敵陣潜入

前回のあらすじ、バカ5人覗きで捕まる。


バカ5人とレジスタンスのリーダー村岡、そしてバカイトの相棒アスカと霧の三姉妹の二人が巨大組織XOXO M&Co.に潜入する為の作戦会議を始めた。


「作戦会議と言ってもこれはほぼ打ち合わせみたいなもんだ、明後日の9時からMCo.は清掃業者に摩天楼の全体清掃を依頼している、この日は多くの業者が中に入れるからお前らは業者に変装して潜入しろ」


「変身装置が役に立つな」


「いや無理かも」

 

カイトが取り出した変身装置を見て天城は異議を申し立てる。


「これはあくまで魔法の代用品、本物の返信魔法には敵わない」 


「じゃあ…俺とカイトはどうすれば…」


「その点は任せてくれ、俺の変身魔法をスプレー缶に詰めて渡す、俺の変身魔法は持続時間も長いし精度もいいから最高幹部にも気付かれないだろう」


村岡が今回使っているのは摩天楼の大雑把な見取り図だ、普段は精巧な図面や地図を用いるが腕利きの情報屋でも摩天楼の内部は大雑把にしかわからないのだ。


「お前らの仕事場はここ、69階にある情報課と36階にある人事課だ、ここにある管理者のPCにこのハッキングUSBを挿せば1分程で全ての情報を抜き取れる」


「でも…製造業者なんかがPCに近づけるかな…」


「そこはありきたりだが昼休憩を狙え、MCo.は休憩中に仕事をする事を禁止されてるから殆どの社員は食堂か街へ食べに行く、だが各課を束ねる最高幹部は常に摩天楼にいるから気をつけてくれ」


一旦見取り図を退けて分厚い資料を開いて5人に見せた。


「これはこの作戦の要注意人物だ、まず情報課の課長兼副社長のハイエルフ「ゆう」、奴は心を読めるから心も嘘で塗り固めろ、次に人事課長兼専務の「妹好き」太陽に匹敵する超高温を操る自然型の魔人だ、この二人は最高幹部で他にも社内にいるから出くわしても不審な行動は取るな、そして…」


資料をめくっていくと見開きのページに出る、そこにはXOXO M&Co.のボスであり会長の「みるく」の情報が載っていた。


「こいつがボスのみるく、殆ど部屋から出てこないが気まぐれだから行動が読めん、それに奴程の魔法使いなら俺の変身魔法くらい簡単に見破るだろう、護衛に鬼の「骸」が必ず近くにいるし奴自身相当な実力者だ、口酸っぱく言うが摩天楼には多くの最高幹部がいる、死にたくなけりゃ絶対に交戦するな」


5人は息を飲んでその後の説明を受けた、するとカイトはもしも最高幹部との戦闘になった場合の対処法を聞いた。


「外で天城達が待機してる、お前らは全力で逃げて幹部を撒くんだ、それ以外方法はない」


その事について天城がもし骸が追跡してきたらどうするか質問した、骸にはどんな距離も一瞬で詰める空間魔法「無限軌道」がある為車でも逃げ場はない。  

しかしそれについては心配ないと言う風に村岡は答えた。


「大丈夫だ、骸はみるくの許可無しに側を離れられないしみるく自身も面倒くさがって深追いはしないだろうし、他の最高幹部も同じくだ」


「あの…質問いいですか?」


説明が終わった頃にカイトが申し訳無さそうに質問する。


「もしも俺達が捕まったりしたら…」


「その時は流石の強者達でも救出する事はできないから…言い方は悪いが見捨てる事になる」


「はは…そうですよね…」


「作戦は以上だ、5人は当日まで部屋で謹慎だ、飯は誰かに運ばせる…解散!」


5人は肩を落として部屋に戻っていく、その顔に生気はなく負のオーラが漂い何を言わずとも自然と道が空いた、

部屋で謹慎している間も各々が自分の罪を悔い、絶対に生きて帰ることを誓った。

謹慎の日も終盤になり夕飯が届けられた、その内容は山盛りのカレーにハンバーグと目玉焼き、デザートのプリンもついている豪華さだった。


「最後の…晩餐ってやつか…」


「でも絶対生きて帰って、またここのご飯食べようね!」


「あぁ、どんな状況になっても諦めずに行こうぜ!」


しかし3人の食は進んでいなかった、表向きは希望に溢れているように見えるが、内心はどす黒い恐怖に侵食されており、お互いに慰め合わなければやってられない状況だ。

そうしている内に夜はふけ、3人とも床についたが明日の緊張と恐怖で全く眠れない、すると寡黙なヒロキが珍しく口を開いた。


「なぁ…みんな…」


「何…?ヒロキ君…」


「俺の睡眠薬飲むか…?」


「頼む…」


不眠気味のヒロキが処方してもらっている睡眠薬を貰って服用すると、すぐに効果が現れ三人は眠りに落ちた。


…………

……


(また優勝だってよ…)(え…うざ…)

(調子乗りやがって…)(天才は楽に勝てていいね〜)

(あ〜〜〜……)


早く死なないかな〜〜www


「っは!?はぁ…はぁ…」


「大丈夫?カイトくん、凄くうなされてたよ?」


「大丈夫…悪い夢を見ただけだ…」


「きっと…極度のストレスの…せいだろうな…」


「勘弁してくれ…これから命がけの作戦だっていうのに…」


「ほら、早く準備して」


この夢を見るのは久しぶりだった、最近浮世離れした事が多すぎて忘れたつもりだったが、やはりトラウマと言うものはいつまでも付きまとってくるものなのだとカイトは思い知った。


魔人基準の軽い朝食をさっさと腹に押し込み装備を装着すると、地下から出る為の転移魔法陣へ急ぐ、そこには既に牛尾と沢渡に霧の三姉妹の二人とアスカ、そして村岡が待っていた。


「うん、時間通りだな…じゃあ5人にはこれを渡しておく」


そう言って取り出したのはスプレー缶だった、説明では周囲に変身の魔法がかかった煙を撒き、対象と一緒に煙に入る事で変身できるらしい。


「今回は命がけ、潜入する5人は勿論だが回収するお前らも油断するなよ、万が一最高幹部が追ってきた場合は全力で逃げろ、絶対に戦ってはいけないぞ」


「はい!!」


ここにいた村岡以外全員がそう答えると、村岡は自分の仕事場に戻って行った。


「さて、5人は先に魔法陣にはいってて?私達は後から追いかけるから」


そうして魔法陣の中へ入り、転送が始まると5人は光の粒となって魔法陣の中から姿を消した


「ついたか…」


転送先は今まで来た事がない廃工場の中だった、牛尾が端末で目的地すなわち清掃会社の本部の場所を確認すると東に2キロほど先にマークがついているのを確認した


「人間の脚だと遅い、ヒロキ俺に乗れ」


「カイトくんは僕が担いで行くよ」


「ならば、早速出発するでござる」


廃工場を出るとやはりと言うべきか、その移動スピードは凄まじかった、人間とは歩幅も速度も何もかもが違い、特に顕著に出たのは沢渡だった


「やはり陸上昆虫系の魔人は違うでござるな!」


人間一人を抱えて走っているのにあっという間に先へ行ってしまったのだ、残った二人も後を追いかけ目的の会社までたどり着いた


「はぁー…はぁー…げっほげっほ!!」


「無理すんなよな…種族が違うんだから」


「いや…ごほっ…早いに越したことはないでござ…げっほ!」


絞り出す様に答えて時間を確認する、午前5時11分、事前に聞いていた会社から出発する時間にはまだ間に合う、そして運ばれて来た二人と沢渡は牛尾と田所の息が整うのを待ってから会社の中へ侵入した、警備などがほとんど無かった。


「なんて…杜撰な警備だ…監視カメラの数が…少ない…それに…かなり古いぞ…」


そうしてザル警備ながら警戒しつつ社内を探索していると何者かの声が聞こえてきた


「ロッカールーム…?」


「数を確認するでござる」


牛尾が集音の魔法を使い、声の主の人数を確認した


「うむ…ピッタリ5人いるでござる」


「なんて都合がいい…」


「俺に任せてくれないか?」


「頼んだよ、カイトくん」


カイトは左手に装着した篭手を光の魔法にセットし、手を空気を握るような形にすると手の中に光の玉が形成され、野球ボール大の大きさになると、すかさずロッカールームの中へ射出した。


「ん?なんだこりゃ?」


カッ!!


「ぐわっ!?」


「なんだぁぁぁ!?」


光の玉は着弾と同時に強烈な光を放って炸裂した、中にいた5人はその光から逃れようと身を屈めた所に沢渡と田所と牛尾が突入、沢渡が二人の頭を地面に打ちつけ、田所が片腕で一人ずつ持ち上げ天井に突き刺し、牛尾が一人の首を絞め落とした、中にいた5人はわけもわからず気絶させられた為叫び声を上げることも叶わなかった、光の玉が炸裂してから15秒以内の出来事である。


「お…おいおい…顔に…傷はつけてないよな…?」


「俺は心配ないとして、田所…もし傷ついてたら怪しまれるぞ…」


「あ!大変だ…大丈夫ですか!?」


そう言って天井から引っこ抜く、彼ら自身は大丈夫なわけないのだが顔には幸い傷はついてなかった


「よかったぁ〜…」


「さて皆の衆、リーダーから賜った秘密兵器を出すでござる」


牛尾が例のスプレー缶を取り出すと、それに呼応するように四人もスプレー缶を取り出して一斉に辺りに振りまくと、みるみるロッカールームは黒い煙で満たされた


「ぐぉぉ!皆の衆!変身対象から手を離してはいけないでござる!」


「落ち着け牛尾、煙の勢いに圧倒されるな」


あっという間に視界が無くなった為少し取り乱した牛尾をカイトがなだめる

そしてしばらく待つと5人の姿は倒した魔人の姿に変わっており、服の中もしっかりと対象者と同じになっていた


「よし、こいつらをロッカーに入れよう」


気絶した魔人達をロッカーへ押し込めていると、突然壁に備え付けられたベルがけたたましく鳴り響き、スピーカーから怒声にも聞こえる声で指示が飛んできた


「おいごるぁ!遅刻5人組いつまで着替えてる!?てめぇらはどこのお嬢様だ!?さっさと第三倉庫に集合しろ!!」


「まずい!こいつら遅刻してたのか!さっさと片付けるぞ!」


急いで気絶した魔人達にヒロキが睡眠薬を打ってロッカーに閉じ込めて倉庫へ向かう、この睡眠薬を打てば作戦が終わる予定の夕方までは絶対に起きない

急いで倉庫へ向かうとそこには大勢の魔人が整列しており、高台にはスピーカーの声の主らしき鬼人が仁王立ちして睨んでいた、服に刻まれた番号順に並ぶと、鬼人は倉庫に響き渡る怒声で指示を飛ばした。


「いいかてめぇら!今回はかの有名なM&Co.からの依頼だ!くれぐれも会長や幹部達には無礼がないようにしろ!終了!とっととトラックに乗り込め!」


鬼人が高台から降りると魔人達はゾロゾロとトラックに乗り込んでいった、カイト達も魔人達に続いてトラックに乗り込む、しかしトラックはかなり狭く、乗り込むと言うより押し込められたと言ったほうが正しいだろう。


狭くて暑苦しい車内に苦痛を感じていると、老人の魔人がカイト達に話しかけてきた。


「あんさん達、お上は初めてかい?」


「え?お上…?」


「あぁ、摩天楼だからお上だ、この世界にも警察や政府や裁判所なんかもあるが、決定権はあっちが握っとったからの…まぁ…今は一切の関係を切ったと聞くが」


「それで…なんか用ですか?」


「おぉすまんすまん、上は何にも説明してくれんからの、この爺がお上で気を付ける事を言っとこうと思っての」


するとその老人は一つづつ注意事項を話していった。


「まず入っては行けない場所、それはボスのいる最上階ただ一つ、まぁ行く機会はないだろうが、うっかり行ってしまうと命に関わる」


「そこ以外はどこに行っても良いのか?」


「あぁ、処理場でも武器庫でもオフィスでもどこにでも入れたのぉ」


「無用心だあなぁ」


「それよりご老人、なぜ摩天楼にそれほど詳しいのでござるか?」


摩天楼に異様に詳しい事を不信に感じた牛尾が老人に質問を投げかけると、老人はほくそ笑んで小声で話した。


「実はなあんちゃん…わし…むか〜しお上で勤めてたのよ」


「なんだって!?」


その言葉に5人は驚きを隠せなかった、その反応を見て老人はたいそう面白そうに膝を叩いて笑った。


「また爺さんの自慢話だぜ…」


他の魔人達は呆れた様子を見せている、


「ところで、あんさん達…ちいとばかし頼みごとを聞いてくれぬか?」


「なんだ?」


「頼む!儂等と清掃場所変わっとくれ!」


「な、なんだって?!」


老人の突然の申立に困惑していると訳を話し始めた。


「実は清掃場所が情報課でな…そこにいるハイエルフの最高幹部がまぁ恐ろしいんだわ」


すると同じ班と思わしき魔人も変わってほしい旨を伝えた。


「俺からも頼む、あそこにいると重圧で精神がやられそうだ」


「俺も…」


それを聞いた牛尾は好機を掴んだと思い、快く引き受け、担当場所を記した各階の入場パスを交換した。


「へへ、悪いね」


「いや、いいんでござるよ」


牛尾は心の中で口元を歪ませた、奇跡的に変身元の魔人の清掃場所の一箇所に人事課も含まれていた為、5人は苦労なく侵入することができるようになったのだ


そしてしばらくトラックに揺られているとトラックが停車し、出入口近くにいた魔人がドアを開けると外へ出た、そして外の景色を見たカイトは思わず声を漏らした。


「でか…」


目の前にそびえ立つのは敵の本拠地

【摩天楼】まさに天を突く様な巨大なオフィスビルだ、カイトはふと東京スカイツリーを思い出したが、懐かしむ時間はないようだった。

責任者らしき魔人がフロントで手続きを済ませてきたようで、早速清掃に取り掛かるように指示され、それぞれ散解した。


「まずは人事課に向かうでござる…」


「何事もなく終わればいいんだが…」


エレベーターに乗り、階を移動する一行、するとエレベーターは目的の階に到着する前に止まった。


「ん?なんだお前ら」


「清掃員か?」


「んお!?」


カイトはその顔に見覚えがあった、4本腕の巨漢に目からレーザーを撃つ六つ目の魔人の二人組、カイトとアスカが始めて交戦し撃退した魔人だった、まさかこんなところで出会うと思っていなかった為、変な声が出てしまった。


「どうしたお前ら、早く入らないか」


しばらく硬直していると二人の後ろから熱気と共に低いが、凛々しい女性の声が聞こえた。


「焔部長!?なぜここに!?」


「貴様らがいつまで経っても顔を出さないから来てやったのだよ、後君達…清掃員は作業用エレベーターを使いなさい」


「も、申し訳ないでござる!」


5人はこの魔人の雰囲気を知っていた、存在するだけで周囲に影響を及ぼす程の魔力量、これは自然型…その上かなりの実力者だ、ここで妙に怪しまれてはまずいので、5人はエレベーターを出て作業用エレベーターのある場所へ向かった。


「すいません…」


「いや、構わないよ」


エレベーターの扉が閉まり、3人から離れた所でカイトは口を開いた。


「危なかったな…」


「うむ…確かあの炎の魔人は営業課の幹部、焔…最高幹部の妹でござるよ…」


「戦ってもこっちが不利になるだけの相手だな…逃げる時は極力避けよう」


そして作業用エレベーターに乗り込み、目的の階へたどり着く、清掃員として潜入しているため清掃しながらオフィスへ向かう。


「今の所バレてないようだな…」


「やっばリーダーの変身魔法は凄いぜ…」


そしてオフィスまで進むとカイトが想像するオフィスとは違う景色だった


「誰も…いない?まだ午前中だよな?」


「パソコン類や…道具もある…無人と言うわけでは…ない…らしい…」


魔人の気配は無いが居た形跡はある、平日の午前中でこの光景はカイトには考えられなかった、魔界生まれの三人も困惑してるのを見ると魔界でも無い光景らしい。


「しかしこれはチャンスだ、俺が取ってくるからお前らは掃除してろ」


「頼んだよ沢渡くん…」


無人とはいえ監視カメラは存在する、そのためこのオフィスのPCにハッキングUSBを差し込む仕事はゴキブリの魔人である沢渡が受け持った


(それらしい机発見…椅子が少し焦げてる…)


役職者が座りそうな席を特定しそこのPCにUSBを差し込む


「誰も来てくれるな…」


ハッキングと情報の抜き取りには約一分程かかる、5人は今にも警報が鳴り響くのではと気が気でなかったが、幸いにも何事もなく抜き取りは終了した


「ふぅ…よし、さっさと済ませて次へ急ごう」


そして手早く掃除を済ませようとしたが以外にも手こずった。


「なんだこの部屋の床は…」


「所々焦げてるし床に落ちた食べ物らしきものが焦げついてて取りづらいでござる…!」


「うわ!ゴミ箱の中身が腐ってる!それにカップ麺やコンビニ弁当がこんなに…人事課の人達はどんな生活してるんだ…」


綺麗な外見からは見えない闇を見た気がするが、なんとか掃除を終えてエレベーターへ向かっていると社員用エレベーターからぞろぞろと魔人が出てきた


「うぅぅ…また一日が始まってしまった…」


「2時間しか眠れなかった…」


「いっそ殺してくれ…」


とてつもなく重い空気を漂わせるのはおそらくこの階の社員だろう、疲労困憊で今にも死んでしまいそうな彼らを見ていると、彼らも自分達の存在に気がついた


「お、おい!清掃員だ!きっと俺達のオフィスを掃除してくれたんだ!」


「ありがてぇ…!いつも手がつけられなくてスルーされてる俺達のオフィスを…!」


「な…!?なんて不憫な社員達…!」


去り際に聞いた雄叫びを聞きつつエレベーターへ乗り込み次に向かうは情報課、ボスの右腕が統括する課ということもあり一層警戒してオフィスへ向かった


エレベーター内で到着を待っている田所が話しだした


「そういえばMCo.って昼休憩があるんだよね?もしかしてさっきの社員達は…」


「それはなさそうでござる、現在は11時も終わる頃、入るなら今からでござる、あやつらはおそらく激務の為に小休憩を取っていたと考えるでござるよ、まぁ…そのあとは地獄の労働が待っていそうでござるが…」


「なるほど…じゃあ情報課も簡単に盗めそうだね!」


「…そうだと…いいがな…」


エレベーターが止まり扉が開く、道具を運び出して先程と同じ様に掃除を始める、タイミングが良かったのか社員は既にオフィスか、消えており「ゆう」らしき雰囲気の人物もいない


「よし…」


そうして沢渡がUSBを差し込むと、突如エレベーターの扉が開き、尋常ではない雰囲気を漂わせた美女が出てきた


「…!!(まずい…!なんで戻ってきた!?)」


それはリーダーから教えられた要注意人物の一人、ハイエルフのゆうだった、するとゆうは直進してカイトへ向かってくる、これはまずいと思い覚悟を決めた


「お疲れ様です」


「お、お疲れ様です…」


「今朝うっかりコーヒーをこぼしてしまいまして、サーバーの周辺を入念にお願いできますか?」


「は…はい!承知しました」


「ありがとうございます、でわ私はこれで」


(なんだ?案外良い人だなぁ…)


「あ、それと…"村岡"は元気ですか?」


「!?……あ!しまった!」


「か、カイト殿!」


初対面の対応と人当たりの良さから気が緩んでしまいそのスキを突くかれてしまった、次の瞬間からゆうの雰囲気が変わり、周りに先程と同じような尋常ではないオーラが漂った


「変な感じがしていたけど原因はあなた達でしたか…これは…みるくさんに突き出さねばなりませんね…」


その雰囲気を察してヒロキがオフィスにいる正体がバレたと報告する、しかし抜き取りは既に終わっていた為、窓を割って飛行して逃げようとした時、ゆうが小声のように小さいが重みのある声で呟いた


「止まりなさい」


するとどうだろう、体は指先までピクリとも動かず瞬きもできないほど硬直してしまったのだ、舌も口も動かせず喋ることもできない、というか呼吸もできない


「おっと、呼吸だけはしていいですよ、生命活動に必要な臓器運動も続けてください、そしてそのまま私についてきなさい」


その言葉に反応して呼吸が始まると同時に足も動き出した、そしてエレベーターに乗り込まされるとパネルを操作して最上階へ連れて行かれた


「……!!(なんだ…この…階は…!?)」


「…………!?(ホテルのスイートルームかなんかか!?)」


呼吸はできるが喋ることはできないのに、表情が硬直したまま連れて行かれると大きな扉に遮られた、するとゆうが扉をノックして扉を開けて5人をを部屋に入れた


「みるくさん、連れてきました」


「あはははは!変な顔〜」


「顔固まってんじゃん!」


そこにいたのは目を疑う程の絶世の美女と田所を超す巨漢の鬼、どうやらカイト達は最悪の事態…つまり捕獲された上にボスの目の前に突き出されてしまったのだ

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