絶体絶命!鬼ツナチェイス!
最高幹部、カジキのネギトロと鬼の骸の追撃をかわしながら、転送魔法陣のある場所まで必死に逃げるカイト達、制限をかけられている中で最高幹部の二人は力の片鱗を見せた
「絶対に逃がすもんか」
「見せてやるよ…鬼の戦術殻」
すると骸の右腕の肉がグロテスクに動き出すと腕に巻き付いた鎖や服を巻き込んで変形を始め、やがては厳つい籠手となった
「うぇ…なんてもん見せるんだ…」
「骸!さっきの攻防で役割はわかったな!」
「おう!」
「波の道は変幻自在!後ろをついてくるだけが能じゃねぇ!」
後ろについてきていた波の道は直角に曲がり荷台の屋根の上に位置付けられる、ネギトロは凄まじい速度でその場所へ移動すると、一方的な魔法での攻撃が始まった。
「滝壺!断頭(ギロチン)!」
「全員メタル化!!!攻撃に備えろ!タイヤを守るんだ!」
波の道から分離した水は、まるでギロチン刃のように屋根を切り裂き降り注ぐ、天城と千歳は体を広げてメタル化することでメタル化が使えない人間とタイヤを守っている、しかしメタル化が使えるとはいえハーフエルフの牛尾は少し切られてしまった
「ぐっ…!低級の魔法とは言え侮れない威力でござる…!」
水属性単体での魔法の威力の要は、圧倒的速度と圧縮による質量だ、これにより岩や鉄までもバターのように切り刻むことができるのだ
「芦田さん!大丈夫ですか!」
「あぁ!問題ない、だが…あの鬼の野郎…全然仕掛けてこないな…」
「おそらくはボスとの視覚の共有で私達を見物死てるのでしょう、気分悪いですね…」
その考察通り、骸の視覚はみるくと共有されており、常に司令を受けながら骸は空を舞っていた
「どうよお嬢」
「悪くないですね〜そのままタイミングを伺ってください」
「了解!」
「ホッパー殿!今なら奴を撃ち落とせるかも…」
「駄目だ」
「なぜでござる!」
「村岡リーダーに言われただろ、交戦はするな、だから俺たちは専守防衛に努める!」
戦闘に参加してこないというだけで対象を攻撃するのは危険だ、不用意に相手の手数を増やす事になる上に相手は最高幹部、芦田と自然型姉妹という強力な戦力がいるとはいえ荷が重い。
「それに…奴の言ってた…"戦術殻"…不穏だ…」
すると、姉妹がトラックの荷台入り口に立つと、体を気体化させる、その行為の意味に気付いた芦田は5人をコンテナの奥に避難させ、耐熱シートを張った
「何が始まるんです?」
「大技さ、いいかお前ら…もしこの空間に煙が入ってきても絶対に吸うなよ、呼吸器がズタボロに焼ききれるぞ」
「行くよ姉さん!」
「おう!やれ!千歳!」
「ホワイトアウト!!」
チトセは気体化した体の煙を一気に放出した、すると道路はたちまち真っ白な煙で覆われ、波の道内ですら視界を塞がれた
「なんだ?目くらましか?」
「いいよ千歳…波の道を捉えた…喰らえマグロ野郎!!千歳の煙幕との合せ技!ブラックスモーカー!!!」
「来るぞ!」
千歳の煙と混じっていたのは天城の蒸気、波の道に飲み込まれた蒸気はまたたく間に高温になり、波の道の水を沸騰させた
「あっつ!!」
その熱さに驚いたネギトロはたまらず飛び出て道路に落下、大きく距離を離すことができた
「お嬢!落ちた!」
「マグロの煮込みって聞いたことないですねぇ」
「畜生め…驚かせやがって…まだ沸騰してやがる…」
波の道を使用不可にしたことで距離を離し大きく足止めすることができた、さらに波の道は追尾を止めてその場に留まったのだ、しかし問題はまだ骸が追ってきていると言うことだ
「ネギトロさんはもう無理だろうから俺が行く」
「は〜い」
ビルから鎖付きの剣の片割れを離して収納すると、真っ逆さまにトラックへ落下する
「来たぞ!」
足をメタル化して備える芦田に対して骸は籠手の手甲部分を展開した、その中に玉のようなものがはめられており、その玉が緑色に光ると手に両薙刀が握られていた
「お前は確か嵐の魔法を使っていたな!風の属性同士力比べと行こうか!」
「いいだろう…!」
芦田はメタル化を解くとトラックを飛び出して空中に飛び上がった、骸も籠手に魔力を貯めている
「さっきのカジキ野郎みたいに道路に埋めてやる!」
「ははっ!やってみろ!」
「喰らえ!廻転ダウンバースト!!」
空中で回転し遠心力のエネルギーを貯め、その勢いで空気に踵落としを打ち込むと、その空間が実体があるかのように歪み、そのまま足を下ろしきって空間を蹴り破る、すると蹴り破った空間にあった空気の塊が強烈な突風として骸に襲いかかった
「うお!だがまだ風の神に比べればぬるいな!行くぞ戦術殻・風!」
突風が直撃したが建物に刺さった鎖が体を繋ぎ止めて地面への激突を防いだ、そして骸は片手で薙刀を回すとそれを芦田へ剝けた
「烈風!木枯らし!!」
その回転から生じたのは極太の竜巻、芦田はその中に飲み込まれてしまった
「芦田さん!」
「ぐおおお!なんだこの竜巻は!」
まるでミキサーの中にいるような感覚、無数の風の刃が芦田を切り裂く、もし全身メタル化が少しでも遅れていれば体はズタボロにされていただろう、そして竜巻が止むと芦田は荷台の天上へ降りた
「ぐ…全身メタル化は体力を使い過ぎる…もう飛べない…」
「隙あり!」
「な!?ぶへ!」
それはただの殴打だった、しかし鬼の籠手による鬼の筋力での殴打、いくら代償を支払った手練の魔人といえど、消耗した芦田の意識を刈り取るのは容易だった、芦田は天上を突き破り荷台の床にめり込んだ
「うわぁぁ!芦田さんが…!やられた…!」
ドン!と社内に音が響いた
それは骸が天上の穴から荷台に侵入した音だった
「へへ…どんなもんだい」
「みんな!あたし達の後ろに!」
「どうした、足が震えてるぜ」
「メタル化が使えないあんたなんか…」
「て、思うじゃん?」
「なにを…がは!?」
「姉さん!ぐっ…!」
後輩達を守ろうと立ちはだかった姉妹は骸の腹部への鉄拳を喰らい床にへたれこんだ、半気体化していた自然型の魔人をなぜメタル化もせずに触れられたのかは骸自ら説明する
「俺の手足や角は永いメタル化によって体に同化、染み付いている!俺は常に魔法反射装甲が発動しているのさ!」
「そんなの……ありかよ……」
「心配するな、殺すなと言われている…だが無事では帰さねぇぜ」
「くっ…!」
6人は覚悟を決めて構えをとる、正直勝てる気もしないしめちゃくちゃ怖い、だが身を呈して自分たちを守ってくれた芦田や天城と千歳に申し訳がたたない、そして先陣を切ったのはカイトだった
「うおおおお!!」
「おっと!お前にはちょっと用がある!」
「ぐあ!?」
飛びかかった所を首を捕まれ宙吊りになる、足をバタつかせて抵抗するが、目の前の鬼のクソ野郎は呑気に空間の魔法陣を漁ってやがる、この隙きを見逃すまいと槍でついたり鉄拳で殴ったり魔法をぶつけたりしたが、生身なのに全く効果がない
「あった!よ〜し!覚悟しろよ!」
「こんのぉぉぉ!!」
「ん?」
カイトは骸の胸元に右腕を突き出す、その手の中には最終兵器「爆発」属性のエネルギー弾が握られていた
「吹っ飛べ!!!」
「お!?」
バオン!!
骸は衝撃で真後ろに吹っ飛んだ、その衝撃でカイトは開放され、その反動でカイトも吹っ飛んだが仲間達が支えてくれた。
カイトのこの作戦は賭けだった、万が一骸が手を離さなければカイトも一緒に吹っ飛ぶことになり命はなかった、カイトの幸運が呼んだ成功である
「この!」
「何!?(何か投げた…!早い…!避けられない!)」
地面にこすりつけられる刹那、骸は手に持っていた"何か"を投げつける、弾丸並みのその投擲物はカイトの胸部へ直撃した
「ぐあっ!!」
「カイト!」
「カイト殿!」
「当たりぃ!ごば!何だ!?」
しかし骸は見落としていたカイトに直撃する前に放たれていた投擲物に
それは意識が途切れる寸前で、嵐の加速魔法が付与された一本の槍であった
「ふぅぅ……よし!」
「何だこの槍は…こんな槍刺さったところで何の問題も……!?」
飛び上がってトラックを追跡しようとしたが体がうまく動かない、何事かと思い突き刺さった槍を調べてみると、なんと槍には影縫いの呪印が刻まれており、引き抜こうにも角度や展開された返しの影響で骸はその場に釘付けにされてしまったのだ
「へぇ〜〜よく考えるもんだ…」
骸はそう一言言うとその場に大の字に寝転んだ、もう追撃は無駄だと思ったのだろう
「だがお嬢……言われた通りにはしたぜ…」
「ふふふ…よくできました、さぁ…これからどうなるか楽しみですねぇ…ふふふふ……」
制限をかけられていたとは言え最高幹部二人の追撃から逃げ切り、作戦は無事成功、カイトたちは見事M&Co.のデータを盗み出すことに成功した、レジスタンスはまた一歩有利になった、そしてカイト達が無事人間界に帰れるのか、それはまだ誰にもわからない
ドクン…
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