脱出!スラム街!

曇り空の広がるスラム街、魔人達は今日を生き抜く為に精を出す、皆ボロ布の様な服をまとい街を行き来している、しかしそんな中に場違いな程に立派な格好をした魔人が二人、道の真ん中を闊歩している

連中を見るスラム街の魔人達の視線は冷たかった


「あ〜汚ぇ汚ぇ、なんでこんな事俺らがしなくちゃならねぇんだ」


「しょうがねぇさ、俺らは下っ端の中の下っ端なんだからよ」


「それにしても陰気臭え街だなここは…」


「違いねぇ、とっととみかじめ料を回収して帰ろうぜ」


そして目的の場所へ行くために狭い路地を通り、人気のない道に出ると突然上から何かが降ってきて4本腕の魔人へ着地した


「ぐわ!」


「藤原!?降りろてめぇ!」


仲間に飛び降りた何者かを蹴り飛ばそうとしたが、蹴りが当たる前に仲間から飛び降りた為足は風を切り少しよろめいた、そして敵は懐からガラクタの様な銃の様な何かを取り出して構えた、そしていつの間にか後ろに仲間と思わしき者もいた


「いてて……なんだ?ずいぶんとチビだな」


「てめぇら、俺らがM&Co .の魔人だって知っての行為か?」


「動くな!少しでも動いたらこいつで足を撃ち抜くぞ!」


体をマントで隠し顔もマスクで隠しているため、まだ自分達が人間である事は気づかれていないようだ


(しかし厄介だなこのコンビ…4本腕のデカイのは明らかにパワータイプだし、六つ目の魔人はかなりの魔法の使い手だ、ここは先手を打たないと…)


アスカは絶対に相手のペースにしてはいけないと確信し、カイトに大砲を使う様に指示した


「撃て!」


「でもこれ撃ったら相手が!」


「構わん!撃て!」


「何する気だてめぇ!」


藤原と呼ばれていた魔人がカイトへ真っ直ぐ突っ込んで来る、カイトは引き金を引いて藤原へ大砲をお見舞いしようとした

すると藤原は何かを悟ったのか前に向かって腕をクロスさせ、ガードの構えをとった


「メタル化!!」


そう叫ぶと藤原の全身は光沢を帯びた

バチッ!

砲弾が発射されると、寸前まで来ていた藤原に真正面から直撃し藤原を大きく後ろへふっとばし壁に穴を開けた


「つっ〜〜死んでないよな!?」


「バカが…これくらいでメタル化した魔人が死ぬかよ」


六つ目の魔人がそう呟くと壊れた壁の内側からメタル化した藤原が出てきた


「いってぇ〜な〜メタル化してなかったら流石に死んでたぜ、吉田!そっちのチビは任せたぜ!俺はこっちのチビを八つ裂きにするからよ…」


「了解、オラチビ相手してやるよ、M&Co.の魔法使いの魔法で死ねるんだ、光栄に思えよ」ギョロ


額と頬の目をアスカに向けると、吉田と呼ばれる魔人は今にも目玉が飛び出さんばかりに目を見開らくと、その4つの目から紫色の光線が発射された

アスカはぎりぎりで避けられたが、光線の走った壁は黒く焼き切られていた


「じょ…冗談じゃない…」


「ちょこまかと…」


吉田は4つの目に点眼液を落とすと、面倒くさそうに話した


「俺はドライアイなんだよ…それにお前らがどんなに強い武器を持っていようが、俺達に勝てる訳ないんだ、早めに諦めろ」


その言葉を聞いてアスカは武器を取り出して立ち上がる、そして中指を立て挑発する様に言い放つ


「やだね、粗○ンギョロ目が!!」


「チッ…楽に死ねると思うな…」


カイトの大砲は数分のクールダウンを要するためもう使えないも同然、自分も大砲を持っているが下手に立ち止まるとあの光線の的になってしまう

そしてアスカは閃いた、絶体絶命のこの状況を生き残る方法を


「カイトぉぉぉぉ!!受け取れッッ!!」


「え!?お前どうするんだよ!」


渾身の力を込めて持っている銃二丁をカイトに投げ渡す、自分の身を守れるのはもはやこの風圧剣だけになってしまったが、これでいい

この作戦はこれでなければいけないのだから


武器を受け取ったはいいがそれでも藤原の猛攻は止まらない、メタル化した拳はコンクリートの壁を砕きドラム缶をぶち抜く

しかしその拳は一向に当たらない、藤原はメタル化した皮膚の下で血管をピクつかせながら拳を握る、当たり前だ当たるはずがない、当たってたまるものか


「長距離元日本一の底力見せてやるぜ…」


人間の世界にいた頃、カイトは高校2年まで陸上競技の長距離走の日本一だった、その底なしのスタミナと速さを利用し、魔人達から延々と逃げたりこのように重鈍な相手の攻撃を交わし続けているのだ


「この…!ちょこまかと…!」


アスカは目玉の化け物を釘付けにしてくれている、後はこのデカブツを煽ってやれれば準備万端だ


「タラタラしてっとそんな遅いパンチ一生当たんねぇぜ!」


「ぬがぁぁぁ!調子に乗りやがって!良いだろう!お前には絶対にかわせない速度を見せてやる!メタル化ッッッ!!!」


かなり早いが、やはり一直線に突っ込んでくるだけ、全身をメタル化し完全に勝利を確信した顔で突っ込んでくるその魔人に向けて、カイトは壁に背をつけ二丁の大砲の引き金を引いた。


そして時は数分さかのぼる、一方でアスカは善戦むなしく吉田の足に踏まれ身動きが取れないでいた


「ふん、口ほどにもない」


「くっ…!やっぱりだめか…!」


「まぁ人間なんかに生まれたことを恨むんだな、何がしたかったのかは知らんが、お前達の旅はここで終わりだ」


そうして目をギラギラと輝かせ、アスカに視線を合わせる、今までにない最高威力と思われる光線の準備をゆっくりと行う


「まだだ…」


「ん?何か言ったか?」


「まだだ!ボク達の旅はこれから始まるんだ…!お前なんかに終わらされてたまるもんか!!」


そして懐から取り出した風圧剣を吉田の地面に接している足に向け、スイッチを入れた

筒から吹き出した空気の塊は容易く吉田の足に足を貫き地面に固定した


「ぎっ!?ぐわぁぁぁ!!」


その痛みで光線のチャージは中断され、踏みつけていた足の力も緩みなんとか脱出する事ができ、すかさず剣も回収した、吉田の足の甲あたりには五百円玉サイズの風穴が空いてており、激痛で一歩も動けないような状態だった


「へへっ隙ありだよ!」


「こんのクソ人間がぁ…下等生物の癖に魔人に盾突きやがって…!」


吉田は目を血走らせ、全ての目を見開いてアスカを撃ち抜こうとその体制のまま視線を向けた


「ボクなんか見てて大丈夫かい!?」


「黙れ!何が何でもお前だけは…」


「へ〜じゃあお仲間と仲良くぶっ飛んで行きな!」


「は?」ドゴッ


吉田にはなにが起こったのか直ぐには理解できなかった、途切れかける意識の中ようやく吉田は理解した、この飛んできたものが藤メタル化原だと言うことを


本当に数分の出来事だった、二人の立てた作戦は奇跡的に上手く行ったと言えよう

作戦はこうだ、まず二手に別れそれぞれが時間を稼ぐ、準備が整った所でカイトは藤原を攻撃に誘導しアスカは吉田を釘付けにする、その後二丁の大砲を用いて全力で突進してくる藤原を吹き飛ばし射線上にいる吉田に激突させたのだ。


「パチンコ作戦成功だな」


「え、そんな名前だったのか?」


「……ッスゥーー早く変身するぞ…」


二人は腰のポーチから魔導返信装置を取り出し、カメラでその姿を撮って変身を始めた

無事カイトは藤原を、アスカは吉田に返信することができた


「うおぉ…これが身長2メートル以上の視点…うわ!?腕が二本多いぞ!」


「これは…参ったな…視界が広すぎで情報量が…しかしこれは凄いな、まさか肉体ごと変身するとは思わなかった」


変身した体に四苦八苦しながら二人は彼らの服から本物の組織の証であるバッチを取る、先生によると本物のバッチでなければ検問を通ることはできないらしい

そして二人をある程度拘束してから隠し、武器をカバンに収納して肩にかけて検問に向かった

途中道を歩いているのだが、バッチのせいか道行く魔人全員が道を開ける、中には逃げ出す者もいた


(そんなにやばい奴らなのか…)


アスカは鼻息を荒くしてなんだか機嫌良さそうにしていたが

そうしてアスカの案内で検問に到着することができた


「ボロっキノコ生えてるし」


「日が出てる時間に見ると思ったよりボロいな」


引き戸を開けて検問所の中に入る、中もボロボロで奥に厳重な扉があるがところどころキノコが生えていた

そして扉が空き、奥からズングリした体型のキノコ型の魔人が出てきた


「おやお早いですね、もうお帰りですか?」


(適当に話合わせろ)ヒソ…

「お、おう今回は聞き分けが良かったからな」


「そうですかそうですか、ところで…その荷物は?」


「これは…ッスゥーーついでに持ってきたんだ、改造された魔法武器だ」


中から大砲を一つ取り出してキノコに見せる、キノコは物珍しそうに見てから再び話し始めた


「確かに珍しいですが…あなた方が使うには少々小さくないですかね?」


「あ…集めるのが好きなんだよ、良いから早く通してくれ!」


「はぁ…」


キノコは不服そうに重い扉を開ける、扉の中は何もなく行き止まりになっていたが、床には巨大な魔法陣が書かれていた


「さぁさぁ陣の中へ、扉を閉めたらすぐに"飛ばし"ますからね」


「頼んだぜ」(飛ばす!?)


そして扉を閉めると陣が緑色の光を発し始め、自身の身体も光に包まれて行った


「おぉ…!アスカ!これでスラム街を抜けられるぞ!」


「あぁ…だが油断するな、都市部に行ってからが本番だぞ」


その言葉を残すと二人は都市部の検問所の魔法陣へと転送された

キノコの魔人はまた暇になりポケットから取り出したタバコを咥えた


「はぁ…暇だなぁ…なんな面白いこと起きないかなぁ」


そんな事を呟くと、何やらスラムの市場が何やら騒がしくなってきたのだ

その喧騒は次第に近づいて来る、しまいには地響きまでしてきた、その地響きはこの検問所に真っ直ぐ向かってきて、最終的に引き戸を突き破り、魔人を抱えた4本腕の魔人と彼に抱えられた六つ目の魔人が入ってきた

その姿を見たキノコは口からタバコを落として唖然とした


「あ…え?う、うそ…え…さっき…」


「はぁ…はぁ…はぁ…ゲッホゲホ!」


「ぐぅぅ…おっちゃん…ここに俺達がこなかったか…」


それは本物の藤原と吉田だった、藤原は膝をついて必死に息を吸っているので代わりに抱えらている吉田が経緯話した


「ま、まずい!」


キノコは胞子まみれの棚の戸を開けて無線機を起動した、自分が配属された頃存在は知らされていたが、今まで使ったことなどなかったため少しもたついたが何とか都市部の検問所へと繋ぐことができた


(こちら都市部、何か異常事態か?)


「こちらスラム!組織の魔人に変身した武装した人間がそちらに送られました!至急捕まえてください!」


(何!?魔人の二人組か!?)


「そうです!4本腕と六つ目の魔人です!」


(まずい…奴らはもう通してしまったぞ!至急、駆除隊に連絡する!)


その連絡は直ぐに届き、隊員たちはすぐさまパワードスーツを身に着け、自分に合った魔法武器で武装して車に乗り込む、都市部にも変身した姿の特徴を記した記事が放送された


そして都市部につき、念の為人気の少ない所を通っていたカイト達が歩いていた路地にもその記事が張り出され、液晶いっぱいに写真が放送されていた


「くっそ!もうバレたか!」


「やばいぞアスカ…!」


「ご丁寧に懸賞金までついてる…早くここを離れないと」


しかし既にそこには記事を読んで懸賞金に目が眩んだ魔人達がいた


「へへ…ついてるぜ…」


「こいつ等捕まえれば美味い飯が喰えるぞ!」


それぞれの魔人が手のひらを魔法で帯電させたり、脚を変形させたりして二人を狙っている

そしてアスカはこの状況でまたしても奇策を思いついた


「ん〜〜!!よしカイト!変身解除しろ!」


「え!?」


「どうせバレてんだ!そんな重い図体じゃにげれねぇぞ!」


二人は変身を解除し、水圧カッターを取り出して一目散に逃げ出した、追ってくる魔人は弾を飛ばして牽制して煙幕をなげて視界を遮断する


そして魔人を完全に撒き、建設予定地らしき鉄骨の柱が立ちシートがかけられた空き地に身を潜めた


「やっぱり来たな…」


「あぁ、久保田先生のノートに書いてあった通りだ」


二人は久保田から先日数個の使い捨て魔法道具と都市部について知っている限りの全てを記したノートを渡してくれていた、これには人間駆除隊やM&Co.以外の勢力の概要も書いており、運が良ければ協力してくれるかもしれないとの事、魔人には魔法で眷属を召喚してくる者もいる事等魔人以外にも超常的な生物がいる等書いてある


「本当に助かったよ久保田先生…」


「やぁ」


「ん?なんか言ったか?」


「いやボクは何も…」


「やぁ!」


「!?」


振り向くと後ろにはバスケットボール大の謎の生き物がいた、その生物は(・ω・)こんな感じの顔をしており猫耳らしきものも生えていた。


「ん?もしかしてこいつ…」


アスカはノートのページを開きこの生物のようなものが描かれたページをカイトにも見せた


「ま、まんじゅう?」


「まんじゅうだぞ!美味しいものよこせ!」


「おぉ〜めちゃくちゃレアな生物で、滅多に姿を表さないらしいぞ!」


「そうか…美味いもんか…」


何かないかと鞄を漁ると、底から賞味期限ギリギリのチョコバーが出てきた、カイトは包み紙を剥がすとそれをまんじゅうに与えると、まんじゅうは幸せそうな顔をして食べた


「んむ〜〜甘い」


「そうか、口にあって良かったよ」


久しぶりに可愛らしい物を見たので二人は心底癒やされた、そしてそろそろこの場を去ろうとまんじゅうに別れを告げようとした時、上から何かが降ってくるのを感じ咄嗟に後ろに下った

ドス!


「な…!?」

 

「鉄骨!?」


降ってきたものの正体は鉄骨、こんな物倒れただけで身動き一つ取れなくなってしまうと言うのに降ってきた鉄骨に直撃しようものなら絶命は免れないだろう

鉄骨の犯人を見ようと上を向いたら黒い戦闘服の様なものに見を包んだ魔人がおり、無線機の様な魔法道具に話しかけていた


「外した!」

 

(ギャハハハ!じゃあ俺たちの勝ちだな!後でラーメン奢れよ!)  


「まずい、駆逐隊だ!逃げるぞカイト!」


「ぬ!?おい!出てくるぞ!」


鉄骨の魔人が外にいる仲間に伝える、外に出ると既に同じような格好の魔人が武器を構えて待ち構えていた


「今回は見つけるのに割と手間がかかったな」

 

「それより早く片付けるぞ、清掃屋も呼んであるんだからよ」


「それもそうか…とっとと終わらせて…ラーメンだな」


「くっ…!ここまでか…!」


魔人達は得物の引き金を引き魔銃を連射した、弾は着弾と同時に小さく爆裂し土煙を巻き上げた、頃合いと判断した頃銃撃を辞め死体を確認しようとした所を信じられないものを目撃する事となった


「え…」


「まじかよ…」


「ぷっく〜〜〜!!!!」


それはまんじゅう族、隊員も話と写真だけは見たことがあった、しかし実物をこんな状況で見るとは思いもよらなかった為か全員が硬直していた


「ッッッ!!マジかよ…!」


「まんじゅうは無敵の身体を持つって、先生のいたずら書きじゃなかったんだな…」


二人は生きていた、まんじゅうが身体を巨大化させて銃撃を全て受けきったのだ、まんじゅうはいかなる攻撃も通用しない無敵の身体を持っており、個体の中には反撃に転用する者もいる


「これって…まずいんじゃ…」


「ま〜〜〜〜ん……」


「ひ…ッ!逃げろ!!!」


「じゅッッッッッッ!!!」


身体を縮こませたまんじゅうは一気に表皮を張り詰め、溜め込んでいたエネルギーを前方に放出した、上から降ってきた鉄骨も跳ね飛ばし、投げた魔人を串刺し前方の魔人は衝撃で大きく吹き飛ばされ、停めていた自分達の車に激突し炎上、そして予備の魔法弾に引火し大爆発を起こした。

まんじゅうは元の大きさに戻り得意そうな顔をした。


「すごいだろ!」


「いや…本当に凄いな…どうなってんだ…」


「お前たち人間だろう!ついてこい!我の取っておきの場所に連れて行ってやる!だから我を持つのだ!」


そう言ってカイトに自身を持たせ、アスカと手を繋がせるとまんじゅうは案内を始めた、しばらく歩いていると人通りの多い場所が近くなって来た


「まずいぞ…こんなに魔人が…」


「心配する事はない!我々まんじゅう族のはあらゆる認識機能から逸れることができるのだ!」


「まんじゅうって…本当に凄い生き物なんだな…」


まんじゅうの道案内で再び裏路地に辿り着いた、するとまんじゅうは海外で良く見るような巨大なゴミ箱の上に乗るように促した


「これでいいのか?」  


「うむ、おろして」


まんじゅうを下ろし同じくゴミ箱の上に乗る、するとまんじゅうは「衝撃に備えよ」と一言言うとゴミ箱の上でボンボンと跳ね始めた


「な、何してんだ?」


「喋るな!舌を噛むぞ!」


「それってどういぅ!?」


「のあ!?」


一瞬何が起こったのかわからなかった、はっきりとわかるのは自分達は今落下していると言う事だけだ


「いつまで落ちるんだ!?」


「このままじゃボク等落下の衝撃で死んじゃうよ!」


「んむ〜そうか忘れてた!」


そう言うまんじゅうはすかさず二人の下に先回りし身体を大きく膨らませた、程なくして二人と一匹は着地した、まんじゅうのやわらかボディのおかげで二人共怪我はなかった

しかし二人はついさっきの落下よりも衝撃的な物を目にする事となった


「〜ッッッ!!」


「たまげたな…」


落下地点には魔人や亜人、そして人間までもが武装し待ち構えていたいたのだ

何人かは銃を構えていた為、二人は自然と手を上げていた

すると大柄な狼の様な魔人が喋りだした 


「武器を下げろ、武装はしているが…こいつらは危険な人間じゃない、しかし何か鼻につくな…おい男の方!」


「う!?はい!?」


「お前何かMCo.に関わってる奴の品物を持っているな?」


その狼の魔人はカイトの持っている藤原と吉田のバッチの匂いを嗅ぎ当てたのだ、カイトはポケットからバッチを取り出し狼の魔人に見せた


「なるほどな、ニュースになってる人間ってのはお前らだったのか…降りて来い案内してやる」


足元を見ると既にあのまんじゅうはいなくなっていた、二人は魔人達に囲まれながら地下世界を進んだ、ここは本当に不思議だ、人間と魔人が共存し支え合っている、所々で談笑していたりカードで遊んだりもしていた

程なくして二人は部屋に通された、狼からは少し待てと言われていたので観察しながら待っていると、後の扉が開きそこから耳が中途半端に長い亜人の青年が現れた


「やぁはじめまして、俺はハーフエルフの

村岡、君達が俺を知らなくても俺は君達を知ってるぞ、なんでもMCo.の魔人を倒して変装して都市部に来たらしいじゃないか、有名だぞ…自己紹介してくれないかな?」


村岡は散々喋り倒した後自分達に自己紹介するように言った、流石にこの状況で拒否できる訳もなく話す事となった


「カイトだ…一週間位前にこの世界に来て…こっちのアスカと一緒にこの世界から脱出する為に都市部まで来た…」


「アスカだよ、目的は右に同じく…それで質問何だけど…ここって一体何なの?」


「それはどういうことかな?」


「魔人や亜人は人間が嫌いなハズなのにここの連中は皆仲良しだ、それに皆武装してるしこんな地下にいる、あんたら一体どんな組織なんだ?」


「ん〜鋭いな君…まぁいいや全部教えて上げるよ、長くなるから座りなよ」 


そう言って村岡は物置きらしきところからパイプ椅子を取り出すと二人に渡して同時に麦茶入りのペットボトルも渡し、自分も部屋にあった椅子に腰掛け、説明を始めた


「ここはね、言ってしまえば革命軍なんだよ」


「革命?どうしてそんな事を…」


「そんなの簡単さ、ここにいる皆は人間を著しく差別する風潮やMCo.に媚びてビクビクする生活にうんざりしてるのさ、だから皆で奴らを打ち負かそうって訳」


「そんな事できるの?相手には神を殺した魔人が何人もいるんでしょ?」


「そこが問題なんだよね、俺等の仲間には奴等の構成員じゃ歯が立たないような強者も沢山いるんだけど、Co.の最高幹部…つまり創設メンバー達は次元が違いすぎる、だから今は皆を強化する事に努めてるんだ」


「あの狼の魔人は?」


「あぁ、彼は牙狼(ガロ)って呼ばれてて革命軍の強者の一人だね」


そして革命軍の事やMCo.の事、村岡自身の事など様々な事を説明され、最後に今はどのような状況なのか聞くことにした


「今はね、良いけど悪くなる」


「どう言う事だ?」


「実は政府とCo.の連中は、政府の顔を立てるために何人かの最高幹部を数ヶ月間交代で刑務所に収監させているだけど、前回の収監では組織の要とも言える幹部3人が収監されたんだけど近々出てくるらしいんだ、だから状況は悪くなる…まぁ時期が悪かったのさ」 

  

「そうなのか…じゃあ裂け目に辿り着くのはしばらく無理か…」


「ん?もしかして君達摩天楼を目指してるのかい?」


「まて…?なんて?」


「摩天楼、都市部の中央に建ってるめちゃくちゃ高い建物さ、君達も見ただろ?」


「あるのか!あそこに!」


「情報は確かだ、間違いないよ…どうやら…君達の目的と俺等の目的はどこか噛み合う部分があるらしい…どうだい?俺達に協力するってのは」


突然の革命軍からの勧誘、それに相手も目的は摩天楼、一刻も早くここから脱出したい二人に断る道はなく、晴れて二人も革命軍の仲間入りを果たしたのだった


……………


夜の摩天楼、どの建物よりも高いこのビルは都市部の全てを見下ろす事ができる、その最上階からみる夜景は正しく絶景と呼ぶにふさわしい。


そのホテルのスイートルームのような部屋には、一人の美しいハイエルフと他数人の美女の魔人と共にくつろいでいた。


「そろそろお務めしてるみなさんが帰ってくる頃ですね〜たのしみやわ〜今回はどんな風にかえってくるんやろね〜」


「今回は確か3人ですよね」


「そうそう、これも私の数ヶ月に一度の楽しみなんですよ〜」


女子会は明け方まで続き、ハイエルフの美女はおもむろに手で耳を塞ぎ、目を閉じて集中した、そして何かに繋がると彼女は通信先に向かってこう念じた


(皆さん、帰ってきてください)


それを受信したのは現在収監されている最高幹部達、それを受け取った幹部達は飛び起きて【ここを出る】事を遂行するのであった…


【次回に続く】

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