交渉の邪魔者
俺は朝起きてすぐ行動を起こす。
「決めた。魔王に直談判に行こう」
俺はセイラを呼んで魔王への面会を要請した。
◇
「寝不足か。昨日の夜はエムルと楽しめたか?」
「違うわ!エムルが良く分からない話を始めて眠れなくなったんだ!エムルの事なんだけど、チェンジを要求する。セイラを連れてアーサー王国に行きたい」
セイラは顔を赤くしていた。
魔王は流れるような動きで土下座を開始した。
「お願いします。現状維持でお願いします」
思いっきり床に額を擦り付けた。
魔王としての威厳を捨てたなりふり構わない土下座だった。
「ダメだ!土下座して、お願いしますばかり言って押し通すのは良くない!」
俺は魔王の服を思い切り掴んで体を起こさせた。
意地でも土下座を辞めさせてやる!
「グラビティ土下座!!!」
「お前!!重力魔法まで使って土下座を維持するのか!!」
俺はさらに力を入れて魔王を起こそうとする。
レベル900台をなめるなよ!
「く!ハイグラビティ土下座!!!」
俺は完全に引いていた。そこまでする?おかしくね?
どれだけエムルを押し付けたいんだ?
「わ、分かった。とりあえず、アーサー王国の交渉にエムルを連れていく。細かいことはエムルに任せる。これで良いか?」
「分かってもらえて助かる。もしエムルだけで不服なら、セイラを奴隷として差し出そう。セイラもお前を好いているから嫌がりはしないだろう。竜族は強い者に魅かれる」
「ち、ちがいます。違うんです。本当に違うんです!」
セイラは真っ赤になって全力で否定する。
セイラは可愛いな。
素朴な感じで、真っ赤になって可愛い。
「セイラって真っ赤になって可愛いな。じゃ、行ってくる」
俺はエムルをおんぶして走ってアーサー王国に向かう。
「セイラが良かったな」
「何か言ったかい?」
「いや、何でもない」
俺は風を切るように走った。
◇
「なんか、あっという間にアーサー王国の城までついた」
てっきりエムルか俺を見ると警戒されるかと思ったが、事情を説明すると兵士は普通に道を開けた。
ただ、エムルの容姿が目立つ為か、周りからはちらちら見られることが多かった。
「いいことだよ!やはりウインのS属性の前ではみんな膝を折ってこうべを垂れるしかないんだ」
「その言い方!!後俺の力は一切働いてないからな!」
皆が見てるのはお前だ。
エムルの見た目だけは最高なんだがな、見た目だけは。
城の中に入ると、王女が出迎えた。
サクサク進みすぎる。
「エムル様、ウイン様お越しくださりありがとうございます」
礼儀正しく礼をした。
俺は王女のステータスをチェックして礼をした。
エムルは、いつもとは豹変したように、王女っぽく礼を返していた。
ルナ、斥候レベル25、固有スキル魔眼か。
魔眼って何系なんだろう?斥候レベルをカンストさせても細かい所までは分からないんだよな。
固有スキル名が同じでも人によって能力が違ったりする。
王城の庭で、テーブルを囲むように椅子に座りながら、ルナとエムルが話をしていた。それを見ていた周りの兵士がざわつく。
「二人の天使が微笑んでいる」
「二大美少女が揃ったな!」
口々に囁くが、エムルはそういう人間じゃない。
みんな騙されてる。
しかも俺がべた褒めされ続けている。
「ウインはすごいんだよ。ディアブロ王国とアーサー王国の交流を深めて二つの国を救おうとしているんだ」
「素晴らしい方ですね。ウイン様からは、とてつもない力を感じます。やはり英雄の資質を持つ殿方は、隠し切れないオーラをまとってしまうのでしょう」
「そうなんだ。ウインは僕が全力で立ち向かっても全く歯が立たない力を持っているんだ。この前も威圧スキルだけで父である魔王を圧倒したんだ」
「ウイン様は、きっとこの大陸、いえ、世界中に名を轟かせることになるのですわ」
「ルナ、その通りだよ、みんながウインの事を無視できなくなるんだ」
この話、いつまで続くんだろ?
話しているしぐさだけ見れば2人とも姫っぽい。
いや、姫なんだけど、エムルは姫の皮を被った化け物だからな。
◇
「ディアブロ王国とアーサー王国の友好関係の話をしたいんだけど良いかい?」
やっとその話になった。
ルナは決心したように口を開いた。
「実は、今問題が発生しており、対応が出来ない状態なのです。本来ディアブロ王国との会談も王が直接対応するはずでしたが、問題が未解決の為、私が対応することになってしまいましたわ。誠に申し訳ございません」
「問題って?何なんだ?」
「この国にドラゴンの存在が確認されました。今1000の精鋭騎士団による討伐軍が動いていますが、討伐が終わるまでどうかお待ちください」
「ドラゴンか。厄介な魔物だね」
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