召喚勇者、賢者兼任~ハーレムパーティーで魔王討伐~

マーナリ

第1話 勇者召喚

「おお! 勇者召喚、成功しましたぞ!」


「なんだここは!?」


 俺は大学の演劇サークルの活動で、学祭に向けて練習をしていたはずなのに、急に怪しいやつらに囲まれていた。

 すると、怪しい連中の中から、ひときわ目立つ美しい女性が抱き着いてきた。


 ……あたってる!


「異世界の勇者様。どうか、魔王を倒してこの世界を救ってください」


「ちょっと待ってください! 異世界の勇者? 一体何のことですか? それに、ここはどこですか?」


「ここは、トゥーナ国にある神殿です。勇者様の世界とは異なる世界にございます。誠に勝手ながら召喚させてもらいました」


 信じられないので二の腕の内側をつねってみる。


 ……痛いから夢ではなさそうだな。これって、もしかして、あの異世界転移ってやつか? やっべ、嬉しいんだけど!


「どうやら、夢ではないみたいですね」


「ほっぺじゃないのですね……そういえば、自己紹介がまだでした。私はトゥーナ国第一公女、レイトと申します。レイト姫とでもお呼びください」


「俺は加藤健斗です。あっ、健斗が名前です」


「勇者健斗様。この世界の状況を説明しますので、まずはお城にご案内させてもらいます」



 言われるがまま、お城に案内された。

 王の間には貴族だろうか、偉そうな人たちもずらりと並んでいる。

 王座には、白髪の長髪に立派なあごひげのいかにもな王様が座していた。


「勇者健斗よ、よくぞ参られた。我は第4代トゥーナ国王、ハゴロである。突然、異世界に召喚されて右も左もわからないと思うので、この世界の状況を説明しましょう」


 聞いた話をまとめると、世界観はRPGゲームの様なファンタジー要素のある世界感で、召喚術というものがあるらしい。

 ある悪い召喚士がこの世界では空想上の産物である魔王を召喚してしまい、世界を征服しようとしている。

 そこで、魔王に対抗できるのは勇者しかいないが、この世界には存在しないので、異世界の勇者を召喚したのだという。


 ……これはまずいぞ! 俺は何の力もない、しがない大学生なのだけど。


「勇者として召喚された健斗様は、さぞかし自分の世界を守ってきたのでしょうな。そうだ! 健斗様が魔王を倒してくれた暁には、我が娘と結婚するというのはどうだろう?」


「ちょっと父上様! 勝手に決めないで下さいよ! ですが、婚約も含めて、わたくしができることでしたら、神に誓って、どのようなことでも叶えて差し上げましょう」


 ……やっべ。こんな絶世の美女に言うことをきかせることができるのか? あんなことやこんなこと、どぅふっふっふ!


「わかりました。必ず魔王を倒して差し上げましょう!」


「おお! なんと心強いお言葉。流石、我が娘が召喚した勇者。これで、トゥーナ国の将来も安泰だ。ハッハッハ! では、勇者の事はレイトに一任しようかのう。我は吉報を待っているぞ」


 ハゴロ王は笑いながら退場していく。

 そして、レイト姫は使いのものが持ってきた、武器や防具を渡してきた。


「この武器はステッキ剣と言って、剣なのに魔法のステッキにもなる、世界最強の剣でございます。ぜひ、お使いください。これを使えば、勇者様なら明日にでも魔王を倒すことができましょう」


 ……あ、明日!? これから冒険をしてちょっとづつ強くなっていくんじゃないのか? もしかして、俺って超強いと思われている?


「あの……ここまで来てなんですが、俺、戦いなんてできませんよ。そもそも、元の世界では勇者でも何でもないですからね」


「ふっふ。ご冗談を……え!? 本当なのですか!? ですが、わたくしは召喚で失敗したことがないのですが……」


 俺の居た世界には勇者という存在はいないはずだ。

 だが、俺が選ばれてしまったのには何か理由があると思うので、考えてみることにした。

 召喚される前、俺は演劇サークルでファンタジー作品の演劇の練習をしていた。


 ……そうだ、俺は主人公に抜擢されて、それが勇者だったのを忘れていた!


「すみません。俺、一応勇者ではあったみたいです。ですが、皆さんが思っているように強くないんですよ。なんか、すみませんでした!」


「チッ! 勇者ガチャ、ハズレだったか」


「ガチャ? ハズレ?」


「いいえ、なんでもありません。ですが、あんたを召喚するために使った魔力が膨大だったため、他の勇者を召喚することはできないのですよ。ですから、あんたには早急に強くなってもらいます……あーあ、お父様になんてごまかそうかしら」


 ……あれ? 勇者様とも健斗様とも呼ばれなくなったし、本音が垣間見えるようになったんですけど!

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