ウインの逆襲

 俺はすぐに呼ばれ、ゴブリンのスタンピードに間に合った。

 前回の反省を糧に情報伝達の速度は劇的に改善されていた。

 ウォールの訓練で斥候兵の質がよくなったのも大きい。


 しかも天気もいい。

 少し暑いくらいだ。

 草原で見渡しも、悪くはないか。

 森よりはましだ。


 俺・ベリー・ルナの他に、エムルも偶然アーサー王国に居た為、4人で3万のゴブリンスタンピードを眺める。


「今回は最初から間に合った。ルナ、後ろに下がってくれ」

「そ、そうですわね。私では足手まといですわ」

 ルナは俯いて後ろに下がった。


「すまない」

「いえ、当然の判断ですわ」

 ルナは後退していく。


「エムル、攻撃魔法を撃ってくれ。ベリーはエムルの近くにいてくれ。俺はエムルが撃った瞬間に横から強襲する」

「分かったよ、ただ、前でふらふらになりながら走っている勇者と聖騎士はどうするんだい?」


「無視だ、邪魔なら魔法に巻き込んでもいい。最悪死んでもいい」

 あいつら、この国で嫌われているのを知らないのか?

 よくここにこれたな。

 殴りたくなってきた。


「いいよ!その目、ぞくぞくするよ!はあ、はあ!」

「始める!俺は移動するぞ」

 俺は気配を消してゴブリンの側面に移動する。


「……ブラックホール!」

 二大最強魔法の一角、ブラックホールをエムルが放った。


「ぐう、何だ!吹き飛ぶ!!」

「俺達を巻き込む気か!」

 ブレイブとガーディーが暴風で吹き飛びながら叫ぶ。

 うるさいが無視する。



 エムルの攻撃の開始とともに、俺は2発のサイクロンを放った。

 更に連続でサイクロンの魔法を連発する。

 そこで確信した。

 雑魚しかいない。


 俺は後退してルナを呼ぶ。

 そして4人で残ったゴブリンを倒していく。

 エムルと俺の魔法攻撃で多くのゴブリンを倒し、しかもゴブリンは走って疲れている。

 作業のようにゴブリンを倒す。


 ブレイブとガーディーは振り返らずに王都に走って行った。

 気配を消していた俺の存在に気づいていないだろう。





「全滅させたわね」

「そうだな」

「なあ、ブレイブとガーディーが王都に向かって走って行ったけど、放置していいか?」


「ホープ大臣が、ウインとブレイブの戦いをコロシアムで見せて入場料を取りたいと思うはずですわ」

「ホープ大臣ってあの頭が良くて、スイーツコロシアムで俺の隣に居た人だよな?」

「そうですわ」


「やりそうだ。入場料を取ってニコニコしてそうだ」

「ふ、ふふふ、そうですわね」

「でも、奴らは1発殴ってやりたいって思いはある。いや、ぼこぼこにしたい。けどそんなにすんなりいくか?」


「分かりませんが、ブレイブとガーディーが王都に着くタイミングで戻った方がいいですわね」


「何日か近くにいる魔物を狩って、それから王都に向かいましょ」

「そうだな。エムル、お前は戻った方がいいだろ?お前姫だし」

 エムル帰れ!


「はあ、はあ、その目、今日のウインは野生がたぎっているよ。僕は戻らなくて大丈夫さ」

「エムルがここまで来る用事なら、きっと大事だと思いますわ」

「エムルは言う事聞かないでしょ!諦めて連れて行くしかないわ」


「仕方ないか。魔物狩りを始めよう」

 俺達は4人で魔物狩りを開始した。





 そして4日後。

「ウイン様、今すぐ全員でお戻りください」

 斥候兵の男が迎えに来た。


「やっぱり!」

「やっぱりですわ!」

「きた、か」

 俺は渋い顔をした。

 怒りが冷めて勇者達と関わるのが面倒になってきている。


「ウイン!ストレスが溜まったら僕を縛るといいよ」


 こうして全員でエムルの発言をスルーしつつアーサー王国の王都に向かった。



 




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