暗躍のエムル
騒がしくなったせいか街のみんなが集まってきた。
ルナ・ベリー・セイラも集合する。
「なにがあったの?」
「なんというか、エムルがこんなものを作っていたんだ」
俺はベリーに漫画本を差し出す。
「禁書?魔導書かしら?」
一見そう見える。
ベリー・ルナ・セイラが本を覗き込んだ。
「これは、中々に刺激的な内容ですわね」
ベリーとセイラは真っ赤になり、何も言わなくなった。
2人は真っ赤になって可愛い。
2人の純粋さが伝わって来る。
「ウインのその反応、君がドSである何よりの証拠さ。君の本能を解放」
「黙れエムル!エムル黙れ!」
俺はエムルの発言を止める。
「ですが、困りましたわね。空想上の物語と言ってしまえば、エムルの活動を止めることは出来ませんわ。何か証拠が必要です」
そこに斥候が報告に来て敬礼する。
「残念ながら!何一つ!悪事の証拠は発見できませんでした!」
斥候は悔しそうに歯を食いしばった。
エムルが満面の笑みを浮かべる。
その笑顔がむかつく。
「はあ、はあ、さあ、どうするんだい?僕の活動を止める事は出来ないよ。それとも僕にお仕置きをするかい?SMプレイもお互いの同意があれば認められるよ」
「みんな、ご苦労だった。外に出てくれ」
「証拠を見つけられず、申し訳ありません」
「悔しい!本当に悔しいです」
「みんなも外に出てくれ。キャンプファイア!」
俺は本棚にキャンプファイアを使った。
そしてベリーが持っていた本を取り上げ、キャンプファイアの炎に投げ入れた。
「な!君はなんてことをするんだ!君の貴重な写真を収集するためにどれだけの苦労があったと思っているんだい!僕たちは罪を犯していないんだ!アイス!」
エムル、キャンプファイアは消せないんだ。
「外に出る」
俺はエムルを無視して外に出た。
エムルのアジトから煙が上がり、民家は業火に包まれた。
俺は名前持ちにすらキャンプファイアを使ってこなかった。
正確に言えばベアードには使ったが、二段階目に移行する直前で使い、すぐにキャンプファイアの効果は切れている。
だが使う時が来た。
そう感じたのだ。
切り札を皆に晒す。
そして罪を犯していないエムルのアジトを焼き尽くす。
その価値はある!
「横暴だよ!僕たちは何一つ罪を犯していないんだ!ご褒美を要求するよ!僕を押し倒して滅茶苦茶にする賠償が必要なんだ」
「区画整理だ」
「何を、言ってるんだい?」
「速やかに迅速に区画整理を行う必要があった!これは序列第二位の俺の決定だ!異論は一切認めない!」
魔王も俺の意見に乗る。
「うむ、序列第一位として区画整理を実行する!」
エムルは厄介だ。
法律を守った上で悪事を働く。
このやり口はマスコミギルドと同じなのだ。
マスコミギルドは新聞の売り上げと、企業からの献金さえ増えれば国がどうなってもいいと考える。
まるで寄生虫だ。
マスコミギルドは自分は無知なふりをして答えにくい質問をして相手のぼろを引き出し、それを新聞として掲載する。
弱者を装って権力者を引きづり下ろすその姿勢は暴力そのものだ。
弱者が弱い事を盾にして権利を振りかざした瞬間、それは暴力となる。
マスコミギルドは強い癖に弱いふりをして弱者の権利を振りかざす。
自身は防壁の上の安全地帯に居座り、下に居る者に石を投げてなぶり殺しにする。
自身は絶対に矢面に立たず、批判を繰り返し、弱い者ををサンドバックに仕立て上げる。
自身は利益をむさぼり国を衰退させるが、権力者の小さな間違いは絶対に許さない。
賢く、少数派で弱者のふりをするエムルを俺が止めなければいけない。
マスコミギルドのような巨大な組織になる前に俺が止める!
「良くないよ!これは良くない!独裁制になりかねない暴挙なんだ!」
俺は脇に抱えたままのエムルを地面に押し倒す。
エムルに馬乗りになって頭を手で押さえつける。
「問題があるのか?」
「はあ、はあ」
「問題があるのか?」
「ない、よ」
俺はエムルを椅子にして話を続ける。
エムルがおとなしくなった。
「ルナ、この区画をどうするのが良いと思う?スイーツ以外で答えてくれ」
「スイーツ以外なら、やはり孤児院が良いと思いますわ」
「そうだな。孤児院にするか。エムル以外の7人は拘束を解いてくれ。ただし定期的に斥候の監視をつけろ」
「「了解しました!」」
魔王が渋い顔をした。
「く、全員優秀な者達だ。まさかエムルの思想に染まっていたとは!」
「ああ、まさか孤児院のエムリアまでアジトに居るとは」
エムリアが寄ってきた。
「え~。ここは~アジトじゃないよ~。ただの民家だよお」
エムリア、俺達のピリピリした雰囲気をものともせず話に入って来るか。
こいつ、怒られても良いと思ってるんだろうな。
似てるわ、姿だけじゃなく、精神的にもエムルに似ている。
「エムリア、他に拠点はあるのか?」
「もしかして尋問が始まっちゃう?」
期待したように上目遣いで俺を見てくる。
「違うわ!」
こいつら!中々話が進まない。
ルナが真剣な顔をして呟いた。
「キャンプファイア、一日燃え続ける炎。もし、魔物に使えば最強の攻撃になり得ますわね」
ベリーとセイラも考え始める。
「はあ、はあ、ルナも気づいたかい?名前持ちに使って時間を稼ぐことが出来ればそれだけで名前持ちを倒せるよ。もっとも、二段階目に移行する時に効果は消えるけどね」
「名前持ちにキャンプファイアを使って、二段階目になったらまたキャンプファイアを使ったら、2発で名前持ちを倒せるんじゃない?」
「そんなにうまくは行かないだろ?」
キャンプファイアには制約が多い。
魔力の消費が多く、近づかなければ使えない。
相手がオートヒーリングを持っていれば体力を削り切れない場合がある。
更に体力を削れたとしてもすぐに倒せるわけではない。
だが、ピーキーな性能はハマればかなり有効だ。
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