第2話 パーティー結成
冒険者や兵士など数十人が、レイト姫の呼びかけによって城に集まっている。
勇者パーティーに参加して魔王を倒すことができたら、一生安泰に暮らせるらしいので、みんな期待に胸を膨らませているようだ。
「さあ、勇者様。この中からパーティーメンバーをお選びくださいませ。わたくしのおすすめは、王国軍最強の戦士ツエードと魔法使いのブンリーでございます」
筋骨隆々の戦士のおっさんと、ヨボヨボのおじいさんが俺の前に現れた。
ツエードは俺に頭を下げてハキハキとした声で宣言した。
「どうか、私どもをお連れ下さい勇者様。ぜひ、役に立って見せます」
……いくら強くても、こんな加齢臭しそうな奴らと長旅はきついな。
「すみませんが、あなた達をパーティーに加入させることはできません」
誰よりも先にレイト姫が声を荒らげた。
「どうしてですか!? この最強の2人がいれば、これからの旅がうんと楽になるのですよ?」
「それが問題なんですよ。俺は、この旅で強くならないといけない。しかし、この方々が一緒で楽をしてしまえば、俺は強くなることができません。それだと、魔王にも勝てないでしょうね」
「それなら、この2人には勇者を見守る形で……」
「もう1つ理由はあります。もし、最強の2人がこの国を出て行った後に、魔王の手下が襲ってきたらどうなりますか? 世界を救ってもこの国がなくなってしまったら意味がないではありませんか?」
「私は健斗様を見くびっていたようですね。ここまで我が国の事を考えて下さっていたとは。もう何も口出しはしませんので、ご自身で好きなようにパーティーを編成してくださいませ」
……よし、完璧にごまかせたな。
「レイト姫、パーティーメンバーは何人がいいとかってあるんですか?」
「多くても連携がとりにくいので、4人が最適だと言われています。戦士、魔法使い、ヒーラーの3人が無難ですかね」
俺は辺りを見回して、一緒に強くなれそうな3人を探すことにした。
その時、左腕をガシッと掴まれてすごい力で引っ張られた。
驚いて確認すると、170cmくらいの長髪美女が、俺の腕をホールドしていた。
「勇者様ー! あーしなんかどうですか? 戦士のバールでーす。力には自信があるんですよ!」
俺の腕に触れている感触には柔らかいもののほかに、見た目とは反するしっかりとした筋肉を確認した。
元の世界では、SNSとかに露出度高めでトレーニング動画とかをのせそうな女だ。
「バールさんの力強さに惚れました。採用です」
「やったー! あーし、頑張りまーす! ……これで将来は安泰だ」
「今、何か言いました?」
「いいえ、勘違いですよ! それより、残りのメンバーを決めましょうよ!」
一連の流れを見ていた7~8人の魔法使いとヒーラーたちが、一斉に俺を引っ張り合い始めた。
「痛い、放してください! あー、もう誰でもいいので、あなたとあなたにします」
俺はいい加減に選んだように見せかけて、あらかじめ目星をつけていた魔法使いとヒーラーの腕を引き寄せる。
選ばれなかった人たちは、残念そうに帰って行く。
それから、2人に自己紹介をしてもらうことになった。
「私、魔法使いのセンと申します。勇者様の力になれるよう頑張ります」
センは小柄で真面目そうな可愛らしい子だった。
元の世界では、合法ロリといわれるグラビアアイドルにいそうな女だ。
「わたくしはヒーラーのプラグです。回復は任せてくださいませ」
プラグはお嬢様なのか、とても品のある清らかな女性である。
元の世界では、顔で入社するようなアナウンサーにいそうな女だ。
「皆さん、これから魔王退治の旅、協力し合って頑張っていきましょう」
……ふっふっふ。このファンタジーバスト美女パーティーで旅ができるなんて、最高だ。魔王なんか放っておいて、ずーっと旅をしてもいいのではないか?
パーティー結成から半年が過ぎていた。
俺の思惑とは裏腹に、みんな真剣に魔王を倒すことを考えて旅に挑んでいたので、俺もそれに引っ張られて真面目に戦いに参加していた。
世界中に散らばる魔王の手下を倒していき、いつの間にか勇者として申し分ないくらい強くなっている。
……これだけタイプの違うファンタジーバスト美女をそろえているのに、手を出せないのは苦行だったな。
色々な思いを胸に、いよいよ魔王の城に乗り込む時がきた。
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