もしい従魔達だ。
何だかんだでグラベンの街へ帰還するまでずっと気が張っていた俺だったが、領主館に帰ってきてリタ達と使用人の顔を見たら安堵した。長く家を空けていたから少しは家族サービスを心がけてみよう。
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