南西島の戦い

 タケルの軍と一緒に俺は南西島に向かった。

 南西島はゴーレムとオニグモを失い、そこにゴブリンの部隊が襲撃をかけてきたことで、一気に領地の経営は傾いた。


 そしてゴブリンに城を制圧されたとの情報が入る。

 南西島に着くと、俺達はゴブリンから皆を守る者として好意的に受け入れられた。


 早速城を包囲するが、違和感があった。


「なあ、抵抗が弱すぎないか?」

「そうですわね。かつてのゴブリンなら、激しい攻撃があったはずですわ」

「ゴブリンの数が少なすぎるんだよ。それに質も悪い」

「だが、ゴブリンは居るからな。放置するわけにもいかない」

「攻めて見ねば分からんのう。罠がある可能性もある。なんにせよ攻め手側は不利じゃ」




 城を攻めると、あっさりと進み、すぐにグラブが出て来た。


「グラブ!バグズとブレイブはどうした?」

「こたえる、ひつようは、ない」


 おかしい。

 2人の気配もない。

 あいつらは隠れる様なスキルを持っていなかったはず。

 途中で覚えたか?


 グラブも油断できない。

 こいつから頭の良さを感じる。

 全力で倒す。

 出し惜しみはしない。


「皆!離れていてくれ!」


 俺は全力でグラブに近づく。


「メギド!」


 一瞬の業火でグラブが焼かれる。

 グラブが倒れ、黒い光に包まれる。

 二段階目に移行した。


「メギド!」


 グラブが倒れる。


「……え?どういう事だ!?」


「ウインが強すぎるんじゃ」

「いや、バグズもブレイブも居ない!おかしい」


「しばらく城を確認する。何か罠があるかもしれん」

「そうだな」




 結果、罠などは見つからなかった。

 だが、バグズとブレイブの情報がアーサー王国から入った。

 バグズとブレイブを合わせたような魔力の反応がアーサー王国の東、魔の森で目撃されたのだ。




 ◇




【ブレイブ視点】


 南西島をゴブリンが制圧してすぐの事。

 眠りっぱなしだったバグズが目覚めた。


 バグズが目覚めると、人が変わったようになっていた。


「ブレイブ、俺のカケラの癖に弱すぎる、いや、言っても無駄か」

「はあ?何を言っている?」


「いや、いい。まだ早いが仕方ない」

「だから何を言、ている?」


 バグズが俺を剣で斬る。


「は?」

 

 俺の首と胴が離れた。


 そして黒い光をバグズが浴びるように吸収していく。


 気が付くと俺はバグズと一体化していた。

 元に戻ったと言った方がしっくりくる。

 神であった頃の、シュテンキであった頃の記憶がよみがえる。

 

 グラブが震える。


「バグズ、いったいおまえは、なにものだ?しかもそのすがたはにんげんだ!」

「俺か?俺は神、シュテンキだ」


「なぜブレイブをころした?いや、なぜゆうごうできた?」

「それは、ブレイブとバグズが元は俺の魂のカケラだったからだ」

「いみが、わからない」


「神の事を理解してもらおうとは思わん。俺は今からシュテンキだ。バグズでもブレイブでもない」

「おれも、ころすか?」


「は!なぜおまえを殺す必要がある?俺はバグズとブレイブの記憶も持っている。お前を殺す必要は無い。俺は眠る」


 グラブはおびえながら眠りにつくシュテンキを見守った。


 

 ◇



「シュテンキ、ウインと本土の者が攻めてきた」


 俺はグラブに起こされた。


「……そうか、まだ眠り足りんが、ここを出る。魔の森まで来るなら、部下にしてやってもいい」

「かんがえて、おく」


「そうか」


 俺は走って魔の森に向かった。




 陸を走り、海の上すら走って魔の森にたどり着いた。


 魔の森の中心で唱える。


「開け、門よ!」


 俺は現れた門の中に入っていった。





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