第114話 ついに俺もゴドールへと帰還の途に就く
青巾賊がのさばっていたエルン地方の平定戦が始まってから数ヶ月程が経過した。
この地方の復旧復興も急速に進んで住民達も俺の治世を素直に受け入れている。そりゃ、住民達からすれば青巾賊なんかよりも隣のゴドール地方を発展させていて評判も悪くない俺に治められる方を望むのは当然だろう。
また、俺の方もこれらの住民達の期待を裏切らないようにこの地を治めていかないとな。その為にはゴドールと同じように、住民達が将来に希望を持てるような統治を心がけていこう。
そして、この地方を治める体制も整ってきたので俺はゴドールへ帰還する事になった。先に第一軍などはゴドールへ帰還させてはいたが、俺や文官達はナダイの街に残って仕事を続けていた。それもここにきてようやく一区切りがついた。そして今日がその出発の日だ。ゴドールのグラベンで待っているリタとミリアムの出産が近いのでそれに間に合いたい気持ちもあるので帰還の日を早めたのだ。
領主館という名を改め、新たにエルン府庁舎となった建物の中で出発前の挨拶や行程の最終確認をしているところだ。
「ラモンさん、ようやく一区切りがついたね」
「そうですな。体制が整いましたのでもう問題はないでしょう」
「住民達が進んで協力してくれたのも大きかったよね」
「それもエリオ殿の強さと名声と人徳の為せる技でしょう。こんな時代や情勢だからこそ住民達は強くて信頼するに値する人物に自分達を統治して欲しいと願う傾向があるのです。その点でエリオ殿は住民達の希望の人物にぴったりと当て嵌まっておりますからな。それだけでなくエリオ殿は住民達の暮らしを良くしようと考えながら統治をしているのも街の人々から支持される理由です」
「ラモンさんにそんな風に改まって褒められると何だか照れ臭いな」
「ハハ、私は事実を言ってるだけですぞエリオ殿。その証拠にここの住民達の熱心な協力だけでなく、別の地方からもエリオ殿の噂を聞き、エリオ殿に惹きつけられた者達が続々と集まってくるではないですか」
「そういうものかな?」
「ジゲルやロメイ、ルネなどの逸材など、他からすれば喉から手が出る程に欲しいと思える人材がエリオ殿を慕って集まってくるのが何よりもその証明になっておりますぞ」
そういえばロメイだが、将軍職には進まずに参謀職として働く事になった。本人からの希望もあったのでね。
「エリオ様、ラモン殿、ここにおりましたか」
「フッ、エリオとラモンよ。見送りに来たぞ」
俺に声をかけてきたのはラッセル将軍とバルミロ将軍だ。このエルンに残る第二軍と第五軍を率いているから暫くは二人と会えなくなるな。バルミロさんはベルマンさんと同じようにラッセルさんとも馬が合うようで、今では二人とも結構仲が良いみたいだ。同じ地方に駐屯するのだから二人の仲が良いのは俺も安心出来る。
「ラッセル将軍にバルミロ将軍。いや、気さくにラッセルさんとバルミロさんと呼んだ方がいいかな。二人とも忙しい中わざわざ見送りに来てくれてありがとう」
「エリオ様。いつも吾輩ごときに気軽に接してくれてありがとうございます。お若いながらもあなたは飛び抜けたカリスマと実力がある。それでいて住民達にも分け隔てない態度を見せる姿は吾輩も見習わせてもらっております」
「ハハ、俺は元々冒険者上がりだからね。今でも普段の心持ちは住民達とそんなに変わらないさ」
「フッ、そういうところがエリオが皆から慕われる理由なんだ。初めて会って模擬戦の勝負をした時もエリオは俺を負かしても勝ち誇らなかったし、負けた俺に手を差し伸べてくれる優しさも持ち合わせていたもんな」
「フフ、そんな事もありましたね。あれ以来バルミロさんとはずっと共にいますね。俺がここまでなれたのもあの時に出会った人達のおかげです。決して俺一人の力だけじゃない。だからこそラッセルさんを始め多くの素晴らしい人達と出会う事が出来たんです」
あの時に出会った人達は今も俺を支えてくれている。色々と癖は強いけど根は気が良くて優しい人達だ。しかも、リタとミリアムは今では俺の妻となって俺の子供を身籠っているのだからな。
「こちらの任務があるのでおそらく定例会議も全ては参加出来ないだろう。ベルマンとは会う機会が少なくなると思う。エリオからよろしく言っておいてくれ」
バルミロさんの言う通り、グラベンとナダイでは少し距離があるから全ての定例会議に呼ぶのは難しいかな。それでも意思疎通は大事なので出来るだけ呼びたいところだけどね。まあ、連絡は欠かさないようにしよう。
「わかった。ベルマンさんにはよろしく伝えておくよ」
そんなこんなで俺が皆と話し込んでいると、向こうから義弟のロドリゴがこちらへ歩きながら近づいてきた。
「エリオ義兄さん。そろそろ出発の時間っすよ」
もうそんな時間か。統治する地域が大きくなると人の配置も分散せざるを得ないからな。名残惜しいが出発の時間が来たのなら仕方ない。
「わかった。それではラッセル将軍、バルミロ将軍。エルン地方の守りは任せたぞ」
「吾輩にお任せください。エリオ様の期待に答えるように務めさせていただきます」
「フッ、ゴドールよりも守りを安定させるのが俺の目標だ。エリオの為にも頑張らないとな」
二人とも頼もしいな。俺も負けないようにしないと。
エルン組に別れを告げ自分の愛馬のソラシに騎乗する。余談だがこのエルン地方は馬の産地でもあるので多くの騎馬を調達出来た。
さてそろそろ出発だ。俺の騎乗する馬の脇には従魔のコルとマナ。後ろにはラモンさんとルネが馬に騎乗して付き従う。
「これよりゴドールへ帰還する。出発!」
「「「応ッ!!!」」」
エルン地方の平定が完了してその後の体制を整えた俺達は、長い滞在を終えてゴドールへの帰還の途についたのだった。
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