援軍

 俺達はヤマトに向かった。

 きゅうが肩に乗っている。


 船の中でエムルがきゅうを見つめる。


「きゅうは可愛いね。僕にも触らせてくれないかい?」

「やめておいた方がいいですわ。エムルは嫌われていますわよ」


「チャレンジは必要だよ」


 そう言っている間にきゅうが俺の後ろに隠れた。

 エムルが俺の後ろにいるきゅうに回り込む。

 きゅうは俺を軸にして常に逃げる。


「やっぱりですわ」

「きゅうより俺の方がいいよな」


「きゅう♪!」

「ほらやっぱりだ」


「そうは言えないんじゃないかな?」

「そう言えるだろ?」


「考えてみて欲しいんだ。僕はMだよ。従順に言う事を聞く犬よりネコの方が好きなんだ」

「で?」


「つまり、僕の事を気にいって、僕に好かれる行動を取っているんじゃないかい?従順なペットよりツンツンしたきゅうが僕の好みなんだ」


「無いな」

「無いですわね」


「おう、いいねえ!それだよ!久しぶりにこの感覚を味わえたよ」


 エムルが体をくねくねとくねらせた。

 その瞬間きゅうがビクンと驚いて俺に隠れる。


「きゅうはベリーの無意識ですわ……失言でしたわね。ベリーが目覚めて聞いたら怒りますわ」

「どういう事?」


「ベリーの理性を取り払った状態がきゅうだと考えられるね。となれば、いつもウインに乗っているきゅう。ベリーはウインの愛玩動物になりたいのさ」

「少し違いますわ。それはエムルの願望ですわね。それと、ベリーが起きたら真っ赤になって怒りますわよ」


「あーなんかきゅうがエムルを避ける意味が分かってきた」

「ウイン、少し顔がすっきりしましたわね」

「そうかもな。良く寝た。寝るのは大事だと思う」


 俺は風にあたる為船の外に出た。


 ステータスでベリーの状態を確認する。


『ベリーが目覚めるまで、あと256年』


 俺はきゅうを撫でる。


「ベリーに、無理をさせてしまったな」

「きゅう」


 きゅうはすりすりと体を擦りつけてくる。


 残る問題は南東島と南西島。


 南東島にはマスコミギルドが居る。

 これはタケルが南東島を制圧すれば問題無い。

 もう1つの南西島の方が厄介な気がする。


 名前持ち3体か。


 そこまでレベルが高くなさそうなマリーに俺は苦戦した。

 メギドが使えればとか色々言おうと思えば言える。


 だがメギドは2発しか使えない。

 消費魔力が無い変わりにクールタイムは24時間だ。

 名前持ち3体なら6発欲しいんだよな。


 何回も復活する系だとそれでも足りないか。


 今は南東島だ。


「長い目で見てやって行くか」


 俺はベリーの目を早く覚ましたいと思っていた。

 俺はそれをあきらめたのだ。

 無理だと悟り、ゆっくり進める事にした。




 ◇




南東島に到着すると、タケルとウォールが出迎えた。


「おお!ウイン!元気だったかの?」

「前より元気になった」


「ウインが来れば心強い」

「ウォールは大活躍みたいだな」

「そんなことは無い。それを言うならウインの方が大活躍だ」


「ウインは普通の人間とは違う。だが、ウォールも人の強さを外れる兆しが見えるのう。ぜひ今度手合わせを願いたいものじゃ」


「所で戦の状況はどうだ?」

「大きい城を3つ落とせば、勝ちは決まるじゃろう」


「次落とす城はどこだ?」

「ほれ、あの山に見える城じゃ」

「行って来る」


 俺は走って向かった。

 タケルが『待つのじゃ』と言っていたが無視した。



 城に向かうと、兵士が居るが……余裕に見える。


 俺は門兵を一瞬で斬り倒し、扉を蹴り壊して中に進んだ。

 かかって来る敵をすべて倒し、奥に進む。


 3人の男が姿を現した。

 3人とも顔が似ている。

 兄弟か?


「我ら3兄弟に一人で挑むとは、身の程を知れ!」

「後悔させてやろう」


 3人が俺を囲んでタイミングを合わせて斬りかかってきた。

 俺は3人の男をクサナギで斬り倒して奥に進む。


 上の階には太った男が居て、俺を見て驚く。


「き、貴様!何者じゃ!マロをどうする気じゃ!月光3兄弟はどうした!」


 そういえば黒い服を着て刀を持った男が居たな。

 倒したけど。


「よ、寄るでない!みなであえーい!」


 俺はかかってきた男を倒す。

 太った男は部屋の隅に逃げる。


「来るでない!来るでない!」


 そして城の上から屋根を伝って逃げようとし、転んで落ちた。


「……」


 終わったか?

 戻ろう。




 ◇




 俺は戻って事情を説明するとタケルに驚かれた。


「ま、まさか月光3兄弟を倒しおったか!あの者どもは連携攻撃でレベル以上の強さを誇るのじゃ」

「まったくです。俺も危ない目に会いました」


「上まで行ったけど、強い奴は居なかった。留守だったんじゃないか?」

「そんなわけが無かろう。城を攻められておるこの今、出かけるわけが無いわい」


「俺が、確認してきます」

「そうじゃのう」


 ウォールが城に向かって行った。



 


「月光3兄弟は、亡くなっていました。刀で斬られ、一撃で殺されています」

「ウイン、お主黒ずくめの3人の刀を持った奴と闘わんかったか?」

「兄弟が居たけどすぐ倒したぞ」


「それじゃ!それが月光3兄弟じゃ!城を占拠する!すぐに向かう!」




 この調子で、残り2つの城も制圧し、本土の勝利が確定した。

 マスコミギルドはヘイトが真の支配者だったらしく、大した抵抗も見せず組織は潰された。


 アーサー王国やディアブロ王国へのプロパガンダも今まであった様だが、皆信じなかった。

 情報操作への対抗手段はマスコミを信じすぎず真実を知る事だった。


 俺はタケルと話をする。


「あっけなかったな」


 マスコミギルドも城も簡単にケリがついた。


「ウインが居たからじゃ。ヘイトをあらかじめ倒せておったのも、強敵を難なく打ち取ったのもウインじゃ。本当に人間離れしてきおったな」


「そう言われてもレベルが上がっているわけじゃないし、強くなっている実感はないぞ」

「じゃがのう、ベリーがもし神なら、ウインは神を使役しておる事になる。神を使役できる者は同じ神しかおらん」


 俺には心当たりがあった。

 カムイの記憶が俺の中にある。

 カムイはその当時から神と言われていた。

 俺は途中で考えを中断する。


 今は名前持ちだ。


 残りは南西島か。













 

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