コロシアム祭り
俺は今コロシアムの中央にいる。
ベリーとブレイブ、そしてガーディーも中央に立ち、お互いに睨み合う。
中央にバニーガールの格好をした司会が入ってくる。
「本日のメインイベント!バトルコロシアムを開催します!司会はクロノがお送りします!!」
大歓声が響く。
このコロシアムって収容人数1万人が限界だよな?
15000人くらいいないか?
後ろの通路に段差がつけられ、そこに立ち見のお客さんが密集して見物する。
入場料の収益はかなりのものだろう。
ホープ大臣はほくほくと笑みを浮かべる。
「勇者ブレイブ選手、一言どうぞ」
「ふ、俺は勇者であり選ばれた人間だ。ここで皆は知るだろう。勇者の真の力を。そして前にいるウインとベリー、この2人のメッキは今日この場で剝がれ、口だけだと思い知るだろう。皆は真実を知る。俺は世界を救う勇者にして真の英雄であると!口だけの無能のウインは地面にキスをして気を失う。まあもっとも、ウインが現実を知るのは明日病床のベッドの上だろうがな」
「ありがとうございました」
長い!話が長い!
『一言どうぞ』って言ってるだろ!
そして周りのブーイングが凄い。
勇者ブレイブ、嫌われているぞ。
ブレイブはブーイングに対して「うるさい!黙れ!」とか「お前らは騙されているんだ!目を覚ませ!」と言っている。
散々利用してきた新聞の力で追い詰められている事実を分からないか?
ブレイブは自分に都合よく考えすぎる。
分からないだろうな。
「続いて聖騎士ガーディー選手、一言お願いします」
「む、結果を見ていろ。それがすべてだ」
「あの、もう少しコメントをお願いします」
な!一言じゃない方がいいのか!
何も考えてこなかった!
隣に並ぶベリーを見ると顔が引きつっている。
「……うむ、俺は選ばれた聖騎士だが、ウインは無能だ。今もそれは変わらない。一緒のパーティーを組んでいた時期もあったが足を引っ張られ続けてきた。ウインには現実を見せてやる。そして騙されている観客にも真実を教える」
「……はい、ありがとうございます!」
ブーイングが鳴るが、ブレイブよりは嫌われていないようだ。
やはりブレイブのゴブリン押し付けで人が死んだのはでかい。
ブレイブの嫌われっぷりは異常だ。
「続きまして、炎の剣聖にしてみんなのアイドル!ベリー選手!多めのコメントをお願いします!」
ベリーに向かって主に男の観客から歓声が上がるが、女性ファンもいるようだ。
流石ベリー。
「こ、今回は勝ち抜き戦です。ウインがガーディーとブレイブを倒してバトルはすぐ終わるでしょう。い、以上です」
ベリーの表情が硬い。
でもその表情も可愛いんだよな。
人気が出るのも分かる。
「おーっと!これは実質勝利宣言と受け取ってもよろしいでしょうか?」
「そ、そうです」
「ベリー!君は騙されている!戻ってこい!」
「あー、今はベリー選手にコメントを頂いています。我慢してください」
司会が勇者を黙らせようとするが勇者は聞かない。
勇者は会話をせず、マウントを意地でも取ろうとする癖がある。
プライドの高さが悪い方に向いた性格だ。
話がおかしくなるだろう。
「今回の主役は俺だ!」
「……分かりました。一言どうぞ」
確かにある意味主役だがそう言う事じゃない。
「ウイン、貴様ベリーだけじゃなくルナ王女も騙しているようだが、それも今日で終わりだ!それと魔王国の王女を味方に引き込んだようだが魔王打倒から逃げたお前はデイブックの敵になるだろう!」
魔族への敵意はこの国でしたら駄目なんだ。
ディアブロ王国との交易でこの国は急速に豊かになっている。
両国で種族間の差別を無くする教育が急速に進んでいる今それは悪手だ。
それと観客に魔族が居る。
今までで一番観客が騒がしくなった。
ブレイブ、更に嫌われたか。
ブレイブの発言であまりにも観客側が騒がしくなり、10分程進行が止まった。
「静かにしてくださーい!このままではバトルを進められません!」
まだ観客席が騒がしいが、マシになったタイミングで司会が進行を再開する。
「……はい、続きましてディアブロ王国の飢餓を救い、アーサー王国のドラゴンを殲滅し、ゴブリンを撃退し、両国の懸け橋となり、更に魔の森の薬草集めにも多大な貢献をする事で両国の軍事力を大きく押し上げた真の英雄!私も大好きなあの方からコメントを頂きます!」
また騒がしくなった。
「静かにしてください!」
「真の英雄ウイン選手!長めのコメントをお願いします!出来れば3分以上で」
おま!何無茶ぶりしてるんだ!
3分長いよ!
3分めっちゃ長いよ!
つーか無理。
「みんな、今までデイブックの人間に魔物を押し付けられ、ブレイブのせいで大事な人を失い、怒っている者も居るだろう。しかもガーディーとブレイブはここに来る時に3万のゴブリンをデイブックからこの国になすりつけようとしたゴミだ!」
「違う!俺は嵌められた!デイブックに騙された!」
「デイブックのマスコミギルドのアオールが俺にブレスレットをつけて罠に嵌めた!俺ガーディーは捨て石にされそうになった被害者だ!」
ガーディーとブレイブが俺に詰め寄り、魔道マイクを奪い取ろうとした。
俺はステップを踏んで躱した。
こいつら、俺を潰す時はさんざんマスコミを利用して、自分だけ被害者になるつもりか?
今までマスコミを利用して他の者にも圧力をかけて来たんじゃないのか?
「皆の怒りは分かる。だから俺が殴る。ガーディーもブレイブも今ここで俺がぶん殴ってやる!以上だ!」
「ありがとうございます!それでは一回戦、ウイン選手対ガーディー選手の試合を行います!」
歓声が辺りを包みこむ。
俺とガーディーはリングに残り、他の者は皆離れていく。
俺は口角を釣り上げた。
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