その名はみるく

前回のあらすじ

M&Co.(ミルクカンパニー)に潜入したレジスタンスのカイト、ヒロキ、牛尾、沢渡、田所だったが、最高幹部のゆうに正体がバレてしまい拘束されてしまった。


「あははは!変な顔!」


硬直した顔を無邪気に笑うこの美女はこの組織のボスにして魔界最強の人物、通称「みるく」


「持ち物を調べた所このようなものが出てきました」


「ほぉ〜ん、とするとあなた達はレジスタンスの調査員と言う訳ですか…」


「お嬢…こいつらどうしてやろうか?」


ガスマスクを被った男がみるくに問いかける、マスクから突き出た角から見てこいつが右腕の「骸」だろう。


「とりあえず…ゆうちゃん!解いてあげて」


「いいんですか?」


「いいのいいの、どうせ抵抗しても問題にならないんやから〜」


そう言われたゆうは「解除」と一言つぶやくと体の強張りは解かれた、そしてついでに変身も解かれてしまった、そしてこのチャンスを逃がすようではレジスタンスではない、皆一斉にみるくに向けて魔法や魔法武器を放った


「硬空!(剣)!」


「火蟲!(雀蜂)!」


「硬空!(拳)!」


「電球エレキテル!」


硬めた空気を発射する硬空(かたぞら)と虫に見立てた火を放つ火蟲(ひむし)、そしてカイトは腕の発射装置から放たれた雷の塊だ、ちなみにヒロキは重量的な問題で装備を持ってきていない


「いきなり攻撃とは行儀が悪いわ〜」


「この…メタル化…!魔法反射装甲!!」


「なぬ!?魔法反射装甲!?」


その魔法を唱えた骸の腕はみるみるうちに黒い光沢を帯び、空いた腕でワームホールを造ると、飛んできた魔法を横殴りに弾きホールの中へ飛ばしてしまったのだ


「なんだこんなもんか」


「聞いたことがないでござる…魔法反射装甲が黒くなるなんて…」


次の瞬間には一瞬のうちに5人の腹に拳を叩き込まれ、膝をついた所を腕に巻かれていた鎖で拘束されてしまった


「解除の命令で変身も解けましたか…ハーフエルフに蟲人にオークに人間二人…」


「くっ…!殺すなら殺せ!その覚悟はできてる!」


「何言ってんだ、死ぬのはまだだよ」


「これからあなた達には知ってることの全てを話してもらいます」


「なん…だと…」


「拷問ってやつかな…」


「正解!」


田所の言葉に答えるみるくの顔はにこやかに笑っていたが、5人にとっては笑い事ではない、組織のトップから受ける拷問はさぞ辛いだろうと考えていると、疑問が生まれた


「あんたら…心が読めるんだろ…?なんでわざわざ拷問なんて…」


「ふふふ…実は心を読むの飽きたんよね…」


「というわけで!いってみよう!」


骸が床に空間魔法の枠型魔法陣を展開すると、その枠内には底が見えない程の水に満たされていた、すると骸は一旦鎖を外すと沢渡を覗く四人を背中から蹴って前のめりににして肩周りだけに鎖を巻いて沢渡は腕を厳重に拘束された


「お嬢、命令を」


「おほん…では、蟲人以外の皆さん、皆さんはこれから絶対に口呼吸を絶やさないでください、絶対に息を止めたり鼻で呼吸はしてはいけません」


その命令を受けた四人は口でしか呼吸ができなくなった、若干の違和感はあるが苦しさはない、しかし出した水になんの意味も無いはずはなく、覚悟を決めると横に鬼がついて一言言った


「簡単に死ぬなよ」


そう言うと四人の背中を薙ぎ払うように蹴り、目の前の水槽に顔から突っ込まされた、鼻に水が入りツンとした痛みを感じたが次の瞬間には地獄の苦しみを味わう事になった


「ぐぉご!?」


"絶えず口呼吸を続けろ"その命令をかけられているせいで水中でも口呼吸を続けてしまい、空気を吸うように大量の水を無理やり飲み込んでしまったのだ、空気を吸うつもりで吸っている為に気管に侵入する水の量も半端ではない


「お、おい!みんな!どうしたんだ!」


「仲間を救いたきゃこれを咥えな」


沢渡のすぐ下に設置されたのは鎖の一部、四人を拘束している鎖のおそらく一部だろう、よく見ると吊るされている鎖は天井に設置された穴から伸びている


「これを引っ張れば仲間は引き上げられる、まぁ最も?四人分の体重を顎の力で引き上げられたらの話だがな」


「ちくしょう!なめんな!あが!」


沢渡は床の鎖に噛みつくと顎と背筋に渾身の力を込めて引っ張り、四人を水から引き上げた、しかし四人の体制は前のめりになるようになっており、力も抜けているため更に重く感じる


「がっほっほ…はぁーはぁー…げっほ!」


「ゔぐ…げぇぇ…はぁー…はぁー…」


カイトや牛尾も口呼吸を続けながら咳き込み水を吐き出している、既に満身創痍の四人にみるくは問いかける


「答える気になりました?」


「はぁー…冗談…!!」


「ふぅん…」


「ぎぎぎ…!」(なんて硬い鎖だ…歯が…!砕けそうだ!)


「はぁー…!沢渡くん!」


「この野郎!はぁー…!なんて沢渡だけ…!」


「蟲人はいざとなったら腹部の気門で呼吸をする、これは生態的に行われる仕様だから命令では阻止できないんだよ、だからこうしてお前らを支える役割を負ってくれてるんだよ」


真ん中で鬼神の表情で鎖に噛みつく沢渡に四人は「無理をするな!」「鎖を離せ!」などこの行為をやめさせようとするが、鎖を噛む力は更に強まりみるく達を睨みつける


「ふぅぅぅぅぅ…!!」


「怖いわ〜そんなに睨まんといてや〜」


「ぐぅぅぅ…あが!?」バキッ!


「うわ!?」ザバッ!


「しまった!」


怒りで鎖を強く噛みすぎてしまい、歯が砕けてしまった、その痛みに悶絶していると水槽から水面から出る気泡の音と痙攣で鎖がガチガチと鳴る音が聞こえる、その音を聞いてすぐに鎖に噛みつくが折れた歯の神経に鎖が触れたり引っ張ろうとすると残った前歯が更に折れそうになって激痛が走る


「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」


「あ、上げた」


目からは血涙、鼻と口からも出血、既に沢渡の体は限界を超えていた、歯茎を食いしばり鎖を舌で絡め取り、首の血管が切れんばかりに力を込めた


「がはぁ!沢渡殿!はぁー!もう止めるでござる!」


「ふうへぇぇぇ!!」


「もう…!やめろ沢渡…!死んじまうぞ…!」


「はまうぼんが!」(構うもんか!)


「ほえはち…ひんううあほうが!!」(俺達…親友だろうが!!)


「沢渡…」


「ゔゔ!」バキッ


だが最後の要だった前歯も全て持っていかれ、四人は再び水の中へ、そして沢渡は歯のない神経がむき出しの口で鎖を掴もうとするが、鎖は血糊でヌルヌルになりとても歯無しの口では持ち上げられなかった、そして窮地に陥った沢渡にゴキブリの魔人の力が手を貸した


「お?そこに気付いたか」


「ギギギ…」


鎖をはみ、下顎を下にして吊るすように持ち上げる、当然今にも頬が裂けて関節が外れそうだが仲間の命に比べればこんなのたいした事無いと言うような表情を浮かべた


「なんと酷い…」


「俺達より…!沢渡のほうがよっぽど…!」


「言う気になりましたか?」


「……ねぇ!」


「うん?」


「「「「言うわけねぇだろ!クソ女!!」」」」


みるくの問いに四人は一斉にそう答えた


「この野郎共…あ!!」


「??」


何かを思いついた様な骸がみるくの耳元で企みを話す、するとみるくは怪しい笑みを浮かべて沢渡に話しかけた


「蟲人さん!お仲間の人達…助けたいですよね?」


「あ…あはひまえは!」


「なら…取引しません?あなたがどこから来たのか教えてくれたら…あなた達をこの拷問から開放してあげてもいいですよ?」


「な!?」


その取引に対して四人の反応は「ふざけるな!」「死んでも答えるか!」など反抗的だったが、沢渡の心は揺れていた


(ほ…本当に…喋れば…解放してくれるのか…?)


「あたしか次の判断を下だす前にその鎖を離したら、骸さんが取って皆の拘束を解いてくれます、でも離さなかったなら…わかりますね?」


沢渡は仲間を助けるために大怪我を負っている、その沢渡に"仲間の為に"この取引を持ちかけているのだ


「う…うぅぅぅぅ…」


「なら…もう飽きたし…全員始末しますか…」


その言葉が、沢渡の心を折った


「げはぁ!いいばず!だがら!だずげで!!」


「取引成立やね♪」


その言葉を言い終えると沢渡の意識は闇に落ちた、闇に落ちる寸前、開放された仲間達を見て緊張の糸が切れたのだ


(みんな…ごめん…お前らの事…見捨てられなくて…)


「げっは!はぁー…!はぁー…!」


「あ、もう普通に呼吸してもいいですよ〜」


命令が解かれて体の自由が効く、だが水を飲みすぎた影響か意識が朦朧とする、一刻も早く沢渡を手当しなければいけないというのに意識が落ちていく、と思ったが背中に何かを刺された様な痛みを受けて飛び起きる


「いってぇぇ!何しやがる!」


「何って…世界樹のポーションですよ…」


「ここでお前らを見殺しにしたら契約に反するからな」


それを刺された他の牛尾や田所、ヒロキ次々に生気を取り戻していった、そして重傷の沢渡にみるくが近づく


「何する気だ…」


「よいしょっと」


みるくはその場に正座すると太ももに沢渡の頭を乗せて膝枕をすると、両手をかざすと手に宿った優しい緑色の光が沢渡の傷をみるみる癒やしていった


「世界樹の癒やし(ユグドラシルヒール)」


「歯も全部生えちまった…」


「んん…俺は…」


「おはよ〜」


「うわぁぁ!!」


敵のボスに膝枕されていた沢渡は瞬時に意識が覚醒し、仲間のもとへ駆け寄った


「はぁ…はぁ…お前ら無事か…」


「沢渡!ありがとう!」


「沢渡くん!まさか君が僕達をあんなに慕ってくれていたなんて!」


「見直したぜ…」


「貴殿は一生の恩人でござる!」


仲間の無事を祝い抱き合う、だがそこに水を差す様に骸が5人を呼びつける


「おい!いつまでもちちくりあってんな!契約はまだ終わってねぇんだ!」


「そう、あなた達を助けたのも契約、早くあなた達が来た場所を言いなさい」


「あ、あぁ…」


魔界にはルールがある、それは魔人間での契約は絶対的な拘束力を持ち、もし無下にした場合は地獄の使いによって冥界監獄へ連れ去られてしまい、戸籍上から何もかもから自分の存在をなかった物にされてしまうのだ 


「俺達が来た場所は…清掃業者の本社から東に2キロ離れた廃工場の魔法陣だ…」


「……はい、わかりました、みるくさん、これで契約は果たされました…どうしますか?」


「う〜ん…はいどうぞと帰すわけにもいかんし…かと言って始末するのはもったいないし…そうや!」


何かを閃いたみるくは魔法陣を開くと、その魔法陣に向かって喋り始めた


「みなさ〜んよく聞いてくださ〜い!これから社内に5人の侵入者を解き放ちま〜す!もし、始末できた人には…金一封と休暇を与えますよ〜!」


「ど、どういうつもりだ!」


「簡単な話ですよ、この摩天楼から逃げ切ればあなた達を見逃してあげます、社員は摩天楼から出られないようにしておきます…でも、摩天楼から出たら次は最高幹部数人を追撃させますから…そこは頑張って下さいね」


「くっそ…!」


「カイト殿!急ぐでござる!」


一方摩天楼社内では、金一封と休暇を求めて社員達が血眼で5人の侵入者を捜していた

そしてその中に二人、より熱心に探す二人の魔人、藤原と吉田がいた


「金一封!それさえありゃ久しぶりに牛肉が食えるぜ!」


「夜は食べ放題だ!」


「ちょっと待て!」


「「!?」」


廊下を疾走して所を聞き覚えのある声で呼び止められる、反射的に体が固まり声のする方へ顔を向けると、二人の上司である炎の自然型魔人、焔がたたずんでいた


「この忙しい時間に何処へ行くつもりだ?」


「部長!侵入者ですよ侵入者!始末すれば金一封と休暇が…」


「それがどうした!働け!」


「ひぃぃぃ!すいません!」


感情が高ぶり体の炎が燃え上がるのを見て反射的に謝罪する吉田、しかし焔の手には見覚えのないジュラルミンのケースが握られていた


「あの部長…それは…」


「あぁ…お前らの新しい仕事だ…これをスラムで捌いてこい」


「っ!これ薬じゃないッスか!ヤクブーツはやめろ!」


「裏稼業なめんな!とっとと行ってこいぼんくら共!」


「はい!ごめんなさい!」


荷物を受け取りエレベーターへ乗り込む、二人は今日もスラム街へ行くのだ


「焔部長…外面は良いんだよな…」


「俺達だけには厳しいよな…美人だから全然苦じゃないけど…」


エレベーターを降りて出入り口へ向かう二人、その背中は少しだけ寂しそうだった


ドン!!!


「なんだ!?」


普段政情に使われた事を見たことがないサボり場と化した非常階段の分厚い扉が爆発して吹っ飛んできた、幸いメタル化が間に合い吉田を庇って扉を受けたが、メタル化の練度が上がっていなかったら危なかっただろう、そして煙の中から飛び出してきたのは3人の魔人と二人の人間、そして大量の社員だった、そしてその中に見覚えのある人間が一人


「「アイツだ!!!!!」」


アレが例の侵入者だと気付いた時にはもう遅かった、過去の出来事を思い出し頭に血が登った藤原は、大切な商売道具の入ったケースを力の限りぶん投げたのだ


「バカ!何てことしやがる!!」


「あ!しまった!」


強靭な腕力から放たれたケースは真っ直ぐ人間に飛んでいったが、そこに巨体のメタル化したオークが立ちはだかりケースの直撃を防いだのだ


「くっそ!」


「逃がしゃしねぇぞ!」


「な!?あいつら何でここに!?」


「何だ知り合いか!」


「ちょっとな…」


出入り口に真っ直ぐ走っているが距離的にはあの二人のほうが近い、奴らは頭は回らないが殴り合い等の接近戦に関しては厄介だ

すると後ろからの攻撃をさばいていた沢渡と先鋒のカイトが前に出る


「ちょっとの間任せた!」


「そこをどけ!」


「そうは問屋が卸さねぇ!メタル化ぁぁ!!」


「蜂の巣にしてやる!」


以前戦った時より遥かに成長している、4本腕の魔人のメタル化の光沢は鈍くなり六つ目の魔人はすべての目からビームを出せるようになってた、だがこっちだって新たな武器と、訓練を積み更に強くなっているのだ


「火脚!(ひきゃく)」


「エレクトロ!」


沢渡は低く構えて全身に炎を纏わせカイトは雷の属性を籠手に貯める、そしてゴキブリの全力のスタートダッシュの爆発力で4本腕の魔人に突進し、ビームを交わして懐に潜り込む


「火炎剛気(ヒートローチ)!!」


「エレクトロアッパー!」


「ぐはぁっ!?」


「あがががが!」


藤原は灼熱の鉄塊が激突したかのような衝撃に襲われ吉田は電撃の拳を頭部に受けた、お互い一撃で意識を刈り取られ、侵入者5人の逃走を許し、摩天楼からも脱出されてしまった


「よし…!脱出だ…!」ドン!


無事?摩天楼から脱出したヒロキが合図の煙幕を打ち上げると、けたたましいエンジン音をふかして大型のトラックが走ってきた、そのコンテナの扉は開いており、そこから一人の人間が叫んでいた


「カイトぉぉぉ!無事かぁぁ!!」


「アスカ!」


「早く乗り込め!」

 

トラックを止めている暇はない、5人は走行中のトラックに飛び乗り摩天楼を後にした

その摩天楼の最上階、みるくはそのトラックを見抜くと、魔法陣で最高幹部の一人に命令を下した


「骸さんも行ってきなさい」


「なんか縛る?」


「う〜ん…じやぁ収納空間へのアクセス以外魔法は禁止で!」


「了解!」


そして骸は遥かに上層の階から飛び降りた


車の中ではアスカと同行していた自然型の魔人である天城と千歳が5人の生還を喜んでいた、すると助手席から顔なじみの魔人が顔を覗かせる


「芦田さん!」


「よぉ!よく生きて帰ってきたな!」


「来てくれたんですね!」


「あぁ、だがまだ安心するな、あいつらが簡単に帰すわけがないからな」


「そうだった…!みるくが言うには、何人かの最高幹部がこのトラックを追撃するって!」


「それを早く言え!!ツヨシさん!!」


「はい!道路交通法無視で行きますよ!!」 


そう言ってアクセルを踏み込むと、まるで洋画のカーチェイスのようなスピードで走り出すトラックの慣性で足を取られ体制を崩した

すると荷台の小窓から後ろを覗いていた天城が後ろの状況を叫んだ


「くっ…!後方から波の道(ウェーブロード)の発生を確認!カジキの魔人「ねぎトロ」と思われます!」


「もう追いつかれたか…」


波の道は既に荷台の目と鼻の先の距離にある、しかし接触してこない所を見るに、みるくに何かしらの制限をかけられているのだろう、するとその水流に黒い影が一つ、急激に迫ってきている

カジキマグロの魔人、ネギトロである


「あぁ鬱陶しい!本来ならこんなトラックくらいすぐにでも貫通するのによ!」


「はっ!難儀だな!ネギトロさんよぉ!」


ネギトロに気を取られていると、両手に持った鎖に繋がれた双剣の片割れをビルに突き刺し某蜘蛛男のようにビルとビルの間を舞う鬼が現れる


「げっ!骸まで来やがった!」


「ネギトロさん!あんたは何を制限された!」


「武器と低級水属性以外の魔法!」


「そりゃキツイ!はは!なら俺から仕掛けるぞ!」


骸は空中に身を投げ出すと片腕の鎖をジャラジャラと手元で振り回し高速回転かせる、そして十分に遠心力が高まったタイミングで剣を投げた


「来るぞ!衝撃に備えろ!」


そう叫ぶと芦田は足にメタル化を集中させ、更にレベルの高い風の上位互換、嵐の加速魔法をかけて飛んできた片割れを蹴り飛ばした


「ぐぅぅ…あんな不安定な状況からの投げなのになんて重い剣だ…」


「ありゃ、弾かれた」


鎖を巻き戻して手元に剣を帰還させる、骸は再び鎖によって移動を始めると次に仕掛けたのはネギトロだった


「渦潮・槍!!」


波の道から切り離された水の槍がトラックを襲う、だがこのトラックには同じく水属性の自然型の魔人である天城と千歳が同乗している、天城は自身を中心とした一定範囲に魔法陣を敷くと、その中に入った水の槍はたちどころに水の魔素に変換され吸収された


「天城さん!」


「みんな大丈夫だよ…最高幹部は怖いけど…あたしがみんなを守るから!」


「私も…!」


二人とも体が震えている、だが過去瀕死に追いやられた最高幹部を目の前に立ち向かっている、その姿に奮起され痛む体に鞭をうち5人の男達と一人の少女も立ち上がる

その姿を見たネギトロは面倒そうに眉を歪ませ骸は面白そうにマスクの奥の目を細める


「そんなに自信があるなら…相手してやる…絶対に逃がすもんか…」


「見せてやるよ…鬼の戦術殻を!」


大気が歪んで見える程の闘気と殺意、しかしカイトは不思議とあまり恐怖を感じていなかった、ここには頼れる仲間達がいる、少年達は立ち向かった。

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